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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第67章

 後は薬が効くのを待てばいいと思うと、少しほっとした。


 ギルの息もかなり安定してきた。


 今までのような体全体の痙攣は起こらない。


 まぶたが少し痙攣して、息が速くなった。


「ルシファ・・・ルシファ・・・。」


 さっきまでの叫びとは違う、小さな声で呟いている。


「ここだよ。ここにいるよ。」


 ギルの手を両手で握り締めた。


 その声が聞こえたのか、息がまた安定した。


「元気になったら、またここに来よう。まだ見ていない所にも行こう。アランの所にだって行こう。」


 狂ったように叫んでいないギルを見ていると、少しずつ心が落ち着いて、明るい考えができるようになってきた。


 初めて見るもの全てに感動し目を輝かせているギルの姿をやっと思い出せるようになった。


 自然は好きだった。庭の花は綺麗で愛おしいとは思っていた。しかし、ギルに「きれい」といわれた花たちが輝きを増し、ギルが「おいしい」と目を輝かせた料理は更においしさを増した。今まで何の興味も意味もなかった世界が輝きだした。


「君が輝かせた世界を私も見たいんだよ。」


 ギルの手を胸に当てた。


「だから早くそんな地獄から抜け出して、ここに戻っておいで。私はここで待ってるよ。」


 祈るように両手でギルの手を包んだ。


「私の心を読んで欲しい。君は私の望みを叶えることができるんだから。」 



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