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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第2部 第29章

 いつものルシファに戻ってくれたので安心した。


「ギル。顔のむくみを取る方法を知らないかい?」


 シャワーを浴びてきたルシファがいった。


「僕がわかるわけないじゃない。キャッシーにでも聞いたら?」


「今の顔でキャッシーに会ったら、絶対君に泣かされたって騒ぐよ。」


 そんなことになっては大事だ。ギルは慌てた。


 頭にかぶったタオルで髪を拭きながら、機械をいじった。


「まずいな。メールがきてる。」


「まさか、キャッシー?」


 ギルは飛び上がった。


「大丈夫。キャプテンからだ。父からのデータを見たんだろうね。『落ち着いたら』きて欲しいって。」


 キャプテンの心遣いが感じられた。おそらくしばらく会っていない父に会ったとなると、何かしら心にダメージを受けているのを察してくれているのだろう。


「顔のむくみは明日になれば治ると思う?」


「わからないってば。」


「少し考えたいことがあるから、明日にしよう。明日、ヴィレッジに行こう。」


 ヴィレッジに行けるのはすごくうれしかったが、楽しい話をするわけではないので、少し気が重かった。


「お願いがあるんだけど。きいてもらえる?」


「何? また簡単すぎること?」


「簡単だけど、ちょっと辛いかも。」


 ルシファの考えはいつもまるで予想も付かない。


「明日、キャプテンに会って、父のデータを見せてもらおうと思ってね。」


キャプテンから連絡があったということは、キャプテンは既にデータに目を通したのだろう。


「たぶんね、父の計画の詳細を見て、私はまた自分を責めると思う。そんな出来たかもしれないし、出来もしなかったかもしれないことを考えて後悔すると思う。そんなことより、あの船から下りたから手にできたものだけを見ていたい。」


 たぶん、データ自体気分の悪くなるもので、それを作ったのが父であること、自分がそれについてのことから逃げていたこと。意識は過去の船の中に戻ってしまうだろう。


「私がデータを見ている間、側にいてくれる? 気分の悪くなる内容のデータだ。側にいると私の混乱の感情をまともに浴びることになるよ。それを覚悟でいてくれる?」


 ルシファの顔があの少女のような表情ではないが、とても弱々しく女性的に見えてギルは目をそらした。


「どうしてそんな簡単なことしかお願いしてくれないのかな。」


 ギルは顔をそらせたまま拗ねてみた。


「しょうがないじゃない。それが私にとっては重要なんだから。お願いはきいてもらえるの?」


「いいよ。」


「早速、キャプテンにメールしておこう。」 


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