第2部 第22章
「嫌だ! 」
やっと声が出た。
「ギル。お願いだ。生きて。」
ルシファは苦しそうにいって、頭を下げた。
どうしてもギルには生きて欲しかった。あんな地獄の日々を生き延びて、やっと笑えるようになったのだから。這い上がってきたこの世界であんなに笑って、この世界が大好きで。
もっともっといろんなものを見て、いろんなことを経験して、やっと手に入れた自分の人生を生きて欲しかった。やっと、やっと自分の足で歩き出したのだから。
ギルは痛いほどルシファの気持ちが伝わってきた。どれだけルシファが自分が生き残ることを望んでいるか、その苦しそうな優しい顔を見れば嫌でも伝わってくる。
でも、
どうして生きなきゃいけないの?
どうしてルシファがいない所で生きなきゃいけないの? 笑えるわけがないじゃない。
ギルには理解できなかった。
ルシファがいない世界で生きて、それに何の意味があるの?
「お願いだから、生きて・・・。」
ルシファはうなだれたまま、ギルの膝に両手をのせた。その手が震えている。
どうして、そんな選択するの?
どうして、こんなにルシファが苦しんでるのに、見捨てられるの?
「ルシファが乗ったら、君も乗るかい?」
父が静かにいった。
「うん。乗るよ。」
ルシファは顔を上げてギルを見た。
唇を噛み締めて、震えている。何としても生き延びて欲しいと激しく訴えるルシファの目を見ながらいった。
「でも、もしルシファが2人いて、船に乗るルシファと地上に残るルシファがいて、僕の体が1つしかなかったら、僕は地上に残るルシファといる。」
ギルはルシファに微笑んだ。
だって、ジーンリッチでもナチュラルでもどっちでもよかった。ルシファといられればそれでいい。
生き残っても死んじゃっても、ルシファといられればそれでいい。
ルシファは今まで止まっていた息を吐いた。
「そういうことです。折角VIP待遇を用意してくれたのにすみませんね。」
ルシファは立ち上がった。




