第1部 第51章
「見てご覧。キャッシーお奨めの噴水だ。」
ガラスの外を見ると大きな噴水から水が流れ落ちている。彫刻の施された大理石のあちこちから水が吹き上がり、彫刻を滑り落ちる。吹き上がった水しぶきが光を受けて虹を作っている。
「きれい・・・。」
ルシファに対する不快も消える美しさだった。
あまりの水の芸術に座るのも忘れて見入った。
「あなたに見せたかったのはこれよ。きれいでしょ。」
アイスクリームを片手に持ったキャッシーが椅子をひいてくれたので、我に返って座った。
なんてきれいなんだ。水と光と彫刻と。いつまで見ていても飽きない。
「アイスクリームも食べてもらいたかったのよ。一口食べてみて。」
差し出されたアイスクリームをスプーンで一口分取ると、口に入れてみた。
「冷たい。」
口の中ですぐに溶けてなくなってしまった。
「溶けちゃったよ。甘いのしか口に残ってない。」
キャッシーはクスクス笑って黄緑色のグラスを差し出した。
「ミントレモネードにしてみたわよ。」
「キャッシーのは? 」
「ピンクグレープフルーツとオレンジのカクテルよ。」
とてもきれいな色に飲むのがもったいなかった。
「パイを食べてみて。」
いわれるままにパイを口に入れると、ギルは変な顔をした。
「何これ・・・。・・・まずい。」
ボソリと呟いた。
キャッシーはうれしそうに目を輝かせた。
「よかったわ。私のパイよりおいしいなんていうほど舌が壊れてなくて。」
ギルは慌ててジュースで飲み込んだ。
「ジーンリッチが普段食べてるものはみんなこんな感じなのよ。原材料は機械で管理され、農薬や化学肥料で素材本来の力の抜けた『物体』でしかないようなものばかり。ただ見た目がきれい、カロリーがある。それだけの食事じゃ、心にエネルギーは補給できないわ。」
ルシファから聞いて食べるものの大切さはわかっていたが、ここまで違うとはビックリした。
「明日、私の家にいらっしゃい。自慢の庭を見せてあげるわよ。」
ギルは目を輝かせてルシファを見た。
ルシファは了解したように微笑んだ。




