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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第26章

 今まで気付きもしなかった奥の部屋に入ると、机の上に大きな機械があり、両側の壁はどちらも本棚にきっしりと書類が入っていた。


「私の仕事は『蘇生判定委員』というものなんだ。仕事といっても、時々依頼された時にやって、報酬をもらうだけだけどね。」


机の上に置かれた小さな箱を開くと、金色の石が入っていた。


「この石は・・・。」


「これだよ。」


 額の自分の石を指差した。


「自殺した人の石だ。」


 ギルは息を飲んだ。


「といっても、今、体は蘇生液の中にあって、蘇生可能な状態にある。」


 ルシファはジーンリッチの現状を話し始めた。


地球の人口は現在約4億人。ジーンリッチの人口はそのうちたった1パーセント。人々が住んでいる陸地の1パーセントほどの居住地で生活している。圧倒的に「人類」はナチュラルの方が多い。人類人口からするとわずかでしかないジーンリッチの人口は減少傾向にあった。


「全て管理され、病気という病気もなく、寿命もナチュラルよりはるかに長い。そのジーンリッチの人口が減少している。」


「どうして? 」


「決して産まれる子供の数が減ってるわけじゃないんだ。」


「自殺?」


「それだけが理由ではないが、大きな要因になってる。だから自殺者は可能であれば蘇生させる。昔はなんでもかんでも蘇生できるものは蘇生させてたけど。今は『判定』によって蘇生させるか、そのまま本人の意思を尊重するか決める。」


 自殺者は年々増え続け、ジーンリッチの死因のトップになっている。もとより寿命の長いジーンリッチにはナチュラルのような病気による死因はほとんどない。自殺、事故、殺人がほとんど。もちろん、蘇生不可能な状態の場合、そのまま処分されるが、蘇生可能な場合、自殺であれば『判定』にかけられる。自ら命を終わりにしたものに更生の可能性があるのかどうか。


 まずは医師による肉体的蘇生率による判定。あまりに酷い後遺症が残るようでは「処分」の判定となる。これで「蘇生」の判定が出ると、心理判定委員の判定を受ける。


「それが私の仕事。この石から膨大なこの人のデータを読み取って、今後、更生の可能性があるかどうかの判定をする。」


 蘇生されると更生病院で心身共に治療をうけるが、病院を無事退院できるのは7割。3割は重度の精神疾患のためにそのまま入院し続ける。無事退院できても、半分はまた自殺を繰り返す。本人の苦痛と更生にかかる手間を考えた時、自殺者の蘇生には判定を必要とするようになった。


「判定委員は5名。毎回、委員に登録されてる者からアットランダムに5名が選ばれ、それぞれの意見の過半数で決まる。私一人の意見で人の生死を決めるなら、絶対にやらない所だ。」


 ルシファならそうだろうと思った。自分の考えで人左右することなんて絶対にしない。


「そこで、ギル、君の力を貸してくれないか?」


 石を見ながら話していたルシファがギルを正面から見つめた。


「私に利用されたように思うか、自分の能力を才能に変えるチャンスだと思うかは君次第だ。」


「僕に、その石の記憶を読めと?」


 ルシファは頷いた。


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