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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第2部 第68章

 船の建設もほぼ完了してきた。


 船に乗る人員の選考も進められた。


 ここまでこぎつければもうそれほど焦る必要がなくなり、ほっと一息つこうとした矢先だった。


 いつものように動物たちの世話がひと段落して、喉を潤そうとラウンジに向かうと、ラウンジが騒然としていた。


 大きな原発が集まるエリアに地震が起こり、何基かが甚大な被害を受けたとのニュースが流れていた。


 事の重大さがよくわからずに、行きかう人達を見つめている事しかできなかった。


「データが出たぞ。」


 画面のニュースが消えて、文字の羅列が流れた。やたらと数字が多い。どんな内容なのかまるでわからない。


 ラウンジを出て何が起こったのかわからぬまま取り残されたくなかったので、部屋の隅の邪魔にならない所で状況を見守るしかなかった。




 どれくらいそうしていたのか、ラウンジの人たちがまばらになってきた。


 どうしようか悩んでいると、ルシファが部屋に入ってきた。キャプテンも一緒だった。


「ここにいたんだ。」


 安心したようにルシファがいった。ギルの不安が一気に消えた。


「何があったの?」


 声が震えてしまう。


「大きな原発が壊れてね。放射能が漏れだしてる。1月もすれば、ここに高濃度の放射能が吹き込むことになる。」


 数字の羅列は放射能の時間を追った拡散データとヴィレッジへの影響のデータだったらしい。


「船のハッチを2週間後に閉める。」


 それまでに船に乗り込む人の人選と機械系統の最終チェックを行う。


「ここは、ヴィレッジはどうなるんですか?」


「1月もすれば、高濃度の放射能で汚染され、生物が生きられない環境になる。」


 キャプテンが拳を握りしめていった。


 ここが? この楽園が?


 何かできないの? 何かしてあげられないの? ここの動物たちはどうなるの?


「キャプテン、動物たちを放してあげていいですか?」


 閉じ込められてみすみす死んでいくなんて。アランだってオオカミをみんな放した。


「君に任せたよ。」


 キャプテンは悔しさをかみ殺した小声で答えた。



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