第2部 第44章
キャッシーが焼きたてのマフィンとお茶を用意する間、キャッシーの部屋を見渡した。
この前、ここに来た時は、僕の誕生祝をしてくれたんだ。
すごく昔の懐かしい記憶のように感じた。
「あなた達、とんでもない演説したんですってね。」
トレイを持って入ってきたキャッシーがいった。
「ヴィレッジによく出入りしてる友人から聞いたわよ。今、その話題でもちきりよ。」
「昨日のこと、もう?」
「情報って早いのよ。」
ギルは複雑だった。キャッシーはあのことに対してどんな意見なんだろう?
「あまりにいろんな事が続いて、よくわからなかった。」
「よくいったわね。辛かったでしょ。」
ギルはキャッシーを見た。勇気付けるように微笑んでる。
キャッシーはわかってくれる!
「まったく呆れるくらいにすごいわ。誰もが目をそむけてることをズバリ突きつけたわけだら。もう本当に呆れるわ。あなた達の似たもの同士加減にはね。」
似たもの同士?
「いいコンビよ。ルシファ1人ではとてもいえなかったと思うわ。いったとしても、おそらく今日はあんな普通になんてしていられないでしょうね。」
「僕は何もできなかったよ。ルシファが悪魔になるの止められなかった。」
あんな冷たい顔。そしてみんなの非難の目。どれだけ苦しかっただろう。
キャッシーはマフィンを食べるように勧めた。
「ルシファがそうしたかったんだから、させてあげてよかったのよ。その後のフォローがちゃんとしてたから、今日、いつのようになれたのよ。」
焼きたてのマフィンは暖かくて柔らかかった。
「街に行きましょう。これから忙しくなって、どうせ、服なんか買いにいかないでしょ?」
マフィンを食べ終わると、街に出た。
キャッシーのお気に入りの店に入ると、ドロシーが歓迎してくれた。
「こんにちは。」
この前のようにおどおどすることなく、ドロシーに握手の手を差し出した。
「よく来てくれたわ。随分男らしくなったわね。」
ドロシーは上品な微笑で褒めてくれた。
ギルは何となく気恥ずかしくて、視線をそらした。
「あ、キャッシーそのTシャツ。」
今、気付いたが、この店で買ったウサギのTシャツだった。
「だって、ギルとデートだもの。当然でしょ。」
「今日はルシファはいないのね。」
残念そうにドロシーがいった。
「珍しく私がギルを独占できるのよ。どこでデートしようかな。」
「ギル、あなたが行きたい所をリクエストしないと、とんでもない所に連れて行かれちゃうわよ。」
ドロシーが笑った。
相変らず、服に興味がないギルは時間をもてあましたが、楽しそうに服を選ぶキャッシーを見ていると楽しかった。
やっと全部選び終わったらしいので一緒にカウンターに行った。
「支払いってどうやるの?」
「払ってくれるの?」
「ルシファのお金だけど。」
キャッシーは喜んでギルの肩に手を乗せると、カウンターの正面に立たせた。
目の前の画面に鏡のように自分の顔が映った。赤い光が画面のギルの額に点滅すると、何やら文字が出てきたが、よくわからなかった。
「はい。終了。」
何が起きたのかよくわからないうちに、大量の服の入った紙袋を渡された。




