第2部 第23章
「まあ、待ちなさい。話はまだ終わっていない。」
もう聞きたくないというように顔を背けたままだった。
「お前は私が数人の同志とただ地球を逃げ出して、頃合を見計らって戻るだけの計画しかないと思うのか?」
他に何を考えてるんだ? というように真っ向からにらみ付けた。
まだ自分が原人達に崇められる神としての計画でもあるのか? というように。
「お前に培養させていたDNAは何の為だと思う? あれは放射能を分解するバクテリアだ。その他にも空気を浄化する植物の培養。地球の大地も水も空気も汚染される。地球の自然はそれを長い時間をかけて生物が住めるようにしてきた。私はそれをできるだけ早く再生させたい。」
地球の再生? 人も動物も住めない環境になった地球の再生?
「地球が新しく生まれ変わろうとするのが止められないなら、その再生の手助けをしたいんだよ。」
アレックスは静かにいった。ルシファの無表情な顔が震えた。
「私は人間を見捨てたいわけじゃない。救えなかったんだよ。」
とても静かな声だった。今までのナイフのような鋭さはなくなっていた。
それでもまだ残っている鋭さは、救えなかった自分に対して向けられていた。
「みんなが時期尚早だと笑った私の計画ですら、時間が足りないほど、地球は傷んでいた。」
アレックスの落胆を表すように、小さくため息をついた。
ルシファの握り締められたこぶしが真っ白になり、震えだした。
その炎のような髪が今にも燃え上がりそうなほどに、何かがルシファの中で燃え上がっていた。
「今、全てが失われていくことが止められないのであれば、私が出来ることは、生まれ変わった地球に対してできるだけ早く環境を整えること。できるだけ早く今の地球のように生物が暮らせる環境にすること。そしてもう1度人類が地球に暮らせる環境にすること。」
ルシファの中に、押し殺して、見えないようにしていて、目をそむけていたものが、はっきりと姿を現した。
「地球の環境を整えるあらゆる微生物・植物・動物のDNAや細胞を保管してある。必要な時に必要なものを培養し、地球に提供する。お前にやらせていた仕事はそのためのものだ。」
ルシファは両手をテーブルにたたきつけた。




