第1部 第57章
どれくらい見ていたのだろう。ノックの音がして我に返った。
「やあ、ルシファ、ギル。待たせてしまったね。」
入ってきたのはまるで軍人のようなしっかりした体つきの男性だった。背も高いが、その鍛えられた筋肉がちょっと威圧的でギルは少し身を縮めた。
「私達が早すぎたんですよ。キャプテン。」
この人がキャプテン?
ギルは慌ててルシファの隣に立った。
「お世話になります。」
ルシファと握手するとキャプテンはギルの方に体を向けた。
「ギ、ギルバートです。よろしくお願いします。」
差し出されたキャプテンの手を握ると、とても大きくて暖かかった。
ルシファが「いい人」だといっていたし、笑顔がとても温かく、さっきの緊張は緩んだ。
「初めまして、ギルバート。よくきてくれたね。私はここの責任者、ガイガー・アローだ。みんなキャプテンと読んでるが、呼びやすいほうで呼んでくれ。」
キャプテンは座るように促した。
「ギル。君のことはルシファから聞いたよ。本当によく来てくれた。」
心から喜んでいるのが目じりの深い皺でわかった。
「ここはジーンリッチもナチュラルもない。どんな違いも関係ない。お互いのいい面をお互いに認め合って学んでいく所だ。君はとてもいろんな事を学んできた。ここで更にいろんな事を見ていくといい。」
「ライブラリのクリスタル、ありがとうございました。僕、今まで何も知らなかったから、とても楽しかったし、いろんなことがわかりました。」
「全部見たのかい?」
「はい。」
「それはすごい。ルシファのいう通り、君は本当に前に向かう力がすごい。」
キャプテンはうれしそうにいった。
「君は今回、他のジーンリッチの訪問者とは違う対応になる。ルシファからきいてるね?」
ナチュラルとして生きられる可能性を試すため。
「君は不快に感じるかもしれないが、君の安全を確保するためなんだ。わかってもらえるかな?」
「僕たちのお願いを聞いてくれて、ありがとうございます。」
キャプテンは満足そうに微笑んだ。
「ここにいる間、アランに案内させるよ。また会おう。」
そういうとキャプテンは部屋を出て行った。えらい人は忙しいのだろう。
それなのにわざわざ来てくれたのだ。ルシファがいい人だといったのがよくわかった。見た目は厳ついのに物腰が柔らかく、とても紳士的だった。
「ルシファのいうように、とってもいい人だね。」
「気に入ったか?」
「うん。すごく安心できる人だった。」
「よかったよ。思えば君はまだ男性とは面と向かって話したことがないから、キャプテンの厳ついがたいを見て怯えるかと思った。」
「1目見たときはちょっと怖かったけど、とっても優しい人だった。」
再びノックの音がして扉が開くとキャッシーが入ってきた。
「キャッシー!」
うれしくて走りよると、キャッシーの隣にもう1人、人が立っていた。
「アランだ。よろしく。」
キャプテンよりは背は低いがそれでも筋肉はもっとある。ガッチリした体格の男性が、手を差し出したので、少しこわごわ握手した。
「ギルバートです。」
キャプテンのように暖かい手。でももっとしっかりしている。
「ルシファ、久しぶり。」
アランがルシファにも握手を求めた。
「確かに、しばらく会ってなかったね。キャッシーからはいろいろ聞いてはいたけどね。」
意味ありげにキャッシーを見た。
キャッシーはわざとそ知らぬ顔をした。
「キャプテンからは聞いてるよね?」
「ああ。ワクチンを打たないんだろ?」
「とても危険な賭けに巻き込んで、すまないと思ってる。ただ、危険だからこそ君に一緒にいてもらいたいんだ。」
「そこまで信用してくれるなんて光栄だよ。」
ルシファと親しく話していたアランがギルを見た。
「ルシファから聞き飽きるほどいわれただろうけど、少しでも体調に変化があったらすぐいってくれ。」
ギルはうなづいた。
「じゃあ、早速、外にでようか?」




