第2部 第21章
「ギル。君の指定席も用意してあるよ。」
ルシファが断ることなどわかっていたように、ギルに視線を向けると優しくいった。ルシファは唇を噛んでアレックスを睨んだ。
「私は、私の創ったその美しい体が朽ち果てるのはしのびないんだよ。」
優しい言葉とは裏腹に、その目は挑戦的だった。
「『美しい』といわれる度に虫唾が走る。私の体はあそこにいるグロテスクな兄弟達となんら変わりのない作り物だ。」
吐き捨てるようにいった。
「私はこの体が嫌いなんですよ。1度たりとも大切だ何て思ったことはない。早く朽ち果てればいい。」
父に対する反抗ではない。本気でそう思っている。
ギルはわからなかった。誰もが振り向く美しさを、ルシファがこんなに嫌悪していたなんて。
本気で、その肉体から出て行きたがっている。ギルも昔は消えてしまいたかった。こんな世界にいたくなかった。でも今は、この世界にいたい。ルシファといたいと思っているのに。
「ギル。君はどうする?」
アレックスは仕方なさそうにギルに聞いた。
ルシファはアレックスを睨んだ。鋭いナイフのような怒りの視線。
アレックスはその視線をものともせずにギルを見ている。
ギルはただ逃げ出したかった。ルシファが嫌がるこの空間にいたくなかった。
「君は乗りなさい。」
ルシファの優しい声がした。
ルシファはギルの前に膝立ちになり、優しい顔でギルを見ていた。
ギルは声がでないまま激しく首を振った。
「君は生きると決めただろ? 君の人生はあまりに短すぎる。だってちゃんと世界に出てからまだ数ヶ月しかたっていない。」
ギルはずっと首を振った。言葉が見つからない。
ルシファがその肉体から逃げたくても、自分はルシファと一緒にいたい。
一緒にいることはルシファを苦しめるの?
「新しい地球でちゃんと生きるんだ。」
だだをこねる子供をあやすように優しくいった。
そういうことだったの? もう二度と会えなくなるようなこといったのは、そういうことだったの?




