第2部 第53章
「ヴィレッジにはジーンリッチの石のマザーコンピュータが置いてあるっていってたよね。」
「いきなりどうしたの?」
今日の暴動のニュース、ケンカを吹っかけてきた少年。みんなが恐怖にとらわれている。今後さらに不安は広がるだろう。
「お父さんに、シャーマンに、マザーコンピュータに祈りを捧げてもらったら、ジーンリッチの精神状態も安定するんじゃないかな。」
シャーマンのライブラリに祈りの力のすごさが載っていた。見えないエネルギーを送って人を元気にしたり、水をきれいに浄化したり、「祈り」にはいろいろな力が秘められている。
「いい考えだけど、よすぎて採用できないよ。」
ルシファはできるだけ柔らかく否定した。
「以前、アニバーサリー・ヴィレッジができる前に戦争になりかねたのは、その石の洗脳のためだ。それがどれほどいいものでも、他人に影響を与えてしまうことはよくないと思う。おそらく本人の力を重んじる君のお父さんが、了承はしないと思うよ。」
ギルはせっかくいい考えだと思ったのに、がっかりした。
確かに父がどんなにいい内容でも、洗脳まがいのことなどするわけがない。
他に自分ができること・・・。ふと大したことじゃないけど、出来そうなことが浮かんだ。
「じゃあ、キャッシーにメールしてくれる?」
「何をお願いするんだい?」
「カモミールを送って欲しいんだ。カモミールって『苦難に耐える』って意味があるんだって。」
ルシファはくすくす笑った。
「君は何としてでも、何かがしたいんだね。」
「うん。だって、何もできないでいると不安になってくるから。」
「じゃあ、動物園でね、馬の担当者がヴィレッジを離れてしまって、世話をしてくれる人を探してるんだ。手伝ってくれる?」
ギルは目を輝かせた。
「本当? 僕にできることあるの?」
「できるかどうかは君次第さ。ヴィレッジの動物園はできるだけ自然環境に近い環境で飼育してるから、他の動物園のように人間の世話が多くないはずだけど。明日、動物園に行ってごらん。向こうには伝えておくから。」
ギルは自分に出来ることがあると思うと、今までの重い気持ちが軽くなった。しかも動物と一緒にいられるなんて。ルシファは忙しいのに、ギルの気持ちを全てわかってくれている。




