第1部 第22章
ブラインドの隙間に指を入れて外の明るさを確かめた。眩しくない。
「庭に出ていい?」
待ちきれずに部屋のドアを開けた。
「暗くなる前には戻っておいで。」
今朝見たあの美しい風景。夢だったのかもしれないと思ってしまう。ちゃんと今もそこにあるのを確かめたかった。
自分で玄関の扉を開ける。
もう少し早く来てもよかったのかもしれない。今朝より光が弱い。
同じ草、同じ花、同じ木なのに朝と全く表情が違う。
空が濃いオレンジ色になっている。
1つ1つの花に顔を近づけた。黄色い花、赤い花、まだ蕾の花。
いくつの花にあいさつしただろう。
「ギル。そろそろ暗くなってきたよ。」
玄関からルシファが歩いてくる。
ギルはその姿を見てクスクスと笑った。
「何を笑っているんだい?」
「ここの花たち、みんなルシファが大好きなんだって。ルシファが留守にすると太陽が1つなくなっちゃって寂しいっていってるよ。」
ルシファは首をかしげた。
「この青い花、人間は自分を失敗作だって捨てるところをルシファに助けられたっていってる。」
青い小さい花を優しく指でつついた。花は恥ずかしがるように揺れた。
「確かにそうだ。君は花ともお話ができるんだ。」
ルシファは感心したようにいった。
「たぶん。だって花がそういってるのわかるから。」
思えば花と話をしたのは初めてかもしれない。
「明日の予定を考えていたんだ。暗くなってきた。中で話そう。」
いつの間にか花の色がわからないくらいに日は暮れていた。
「明日の予定って?」
今まで新しいことに対しての不安ばかりだったが、今は新しいことを不安になることなく迎え入れられた。
「夕方の30分だけ、『ナチュラル博物館』に行ってみようかと思ったんだ。」
『ナチュラル博物館』?
「ナチュラルの世界が説明してある所だ。風景や歴史、動物も展示してある。」
見て見たい。動物たちを近くで見てみたい。
「まずは閉館前の30分だけだよ。日が翳ってまぶしくない時間帯だとそれぐらいだ。人気で混んでるスポットじゃないけど、それなりにお客はいるからね。いきなり長時間はきつすぎる。」
「いいよ。たった30分でも、僕は行きたい!」
「キャッシーの時と同じで、まだいたいといっても30分で帰るよ。」




