第1部 第45章
「ねえ、お願いがあるんだけど・・・。」
いいずらそうにギルが目を伏せていった。
「なんだい? キッシュを作ってくれは断るよ。」
「そんなこと頼まないよ!」
「じゃあ何?」
ギルはなんていっていいのか言葉を探した。ルシファはギルが言葉を見つけるまで黙っていた。
「データを消していい石ないかな?」
今度はルシファが言葉をなくした。
「どうしたの?」
ギルはどもりながら庭の岩の話をした。
「本当に記憶を消せるのかどうか確かめたいんだ。」
必死さが尋常じゃないほどで、ルシファは返って気になった。
「確かめてどうするの?」
「ねえ、お願い。どうしても確かめたいんだ。自分に一体どんな力があるのか知りたいんだ。」
どうしてこれほど必死になるのかルシファにはわからなかったが、不気味がられた能力が自分でも理解できないということは辛いことなのだろうと思った。
「そうだな。何かあるかな?」
仕方なさそうに仕事部屋の引き出しを開いた。
「これならもう使わないだろう。」
「中にどんなデータが入ってるかみてみて。」
いわれたとおり機械に当てると、コンピューターの画面にどこかの国の美しい風景がいくつも現われた。
「消えちゃってもいい?」
「いいよ。」
機械から石を取り出すと両手の中に包んで目を閉じた。
「これでまた機械に入れてみて。」
画面には「データなし」の文字が写された。
「本当に・・・消せたんだ・・・。」
ギルはじっと食い入るように画面を見つめた。その真剣さにルシファは疑問を感じたが、自分が知らなかった能力を見つけたときはそういうものなのだろうと思った。
「頼むからその力でいろんなデータ消さないでくれよ。」
「大丈夫だよ。ただ触ったら消えちゃうってわけじゃないから。」
ギルはずっとひっかかっていたものが取れたような晴れやかな顔でいった。




