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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第4章


 

 驚いて見つめ返す彼に微笑むと、彼と並ぶようにベッドの横の床に座り込んだ。


「『光あれ』と神がいうことによりこの世界はできたそうだ。だから人間は全てを創った全知全能の神をあがめた。」


 遠い空のかなたを見ているかのように、床に転がり天井を見つめた。


「『光をもたらす者』と呼ばれるほど光り輝く大天使ルシフェルは、そんな神の何が気に入らなかったのか、神に反逆を企て、地獄に落とされ、悪魔になったそうだ。」


 床に転がって天井を見つめたまま、独り言のようにつぶやいた。


「ルシフェルは神に対してどんな異論をいったのだろう? 全知全能の神の計画の何が彼にとって納得がいかなかったのだろう?」


 考えてもしかたがないことだ。ルシファは床から体を起こして彼を見た。


「私も悪魔なんだよ。」


 笑いながらそんなことをいうルシファに何をいい返せばいいか全く言葉が浮かばなかった。


「君の名前、私が決めていいかい?」


 勢いよく床から立ち上がった。拒否する理由が別になかったせいもあるが、ルシファのペースに飲まれて首を縦に振っていた。


「ギル。ギルバートはどう?『輝かしい願い』という意味だ。」


 彼は首をかしげた。この僕が? 輝かしい願い?


「どう? 気に入らない?」


「違う。とてもいい名前過ぎて・・・。僕には似合わない。」


 だってみんなに早く死んでもらいたいとしか思われなかったんだよ。


「親が子供に名前をつけるとき、その子に似合うかどうかなんか考えないだろ? 親は希望を込めてその子の為に名前を選ぶ。その名前に恥じる人生を歩むかどうかはその子次第だ。」


 もう、僕は・・・。


「私の願いは君が新しく幸せな人生を生きてくれることだ。」


 喜んでいいはずだ、あの地獄の日々が終わるんだ。しかし、あまりにも実感がなく喜びもわいてこなかった。


「どう? 嫌いじゃなければそう呼ばせてもらうよ。」


 頭では全く理解できていないのに、首は頷いていた。


「じゃあ、ギル。いきなり色々あって疲れたろ。少しお休み。」


 ルシファの安心した笑顔を見たら、そのまま緊張の糸が切れたのか、ベッドに倒れこむように意識が薄れていった。


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