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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第62章

 テラス席にルシファとアランを残してジュースを買いに行った。


「アランっていい人だね。初めは大きくてすごい筋肉で怖かったけど、とっても優しい。アランに世話してもらえるオオカミって幸せだね。」


「そうね。ジーンリッチではあれだけ肉体的にも精神的にも強い人なんてそうそういないわよ。」


「ルシファは?」


「体力なさすぎ。」


 きっぱりいった。


 2人で笑いながら両手にカップを持ってテラス席に向かった。


 木漏れ日の中、白いテーブルに並んで座るアランとルシファが恋人同士のように見えた。筋肉質でがっしりとしたアランの横にいると華奢なルシファはとても女性的に見えた。キャッシーといるルシファは男性的に見えていたのに。


 自分といるルシファはどんな風に見えるんだろう?


「何、笑ってんだ?」


 2人の笑い声にアランが振り向いた。


「何でもないわよ。ね?」


 キャッシーがギルにウインクした。


「本当に君たちは仲がいいね。」


 ギルの差し出したカップを受け取ってルシファがいった。相変らず呆れた様子で。


「キャッシーのお相手ができるなんてすごいよギル。」


 アランまで調子に乗った。


「どういう意味かしら?」


 冷たいカップをアランの頬に当てた。


「今日は日差しがきついから、喉が渇くわね。」


 何口か飲んだ後、キャッシーは冷たいカップを額に当てた。


「本当。気付かなかったけど、喉カラカラだ。」


 ギルは氷が邪魔に感じるくらいゴクゴクと飲むと、近くの木の幹にチョロチョロと動き回るリスを見つけた。


「リスだ。」


 テラスの手すりにつかまってリスの動きを追った。


 テーブルに置かれた、液体がほぼ空になって氷しか入ってないカップを見て、ルシファが少し首をかしげた。


「ところでルシファ。最近の異常気象はちょっと気にならないか?」


 リスに集中しているギルを見ながらアランがいった。


「気になってるよ。」


「保護施設の周りの環境もちょっと変わってきたんだよ。山の環境が変わってるらしく、山から動物達が下りてきてる。」


「海の生物も深海魚が浅瀬で見つかったり、イルカが大量に打ち上げられたり、昔はなかったってわけじゃないけど、ここの所気にしてるせいか、やたらとそういうニュースが多いような気がするわ。」


 キャッシーもさっきまでの笑顔とは打って変わって表情が曇った。


「キャプテンもこの異常気象や災害に関してはデータを分析してるんだろ?」


「調べれば調べるほどデータだけが沢山集まってきてるらしい。分析する暇がないくらいにね。」


 リスがどこかに行ってしまったらしく、ギルが肩を落として戻ってきた。


「逃げられちゃったの?」


 キャッシーがいつもの笑顔でいった。


「うん。」


 がっかりしたように座るギルにルシファが近寄った。


「体調、おかしくないかい? 目が変だよ。」


「別に。でもちょっと疲れたかも。」


 ルシファがギルの額に手を当てた。


 ルシファの目が閉じられた。


「・・・ギル。検査をしよう。」


 アランが立ち上がった。


「気のせいかもしれないけど、少し熱っぽい。」


 今度はアランがギルの額に手を当てた。


「検査って?」


 まぶたが重たいような目でルシファを見た。


「何かに感染していないかどうか調べてもらおう。」


「どうして・・・?」


 呆然と座っているギルの前にルシファがしゃがんで真っ直ぐ見つめた。


「ジーンリッチがワクチンを打たずにここにくれば感染症を起こす。それは話したね。」


「僕・・・感染したの?・・・ナチュラルにはなれないの?」


 ルシファは努めて穏やかに握り締められたギルの手を握った。


「わからない。だから検査しよう。そうすれば安心だ。感染していてもすぐに処置してもらえるし、感染してないことがわかるかもしれない。」

 


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