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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第1部 第20章

 まだ薄暗い時間に起こされた。


「庭を見せたいんだ。今ならそんなにまぶしくないから外に出られるよ。くる?」


 ベッドから飛び起きると慌ててルシファの後を追った。


 前にここの廊下をルシファを探して歩いた時、とても動揺していてまるでどんな所だったか覚えてなかった。


 オーク色の木の壁。薄明かりがさして、頬を染めたように薄ピンクがかっている。


 母さんが好きだった山と草原の日の出。自分もその風景が大好きだった。


「開けるよ。まぶしかったらいってね。」


 大きな木の扉をゆっくりと開いた。


 激しくはない柔らかい光がなだれ込んできた。


 外に出られる! 僕は外へ出るんだ!


「さあ、行こう。」


 柔らかい光に縁取られたルシファが手を差し伸べた。逆光なのに、その光を受けてルシファが明るく輝いているように見えた。あの山のようにオレンジ色の髪が少しピンクがかっている。白い肌も薄ピンクがかって・・・。まるで本当に光の国から下りてきた天使のようだった。


 自分には不釣合いだ。ふと躊躇した。


「自分で自分の人生は創って行くんだ。私はただサポートすることしかできない。そのサポートを受け取る、受け取らないは君の選択だ。」


 誰がしゃべっているのだろう? 柔らかく降り注いでくる言葉に、自分で決断をだした。


 差し出されたルシファの手を握った。


 ゆっくりと大きな扉をくぐり、光の世界に足を踏み出した。


 そこに広がっているのは朝日を受けて目覚めようとする、色とりどりの草花だった。


 ギルは息を飲んだ。


 その広い世界、草花たちの沢山の息遣い、どこまでも広がる空。雲はいろんな形でたなびいて、姿は見えないが鳥の声がする。


 世界はなんて広いんだ。なんて力強くて・・・。


 もう、説明する言葉がない。ただ、ただ圧倒された。


「世界は広いんだ。」


 ギルの心がわかってるかのようにルシファがいった。ルシファは身をかがめて両手で咲き誇る大きな紫色の花を包んだ。


「世界は大きいよ。似合うとか、似合わないとか、不適当だとかない。紫の花があって黄色い花があって、鳥がいて動物がいて。みんな存在してる。私も君もこの花のように、ここに存在してる。それだけのことだ。」


 ルシファはそれぞれの花たちに話しかけるようにゆっくりと歩いては花に手を伸ばした。


 薄いラフな白いシャツが風になびいている。草花はルシファを讃える様に揺れた。


 明るさが増してきた。そろそろ金色の魔法の光がやってくる。その金色の光のマントはルシファがみんなにかける魔法なのかもしれない。太陽の化身のようなこの光の天使が。


 風が強くなってきてルシファのシャツを更に揺らした。その白い布が翼になって、天使に戻って飛び立って行ってしまいそうで、ギルは走り寄って、その腕を掴んだ。


「行かないで。ここにいて!」


 突然でビックリしたように振り向いたルシファが微笑んだ。


「またわけのわからないことを。ここは私の家だよ。」


 ギルは我に返って手をはなした。


「そろそろまぶしくなってくる。今日はもう家に入ろう。」



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