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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第2部 第66章

「君は、今日はここで休んでいた方がいい。動物園にはいっておくよ。私はヴィレッジに行ってキャプテンやキャッシーの友達に伝えてくるよ。」


 ギルはベッドに入ったまま頷いた。


「それと、ステーションにキャッシーからの荷物が届いてた。話してた服、すぐに送ってくれてたんだね。ここに置いておくよ。」


 ギルは頷くのが精一杯だった。また涙があふれてきた。




 どうして人はこんなにあっけなく死んでしまうのだろう?


 お別れなんていってなかった。


 突然、消えてしまう。突然、壊れてしまった。


 こんな想いをしている人たちが沢山いる。今年に入ってから一体どれだけの災害で、どれだけの人が亡くなったのだろう? みんなにも家族や友人がいて、彼らもこんな想いをしているのだろう。自分だけではないと思っても、納得できなかった。


 どうして? どうしてこんなにあっけなく、突然・・・。


----だから、いつでも悔いが残らないように、一瞬、一瞬を必死に生きるのよ。----


 心の中のキャッシーの幻がそういっているような気がした。


 キャッシーはちゃんと生きたね。自分らしく、君が笑顔を与えた人はすごい人数なんだろうね。きっと、1番笑顔をもらったのは僕じゃない?


----あなたが笑ってくれるのが大好きよ。それが私の生きた証。ちゃんと笑っていなさい。----


 そうだよね。笑っていなくちゃ。


 笑顔を作ろうとがんばったが、涙しか出てこなかった。


 泣きながらベッドをおりた。


 机の上にはキャッシーからの箱が置かれていた。


 そっと触れてみる。


 初めてキャッシーから送られた箱を開けたとき、まだ素直に受け取れなかった。自分のためにウキウキで服を選んでくれた、あの明るい雰囲気が違和感だらけで、素直に受け取れなった。


 あの時、箱を開けたときに1番に出てきた木彫りの鳥が机の上で、空の花瓶を見上げていた。キャッシーからもらったカモミールを見上げていたのに。また何かのお花を活けてあげなきゃ。


 箱に両手を乗せて感じてみる。


 相変わらずの楽しい雰囲気が伝わってくる。心から船の出港を喜んで、船の建設に携わった2人を誇りにしているキャッシーの想いが伝わってくる。


 箱を抱きしめて泣くことしかできなかった。


 どれぐらいキャッシーの想いに包まれて泣いただろう。


 ふと肩に手が乗せられた。


「君を1人にしておくのが心配でね。」


 ルシファが立っていた。


「キャッシーの想いを感じてたんだ。僕たち2人を、とっても誇りにしてくれてた。」


「キャッシーも私たちの誇りだよ。」


 ギルは大きく頷いた。


「箱、開けないの?」


「中には前夜祭の服が入ってるんでしょ? まだ、もう少し、船が出港しないで欲しい。みんなと一緒にいられる時間、大切にしたい。」

 


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