表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
71/171

第1部 第71章

まだ病み上がりなんだから寝ていたほうがいいといわれても、庭の花に会いたくて、ルシファを連れて庭へ出た。


「やっぱり草や花があると気持ちいいね。」


 思いっきり伸びをして空気を吸い込んだ。


 振り向くといつものようにルシファは花たちに手を伸ばしていた。


「ごめんね。君たちの大切なルシファをあんなひどい顔にしたのは僕なんだ。」


 花たちが風に揺れてルシファを心配しているように見えた。


 足元がくすぐったくて視線を下ろすと、自分のことも心配してくれるように風に揺れた草が足を撫でていた。


「ねえ、どうして僕はこの庭では病気にならないの?」


 ふと疑問に思った。


「ここの植物は遺伝子改良されている。ジーンリッチ用にね。雑菌だウイルスだと騒ぎながら自然の美しさは求めるんだ。そして、自分が自然に近づこうとはしないで、自然を自分の都合のいいように改良する。」


 呆れたように答えた。


「ウイルスを運ぶのは主に動物。植物は動かないから、そんなに気を使わなくて済むんだ。ここの植物をナチュラルの世界に持っていっても生きていくことはできるんじゃないかな。」


 植物よりも自分は弱いんだと思った。


「僕は、ナチュラルとしては生きられない。」


 寂しそうに呟いた。


「ナチュラルになりたかった?」


 ルシファが心配そうに聞いた。


「わからない。でも自然の中で動物や植物に囲まれて暮らせるっていうのはとってもあこがれた。」


「ジーンリッチだってヴィレッジに行けるし、ナチュラルだけの世界にだって行けるよ。ワクチンとか面倒だけど、無理じゃない。」


 ギルの夢を壊してしまったようで、ルシファは慰めるかのようにいった。


「ヴィレッジで会ったナチュラルはみんな意識の高い人たちだからとても自然を思いやってるけど、ほとんどのナチュラルはジーンリッチと遺伝子構造が違うというだけで考えてることは同じさ。自分達の快適さのためには自然や動物達のことなど省みずに、水を汚そうとも、動物が苦しもうとも関係なく、化学物質を日々垂れ流して、自分たちだけ快適な生活を送ってる。」


 この花たちが苦しんでも何とも思わない人たちが沢山いるんだ・・・。


「ヴィレッジを見たでしょ? ナチュラルもジーンリッチも関係ない。自然が好きな人は好きだし、何とも思わない人は何とも思わない。自分は誰かなんか関係ない。自分はどうありたいか、それだけだよ。」


 自分はどうありたいか・・・?


「難しいよ。」


「難しく考えることはないよ。自分はどうしたいか、どうしてるのが1番好きなのか。そんなものだよ。」


「僕はルシファと一緒なら何でもいいや。」


 考えることを放棄した。1番大切なことはそれだけだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ