第2部 第40章
「ありえないことに思うでしょうけど本当なんです。そのせいで僕はラボに送られました。僕のデータはラボに残ってるでしょう。僕には半分、ナチュラルの血が流れています。」
ギルはルシファの顔を見ないように、円卓を見渡した。
「それでも、ワクチンなしでこのヴィレッジにきて、2日目に感染しました。その時のデータはキャプテンが持っています。キャプテン、僕のあの時のデータを公表してください。」
ギルはキャプテンを睨むように見つめた。
あの時、熱でうなされて自分は狂った。ラボでの記憶のせいではあったが、あの熱にうなされて朦朧とした状態に陥れば、誰でも心の中に押しとどめていた恐怖が目覚めるだろう。
閉鎖された船の中、いつ降りられるのか、それまで船の物資が持つのかわからない不安の中で、1人でも恐怖に狂えば、その狂気は船全体に広がる。
「半分ナチュラルがはいっていても、ジーンリッチはこの環境ですら2日しか持たないんです。ジーンリッチは整えられた環境でなければ、感染し、苦しみます。もし船の環境を整えても、電気系統に異常が起これば、すぐに感染症を起こすでしょう。」
部屋が水を打ったように静かになった。
「みなさん。今日は情報提供が目的。今すぐ結論を出すわけではない。いろいろな意見を聞きながら、ヴィレッジとしての計画を進めていくつもりだ。今日はあまりにいろんな情報があって混乱していると思う。アレックスのデータは誰でも閲覧可能にするので、後日、また検討しよう。」
キャプテンが締めくくった。
みんな、言葉もなく、足取り重く、部屋を出て行った。
静かになった部屋で、ルシファは立ち上がり、ギルの肩に手を乗せた。
「君まで苦しむことはないのに。」
見上げたルシファの顔は悲しそうだった。
「だって、僕、どうしてもわかって欲しかったんだ。ルシファがどれだけジーンリッチのことを思って出した決断なのか! わかってもらえるなら、僕がジーンリッチとナチュラルの間に出来たありえない存在だって思われたって構わない。ラボに送られた実験体だって知られたって構わない。」
ルシファが悪魔と思われても構わないくらい伝えたかったこと。それを手助けできるなら、自分だって悪魔になる。
「君たちには感謝するよ。よくいってくれた。辛かっただろう。」
キャプテンが2人に近寄った。
「私の考えも同じだ。だが、ナチュラルの私からその話をすることはできなかった。」
自分の非力さをわびるように2人を見た。
誰かがいわなければならなかった。真実から目をそらしている暇はもうない。
「君たちには、感謝する。」
キャプテンが深々と頭を下げた。




