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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第34章

「さて、報告書をまとめないと。」


 ベッドから降りるとギルのカップを受け取った。


「その前に一応石のデータを読まないとね。まさか石の記憶を読みましたなんて報告書は書けないからね。結構な時間部屋にこもることになるよ。」


 カップを2つトレイに乗せると本棚を見た。


「何がいいかな。」


「ねえ、博物館で女の人がいってた洪水ってなに?」


「ああ、それならこの本に書いてある。」


 分厚い本を取り出すと差し出した。


「その本はただの物語のように書いてあるけど、実際にあったようだよ。内容は本で楽しんで。ただの物語として読めばそれなりに楽しめるかもしれないけど、博物館ではかなりリアルな映像でちょっと怖いよ。怖くなったら他の本にした方がいい。」


「わかった。」


 本を胸に乗せてベッドに横になった。


「君の本の読み方に慣れるには時間がかかりそうだよ。」


 あきれたようにいうと部屋を出て行った。



 

本を読む前に少し心を落ち着けようと思った。


人が追い詰められて死ぬ場面なんて、いくら振り回されないでいられても、やはり少しは心にひっかかった。


それにルシファのあの冷たく寂しげな顔がどうしても頭から離れなかった。


ルシファは自分が人造人間であることを気にしているのだろうか?


人造人間だからって何だっていうの? ルシファはルシファだ。生きる力をなくしたジーンリッチよりずっと人間らしい。


横になった背中に、ルシファが座っていた部分だけ暖かさを感じた。


ルシファはちゃんと血の通ったステキな人間なのに。


何も気にすることないのに。それって僕が悪魔だって自分のことを思ってることと同じなの? 僕がルシファに気にすることないって思うのと同じくらい、自分のことを悪魔だって思うことは気にする必要のないことなんだな。




 少し落ち着いたので本を読んでみた。


 また神様が出てくる話だった。


 人間がどんどん傲慢になってきて、神は人間を滅ぼそうとして大洪水を起こした。


神に敬虔だった人間にはその前にお告げがあり、洪水に備えて船を作り、動物たちを乗せた。雨は何日も降り続き、陸地はなくなっていく。やっと雨があがり徐々に水は引き、陸地が現われた。そして船に乗っていた人間や動物は新しい生活を始める。


ギルは想像してみたが、今いる地球上の動物を1つがいずつ乗せたとして一体どんな巨大な船を作ったのだろう? 高い山すら見えなくなるほどの雨って一体何日降るんだ?


ルシフェルの出てくる物語も、この洪水の物語も、全く人間の想像を超えてると思った。


でもルシファは本当にあったことだといっていた。


----仕事が終わったら聞いてみよう----



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