第1部 第41章
ジーンリッチとナチュラルに完全に分かれてから程なく、大きな戦争が起ころうとしていた。ジーンリッチの1部の人間が「選民思想」の元、下等な遺伝子は必要ないと戦争をしかけようとしていた。
「この石のデータはマザーコンピュータによって一元管理されている。」
額の石を指差した。
ジーンリッチは額の石にその人の全データが入っている。その情報はマザーコンピュータによって管理され、戸籍から病歴、遺伝子情報、その人の銀行口座、行動の全てが管理されている。
「もちろん個人情報は厳重管理されていて犯罪なんかが起きなければ引き出されることはない。」
石は情報の送受信機になっている。選民思想の1部の人間はそれを利用し、ジーンリッチを戦争へと洗脳しようとした。洗脳は気付かれることなく浸透し始めジーンリッチは自分の意思と関係なくナチュラルに対し憎悪を感じ戦争への準備がなされた。
「それに気付いたのはナチュラルだったんだ。」
額の石は人を操ることもできる危険性を前々からナチュラルは危惧していた。
「遺伝子構造が違うだけでナチュラルだってすごい研究者はいっぱいいる。」
そんなナチュラルの必死の行動のおかげで洗脳は解けて、ジーンリッチは望みもしない戦争や人殺しをしないで済んだ。
しかし、今まで築いてきた石のある快適な生活を捨てるほどの勇気はジーンリッチにはなく、自分達を人殺しから守ってくれたナチュラルに対しての敬意を示してマザーコンピュータをナチュラルに託した。そして、もっとお互いを理解しあうために両方が分け隔てなく交流できる場を作った。
「それがアニバーサリー・ヴィレッジなんだ。」
「すごい歴史があったんだね。」
「歴史は何度も間違いを犯し、その度に何かを学んで進歩していく。戦争になる前に間違いに気付けたのはラッキーだったよ。」
「気付いてくれたナチュラルはすごいね。自分を守るのに必死になってジーンリッチを滅ぼす事だってできたでしょ? だって数的にはナチュラルの方が多いんだから。」
「よく覚えていたね。」
以前、難しい説明をしたのをちゃんと覚えていてくれたのが意外だった。本当に何でも知りたくて、知ったことは吸収しようと必死なんだと思った。
「ヴィレッジはいい所だよ。自然が豊かだ。いくらテクノロジーで快適な生活を手に入れても、人間としての遺伝子は自然を求めている。」
「ジーンリッチの世界はどうしてその自然をいっぱい取り入れないの?」
「体が耐えられないんだよ。自然というと聞こえがいいが、自然にだってよくないことがいっぱいある。例えばウイルスや雑菌。ナチュラルはちょっと体調不良を起こしても自己免疫で大したことなく済むけど、ジーンリッチは潔癖すぎる環境で自己免疫力が落ちている。ヴィレッジに行くにはワクチン接種と毎日の全身洗浄が義務付けられている。」
「そんなに大変なんだ。」
ジーンリッチとナチュラルにはそんなに大きな違いがあることに愕然とした。
「それで、君をヴィレッジに連れて行くには、いろいろ事前に説明しておかないといけない。君の事をキャプテンに全部話してもいいかい?」
「キャプテン?」
「ヴィレッジの責任者だ。彼の許可がないと、いろんな制限がありすぎて行っても大したことできない。どうせ行くなら実りのあるものにしたいからね。」
何か深い計画がルシファの中にはあるようだが、全く予想はつかない。でもルシファが考えることなら、すごいメリットのあることなのだろう。
「別にいいよ。」




