第1部 第27章
「この石は自殺した人のものだ。決して気分のいいものは見えない。それを前提で考えて。」
ギルは戸惑った。もう、人の心は読まないと決めた。でも何でそう決めた?
人が嫌がるからだ。
今、この石の記憶を読むことは誰かを傷つける?
そんなことはない。この人が蘇生して苦しむかもしれないし、更生できるかもしれない。ただのデータからそんなことを決めるより、記憶を読んであげた方がこの人にとっていいはずだ。
ギルは頷いた。
「やってみたい。それが素直に僕の考えだ。」
ルシファは安心したように微笑んだ。
「いやな気分になったらすぐにやめていいよ。無理は絶対しないで。」
「こっちにきて。」
ルシファの手を取って部屋をでた。
「ルシファが寝て。」
ベッドに連れて行くと、自分はいつもルシファが座る椅子を持ち出した。
「いつもと逆だな。」
ルシファは大人しくベッドに横になった。
いつもルシファはこんな感じで僕を見てたんだ。椅子に座るとベッドに横になるルシファを見下ろした。
本当にきれいな人だなと思った。炎のようなオレンジの髪。華奢な体。細く筋のとおった鼻。彫が深いわけではないが、くっきりとした顔立ち。女性の美しさも男性のしなやかさも両方供えている。光の天使だ。
あまりの光に初めの頃は恐れがあった。全く違う世界の人だと。
でも今は出来るだけルシファのようになりたい、できるだけルシファと同じ世界で生きていたいと思う。
「どうした?」
「僕、また1歩新しい世界に踏み出した。」
「ああ、自分の足でしっかりと進んでる。思ったよりも早い速度でね。そのうち走り出すだろう。でも、何かにつまずいて転ぶことがあっても、顔からのスライディングはもうするな。」
クスクスと笑い出して石を差し出した。大げさに口を尖らせて石を受け取ると、右手をルシファの手に乗せた。




