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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第2部 第50章

「子供のケンカに呼び出された親の気分だよ。」


 うなだれて座るギルにルシファがあきれたようにいった。


「何があったの?」


 ギルは目をそらしたままだった。


 自分は何てことをしてしまったのか。この誰もがつらい状況で、1番つらいルシファに余計な心配かけさせてしまった。


 でも、どうしても、許せなかった。


「いいたくない。」


 目を背けたまま反抗的にいった。これ以上、ルシファが責めらるような言葉などいいたくなかった。


「君は何をかばっているの?」


 ルシファの声が強い響きを帯びた。


 ギルはびくりとした。


「君は何かをかばっているね。原因は決して自分のことではないでしょ? 何をかばっているの?」


 ルシファの声がとても強くて、おそらく表情も厳しいのだろう。 


全てお見通しだ。隠せない。


「じゃあ、正直に答えて。」


 ギルは顔を見ないように目をそむけたまま、必死に反発した。


「ルシファは後悔してないの? 悪魔だっていわれて、それでいいの?」


「それが原因だったの?」


 もう隠せない。


「どうなの? 答えてよ!」


 ギルは叫んでルシファをにらみつけた。


「僕は許せなかったんだ。どんなに苦しんで出した決断だったか知りもしないで・・・。そんなふうに何も知らないでルシファが誤解されてるなんて許せなかったんだ!」


 ギルはこぶしを握り締めた。今でも怒りがこみ上げてくる。


「私は後悔していない。」


 きっぱりといった。


「悪魔に思われようと、機械だといわれようと、私は後悔しないよ。そりゃ、気分はよくないけど、だからっていわなければよかったなんて思ったことはない。もし、いわなければよかったなんて思うときは・・・。」


 ルシファの顔が悲しそうになった。


「私の言動のせいで君を傷つけてしまった時だ。」


 ギルは言葉を飲んだ。


「もし、私が君を傷つけてしまう存在なら、私は君とはいられない。そうなることが1番つらい。」


 ギルは握り締めたこぶしの力を抜いた。


「君が私の全てをちゃんと理解してくれてる。十分だよ。」


 ルシファの顔が安らいでいて、自分の中の怒りが消えていった。


「それとも君まで言わないほうがよかったと思ってるの?」


「そんなことないよ! ただ、わかって欲しかったんだ。救える人の数だけじゃない。苦しむ人を少なくすることも考えての決断だって。機械みたいに数字で選んだんじゃない。1番みんなの苦しみを少なくする方法だって、1番人の心を考えたから出した決断だって・・・。」


「そうやって君がちゃんとわかってくれてるから、私は後悔なんかしないよ。」


 ルシファはちゃんと自分が信じてることわかってくれる。自分もそれでいいのかもしれない。


「怒りは何も生み出さない。破壊するだけだ。どんなに正当な理由でも、怒りは人を傷つける。本当に伝えたいことは怒りでは逆に伝わらない。」


「わかるけど、でも抑えられないよ。」


「怒りがわいてくるのはしょうがないよ。その時には自分で自分を信じるんだ。他人にわかってもらおうとする前に、自分がちゃんと自分を信じてあげること。他人の言葉に左右されないくらいにしっかりとね。私は君が私を信じてくれるから、私も私の決断を信じられる。誰になんと思われようと、後悔しないでいられる。」




 ベッドに入ると、泣き出しそうになるのをこらえた。


 こんなにルシファはがんばっているのに、自分は何をしているのだろう?


 不安になってる人達に飲み込まれて、自分まで不安になっている。どんどん増していく災害。それによって人々が仲たがいして、さらに世界が壊れていく。


自分に何ができるのだろう? 何もできないでいるのが嫌だ。


----ブラック・ウルフ。どうか僕を導いて。----


 人を教え導くトーテムアニマル。本当に自分にいてくれるなら、その力を貸して。



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