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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第61章

 キリンを間近で見たギルはまた言葉を失った。


「どうして、こんな形の動物がいるの?」


 はるか上空に顔があるようだった。


「さあ、どうしてだろう? 高い木の葉を食べるために首がのびたんじゃないかっていわれてるけどね。」


 こんなに背が高くちゃ、確かに高い木の葉は食べられても、木の枝に引っかかってしまう方が大変だと思った。


「これだけいろんなものが見下ろせると、私達が見ている世界とは違う世界が見えてるんでしょうね。」


 あんなに高い所から見下ろしていたら、一体どんな世界が見えるんだろう?


 世界は広い。本当にいろいろな世界が広がっている。こんな美しい世界もあるのに、自分はなんて狭い世界しか知らなかったのだろう。暗く、恐怖だけの世界。


「あれ、オオカミ?」


 後ろを向くと、柵に大きな看板がかけられていた。


 走りよって柵の中をみると、犬のような動物が何頭か木陰に横たわっていた。


「そうよ。アランがお世話してるのはこのオオカミよ。」


 キャッシーが隣にきた。


「オオカミも鋭い目をしてるんだね。アラン怖くない?」


「恐怖に怯えて歯をむき出したオオカミは怖いよ。でも落ち着いてる環境で会えばとってもフレンドリーだよ。」


 アランは本当にオオカミが好きなんだということがわかるほどの笑顔でオオカミを見つめた。


「ここのオオカミはこの狭い柵の中でしか生きられない。正直、かわいそうだよ。」


 アランの顔が少し寂しそうになった。


「違うって。かわいそうなんかじゃないっていってるよ。」


 ギルはオオカミを見つめたままいった。


「広い世界も憧れるけど、この狭い世界では人間が自分達を愛してくれる。怪我をしたら優しく手当てしてくれるし、おいしいご飯もちゃんとくれる。そんなふうに大切にしてもらってるから幸せだっていってる。」


 ルシファは少し眉をひそめてアランの反応をうかがった。アランにはギルの詳細は話していない。


「君はオオカミの心がわかるのかい? 本当にここのオオカミたちが大自然に帰れなくても不幸じゃないならうれしいよ。君にはぜひ、俺が保護してるオオカミたちにも会って欲しいよ。」


 本気にしていないのか、嘘でも本当でも構わない、そう信じたいのかアランは素直に受け入れた。


「会いたい。ルシファ、行こう。」


 ルシファの手を取って真剣な目で訴えた。


「わかったよ。そのうち行こう。でもそんなに慌てなくてもいいだろ。」


 ため息をついて承諾した。


「ありがと、ルシファ。」


 握った手を更に強く握って、ルシファの顔を見上げた。


「・・・ルシファ、疲れてる?」


「私は昨日から疲れてるよ。」


「まったく、体力ないわね。でも私も喉が渇いちゃった。少し休もうか。」



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