第1部 第50章
「ギル。キャッシーのお供は疲れただろ? 少し休みたいと思わないかい?」
キャッシーの荷物を両手に下げたルシファがいった。
「そうやってギルをダシに使うんだから。」
「ダシに使われてるのはわかってるけど、疲れたのは本当かも。」
こんなに歩いたのは初めてだ。太もものあたりが痛くなってきた。
「しょうがないわね。じゃあ、ゆっくり座ってアイスクリーム食べましょ。」
2人の疲れなど気にするふうもなく、さっさと歩いていった。
キャッシーお勧めの喫茶店はそれほど遠くはなかった。お店に入るとカウンターの奥にまばらなお客がテーブルについていた。人ごみというほどは混んでいなくてほっとした。
「私はいつもの紅茶をお願いするよ。」
「じゃあ、噴水の見えるいつもの席、取っておいて。」
了解というように振り向きもしないで片手を上げてそのまま店の奥へと行ってしまった。
「私はここではいつもアイスクリームにするんだけど、ギルは何が食べたい?」
目の前のガラスケースの中には色とりどりのケーキが並んでいた。
あまりにきれいで食べ物というよりはお花畑を見ているようだった。
「あ、ラズベリーパイがある。」
「それにしようか。飲み物は何にする?」
「わからないからキャッシーのお勧めにして。」
店員はガラスケースの上に置かれたトレイに、お花畑からラズベリーを取って乗せてくれた。それに琥珀色と薄い黄緑色とオレンジがかったピンクの液体の入ったグラスを乗せた。
「私のアイスクリームは今作ってるから、先に持って行ってくれる?」
トレイを渡されたので、こぼさないように慎重にゆっくりと店の奥に歩いていった。初めてのお店でどこにルシファがいるのか見つけられるかな?と思ったが、心配は無用だった。
こぼさないように立ち止まって店を見渡すと、ガラス張りの壁際の隅に、大きなガラスから入ってくる光を受けてさながら絵のように座っているルシファが見えた。
---まったく、目立ちすぎる!---
出来るだけ人目に付かないように、ゆっくりと歩いたのに、気付いたルシファがギルに向かって手を上げた。
---そんなことしなくたってわかるよ!---
心の中で悪態をついた。案の定、店の中の数人の視線がルシファに注がれた。
ギルはその視線が戻されるのを待ってテーブルに近づいた。




