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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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第2部 第19章

 ステーションから移動した所は金属の壁しかない所だった。


「ここはどこなの?」


「父の宇宙船の中だ。・・・昔、私がいた所。」


 ルシファは歩き出した。


 どこまで行ってもただの金属の壁。窓1つない。


 2人の足音だけが反響する。


 滑らかな壁の継ぎ目でそこに部屋があることがやっとわかる扉の前で止まった。


 扉の上から細い光がルシファの額の石にあてられ、金属の壁が滑らかに開いた。


 中は薄暗くてよく見えない。


 目が慣れてくると、部屋の中にはいくつものガラスの柱が立っていた。所々、小さな光が点滅している。いくつかのパネルが薄暗く光っている。その明かりだけを頼りに目が慣れてくると、ガラスの柱には液体が満たされ、時々空気の泡が昇っていた。


 空気の泡を目で追っていくと、ガラスの中に何かがあった。何なのかよくわからない。


 隣の柱を見る。そこに入っているのは、肉の塊。本当は顔になるはずの部分なのだろうか、目のようなものが肉に埋もれて見えた。


 ギルは悲鳴を飲み込んだ。


「これが私の兄弟達だよ。」


 ルシファの声が部屋の中で反響した。


「このグロテスクな肉の塊。私も同じようにガラスケースの中で創られた。」


 ガラスの柱に両手を当てて中を見つめている。薄暗い部屋の中でパネルの弱い光に照らされたルシファの顔は無表情で、ただの彫刻のようにしか見えなかった。


「随分数が減っただろ。余計なものは処分した。」


 後ろから突然、声がしたので、ギルは小さな悲鳴をあげた。


「私より兄弟達に先に会いにくるなんて、相変らず冷たいんじゃないか?」


 声のするほうを見ると、ルシファよりは背が高い、白髪の男が立っていた。


「久しぶりです。お父さん。あまりに久しぶりで顔も忘れてましたよ。」


 冷たい声でルシファはいった。


「君がギルだね。私はアレックス。戸籍上、ルシファの父だ。」


 ギルに気付いたアレックスは手を差し出したが、ギルは動けなかった。


 アレックスははなから握手する気はないらしくすぐに手を下ろした。


「ここじゃ落ち着かない。座って話そう。」



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