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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第64章

「こんなことになって申し訳ありません。」


 キャプテンが映し出されたモニターの前でルシファは頭を下げた。


「仕方がない。この件に関してはあまりにも未知数な試みだったんだ。」


 キャプテンは残念そうにいった。


「私の我侭で皆さんに迷惑をおかけしてしまいました。・・・迷惑ついでにお願いがあるんです。」


 ルシファは顔を上げた。その顔の鋭さにキャプテンは表情を固くした。


「私をあの部屋に入れてください。」


「君があの部屋に入って出来ることは何もない。心配なのはよくわかるが、血液検査の結果がでるまでのわずかな間だけだ。辛抱して欲しい。」


「わかってます。わずかな時間だけの『ラボでの恐怖の再現』だってことはわかっています。」


 ルシファは唇を噛んだ。


「私が出来ることは何もないこともわかっています。」


 そう、何も出来はしない。


「でも、私は自分に誓ったんです。彼をもう二度と苦しい目には合わせないと。ただ私は自分の誓いを破りたくない。・・・ただの私の我侭です。」


 ギルのために何かができるとは思わない。ただ自分の我侭を通したいだけ。


 睨むようにキャプテンを真っ向から見つめた。


「私は2つの選択肢から選ばなきゃいけないようだね。」


 キャプテンが静かに目を閉じていった。


「リスクを承知で君の我侭を聞き入れるか、もう1つは、君も拘束するか。」


 開かれた目は厳しい光に満ちていた。しかし、ルシファはひるむことなくそのままキャプテンを見つめた。


 キャプテンが再び目を閉じ、ため息をついた。


「いいだろう。君の我侭をきいてあげよう。ただし、部屋を出る時、君も検査を受けること。それと、その傷の手当てを受けること。」


 キャプテンが微笑んでこめかみに手を当てた。


 ルシファは自分のこめかみに手を当てると、血が流れていた。



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