第2部 第69章
残された時間は2週間。たった2週間で何ができるのだろう?
ギルはまず鷹の檻に行った。鋭い目がお父さんに似ていた。
「君たちは、ただの地球の変動だったらきっとその翼で乗り越えられるんだろうね。」
頭上の横木にとまる鷹を見上げていった。
「でも、ごめんね。人間は君たちの大空も汚してしまったんだ。」
謝るギルをただルシファは見ていることしかできなかった。
「今のうち、思いっきり大空を飛ぶんだ。下に広がる広大な自然を今のうちにしっかり見ておいて。自由に飛ぶんだ。」
入り口を全開にした。
「さあ、お行き!」
追い立てるように両手を大きく広げて、叫んだ。
10羽はいるであろう鷹が一斉にその翼を広げて舞い上がった。
その大きな翼を羽ばたかせると、檻の中の空気が激しく動いた。羽が舞い散る。
鷹がみんな檻から飛び立つと、振り向いてルシファを見た。
まだ何枚か、柔らかそうな羽がルシファの周りを漂っていた。
ルシファは自分の肩に羽が乗っているのに気付くと、それをギルに差し出した。
「君はあの人から羽をもらったね。」
父の言葉を思い出した。
リロが遊んで欲しそうに寄ってきたが、ギルはその鼻に優しくふれた。
「ごめんね。もう、君たちを救うことはできないんだ。柵を壊すから、思いっきり走って、見たい所に行っておいで。今からすごい音がするけど、びっくりしないで。危ないからこっちにいてね。」
動物達に謝るギルを見ていると、ルシファはいたたまれなかった。
ギルは柵のところへ行き、持っていた斧を振り下ろした。柵の細い丸太が折れた。ギルは何度も斧を振り下ろした。
----どうして? どうして、こんなことになったんだ?----
どうして、ヴィレッジを壊してるんだ? この前はこの柵を治していたのに。なぜ? なぜみんな死んじゃうの? どうして死ななきゃいけないの?
怒りに任せて何度も斧を振り下ろす。
その姿を見ながらルシファは身を引き裂かれるような想いだった。
どうして、今から、今から、ジーンリッチやナチュラルだけじゃない、動物とも自然とも仲良く暮らせる世界を創って行こうと思っていたのに。どうして、こんなことしてるんだ?
怒りが治まらない。無茶苦茶に斧を振り下ろして、丸太を壊す。
「どうしてなんだ! なんでだよ!」
どうして君たちを救うことができないんだ?
僕は何もしてあげられないまま・・・。
斧をおろして、荒い息を静めようと手を休めた。
少し息が静まり、顔をあげると、ルシファが見えた。
あの悲しげな顔でじっと見つめている。そして、その顔には幾筋もの涙が伝っていた。
「ル・・シファ・・・。」
震える手と足でゆっくりルシファに歩み寄った。
----卑怯だよ。その顔・・・。----
触れたら壊れそうなもろい表情。ルシファは何もいわずに立ってる。
あんなに強くて、悪魔にだってなれるルシファを泣かせたのは、僕なの?




