第1部 第46章
いきなり街の人ごみはきついだろうから、人の少ない博物館に行くことになった。
キャッシーとの待ち合わせのフロアにギルとルシファは座っていた。
ギルはルシファの影に隠れるように周りを伺っていたが、視界に入る人たち、周りの空気を感じていた。
ルシファの服を握っていた手の力が徐々に抜けてきた。
「どう? 大丈夫?」
キャッシーから送られてきたキャップを目深にかぶって、うつむきながら身じろぎしないギルに聞いた。
「大丈夫。今、僕はあの時なんであんなに怖い思いをしてしまったのか馬鹿みたいに思うよ。」
顔をあげたギルがルシファをにらんだ。
ルシファはなぜにらまれるか判らずに首をかしげた。
「あなたは自分がどれだけ目立ってるのかわかってないでしょ?」
ますます判らずに首をかしげた。
「みんなルシファのこと気になってこっちを見るんだよ。」
「別にそんな目立つ格好してないよ。」
いつも通りのラフなシャツにスラックス。色が鮮やかなわけでも模様があるわけでもない。何がおかしいのか確かめるように袖を見たり裾を見たりした。
通り過ぎる人たちがふとこちらを見る。彼らはみなその美しさに目を奪われた。
この人は本当に判ってないんだと思うとギルは呆れた。
「何してるの?」
明るい声に振り向くとキャッシーがいた。
「私、何かおかしいかい?」
自分で見えない背中をキャッシーに向けた。
「いつも通りのおかしさだから、今更気にすることないわよ。」
キャッシーは全てお見通しのようだった。
「それより帽子のかぶり心地はどう?見た目はなかなか似合ってるけど。」
「最高だよ。さすがキャッシーのセンスだ。」
施設案内の大きな看板を見上げた。
「何から見ようか。」
「こんなにいっぱいあったら選べないよ。」
「じゃあ、初めから行こうか。」
すぐ側の部屋に入ると、真っ暗だった。壁際のいくつかの小さなランプが光っていたが、基本闇の空間。自分の足先まで闇にまみれてしまったようだった。
「明かりはないの?」
ちょっと恐怖心が沸いてきて、ギルは震える声でいった。
「ちょっと待ってね。どれだったかしら?」
キャッシーが薄暗い中、小さな光を見ながら悩んだ。
「あ、これこれ。」
何かのボタンを押すとギルの目の間に青と緑の球体のホログラムが現れた。
「これが地球よ。そしてこれが月。」
地球を片手に乗せるように手を出すと、もう片手で地球の側に浮いている小さな豆粒のようなものを指差した。
「月って、あのお月様?」
「そうよ。地球も月も宇宙から見るとこんな感じなの。」
「これが木星。」
ルシファが壁際のボタンを押すと巨大な赤みがかった球体が現れた。
「こんな大きな星も宇宙には浮いてるんだ。」
大きさの感覚がもうなくなった。宇宙の広さに感動した。




