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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第2部 第55章

 みるみる元気になっていくギルを見てルシファは安心した。


 計画の進捗状況は思わしくなく、夜の話はギルの今日の仕事がメインになっていた。


 思うように進まない計画に心が塞ぐが、ギルが動物達のことを活き活きと話すのをきいていると、未来に対して抱く不安に、今を見失いそうになるのを、何とか引き止めることができた。




 馬の健康管理は専門の獣医が定期的に回ってきてチェックしていった。


 1頭の馬がお腹を壊していたので、薬を用意しておくから仕事が終わったら医務室に取りにくるようにとのことだった。


 広い園内、ギルに割り当てられたカートを運転して医務室に入ると、壁の隅にケージに入れられた白いウサギがいた。


「この子、どうしたんですか?」


「病気になっちゃって、みんなにうつしちゃうから、数日、隔離してるのよ。」


 薬を用意しながら獣医師がいった。


「君、一人ぼっちなんだ。」


 しゃがんでケージを覗いた。中には水とペレットの餌がおかれ、ウサギは元気なく壁を向いたままだった。


「ねえ、この子に生の草を食べさせてあげたいんだけどいい?」


「いいわよ。本当は生の草をあげたいんだけど、忙しくて取りにいってあげられないのよ。お願いできる?」


 獣医師は袋に詰めた薬を渡しながら、よかったという笑顔を向けた。




 馬の薬は夕方食べさせればいいので、そのままウサギのエリアにカートを飛ばした。


「君たちのお友達が一人ぼっちでかわいそうなんだ。草をくれる?」


 広いエリアで思い思い草を食べるウサギに近づいた。


 1羽のグレーのウサギが草を口にくわえてギルを見ると、その場を少しよけた。


「ここの草がおいしいの?」


 避けてくれた所の草を取りながら、横でギルを見ながら草を食べているウサギに話しかけた。


「あの子、早くここに戻れるといいね。」




 袋いっぱいの草を持って診療所に戻ると、さっきの獣医師がちょうど水を替えているところだった。


「そんなにいっぱい取ってきてくれたの? 明日も食べられるわね。」


 トレイを持ってくると袋から草を取り出し、半分ぐらい入れた。


「でも食欲なくて、食べるかしら?」


 獣医師が草の入ったトレイをケージに入れると、壁を向いていたウサギがゆっくりとトレイの匂いをかぎ、草を食べ始めた。


「ありがとう、やっと食べてくれたわ。」


 体がだるいのか、勢いよく食べるわけではなかったが、少しずつ小さな口で草を食べていた。



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