第2部 第60章
仕事も一段落して、また馬たちと一緒にいた。
やんちゃですぐにちょっかい出してくる馬が草を食べていたので、意地悪したくなり、草との間に割って入った。馬は特に怒った様子もなく、当たり前のように邪魔なギルを鼻で押して避けたので、そのまま地面に転がされた。ギルは甘く見ていた。馬のただの鼻面がこんなに力のあるものだと思っても見なかった。
「何やってんの?」
ルシファの声がした。
転がされた地面から立ち上がると急いで柵の所に走っていった。
「いつもあんなふうに馬に遊ばれてるの?」
あきれたようにルシファがいった。
「いつもじゃないよ! それよりルシファこそ何してるの?」
ずっと部屋にこもってデータを作っていたのに。
「キャプテンが呼んでる。」
キャプテンの部屋に入るとソファに座った。
「君が連れてきたあの老人。開口1番、ここではどんな教育をしているんだって。」
あの変な老人のせいで呼ばれた事がわかった。でも、別に失礼なことをした覚えはない。
「動物と話をすることも教えてるのかってね。」
ギルは息を飲んだ。
「挙句の果てにはここで箱舟を作る気らしいが、ジーンリッチは排除するなんて非情な計画を考えた悪魔を呼べと言い出した。」
あの老人・・・。責任者に会いたいなんて、どうせ無理だと思って受付に渡したのに、本当にキャプテンと会ったんだ。何て事をしてしまったのだろう。しかも、そんな酷いことをいうなんて。
「キャプテン、そろそろ本題に入らないと、ギルがかわいそうですよ。」
ルシファが笑顔でいった。キャプテンの顔を見ると笑っている。どうなっているのかまるでわからなかった。
「すまない。私のあの時の困惑を話したくてね。」
楽しそうにキャプテンが話している。何がどうしたの?
「あの人は研究者で、自分の研究を我々に提供したいといってきたんだよ。しかもそれが我々の今1番求めている自家発電の研究だ。」
「電気が、電気が使えるの? 」
「まだ、彼の小さな研究機材でしか実証されていない。それを大規模な設備で実際に利用できるものかどうかを、ここで確かめたい。もし、使えればその技術を我々の船に使っていいという申し出だった。」
2人の明るい笑顔はそういうことだったのか。
「君のおかげだよ。」
キャプテンがギルを笑顔で見つめた。
「僕? 案内しただけですよ。」
「彼は君が気に入ってね。彼は自分の研究を提供する先をいろいろ探していたが、どこも彼の気に入る場所はなかったらしい。彼が自家発電を作りたいと思ったきっかけは、環境に負担をかけたくない、地球を痛めつけたくはないという思いかららしい。科学技術を否定することなく自然と共存すること。科学技術が自然を破壊することなく、守るために使われることを望んでいた。どこのコミュニティも彼の考えに合う所がなかったが、君の話を聞いてここにしたいと思ったそうだ。」
ギルにはよく理解できなかった。
「ルシファのことも気にいってね、そこまで自分を悪者にして出来るだけ多くの人を救おうとする人がいるなら、なお安心だといっていたよ。」
ギルはまだよくわからないままだった。ギルの中ではまだ変なおじさんのイメージのままだった。
「とにかく、1番難航していた問題が解決されて、計画が一気にすすんだんだよ。」
理解できないでいるギルにルシファがいった。




