『和真君と一緒に両端から食べてみたいです』
1学期の期末試験が近いとある日の夜。
優奈と俺は俺の部屋で一緒に試験対策の勉強をしている。今はコミュニケーション英語の副教材となっている問題集の試験範囲の問題を解いているところだ。基本的な内容がメインなので難なく解くことができている。
「……よし、第1章全部解き終わった」
「お疲れ様です。和真君もきりのいいところまで終わりましたし、ここで一旦休憩しましょうか」
「ああ、そうしよう」
「冷蔵庫にあるプッキーを持ってきますね」
「ありがとう」
俺がお礼を言うと、優奈はニコッと笑って部屋を後にした。
今日みたいに試験対策の勉強のときはもちろんのこと、普段から勉強の休憩のときにはお菓子を食べることがある。
ちなみに、プッキーとはチョコでコーティングされたスティック状のクッキーである。今日、家に帰る途中で近所のスーパーで購入したのだ。今の時期は蒸し暑いので、チョコの部分が溶けないためにも冷蔵庫に入れて保存している。
程なくして、プッキーの箱を持った優奈が戻ってきた。優奈はクッションに座り、プッキーの箱を開けて、袋を開けた。
優奈が袋からプッキーを1本取った後、俺もプッキーを1本取った。
「いただきますっ」
「いただきます」
俺達はプッキーを食べる。
冷蔵庫で冷やしていたのもあって、チョコの部分がちょっとパリッとしている。さっぱりとした甘さで結構美味しい。小さい頃からプッキーは好きだけど、やっぱりいいなぁ。
「プッキー美味いなぁ」
「美味しいですねっ。冷やしていたので、チョコがパリッとしているのもいいです」
「そうだな。あと、勉強しているから甘いのがいいな」
「そうですねっ」
笑顔でそう言い、優奈はプッキーを袋から1本取り出して食べる。ポキッ、ポキッ、と音を立てながら食べる姿が可愛い。
「プッキーといえば、プッキーゲームってありますよね」
「あるね。2人が両端から食べて、キスしちゃうかもしれないっていう雰囲気を味わうゲームだよな。プッキーを先に口から離したのが負けっていう」
「そうです。私はやったことがないのですが、修学旅行で友達がやっていたのを見たことがあります。王様ゲームでの命令で。キスはしませんでしたが」
「俺も同じだな。王様ゲームの命令で、友達がやっているのを見たことはある。そいつらもキスはしてなかったな」
「そうでしたか。見ているだけでも『キスしちゃうの?』ってドキドキしました」
「分かるかも。俺も『おい、このままだとキスしちゃうぞ』って思いながら見てたし」
そのときプッキーゲームをやったのは男子同士で、キスはしなかったけども、ゲームをやってから数日ほど2人の間にちょっと距離ができていたのを覚えている。
「私達でプッキーゲームをやってみたいと思いましたけど……私達、たくさんキスしてますから、途中で口を離すことってないですよね」
「ないな。お互いに相手の唇へまっしぐらで、ゲームにならないな」
「そうですよね」
ふふっ、と優奈は楽しそうに笑う。
俺達はキスをたくさんするし、それより先の夫婦の営み行為もする。その行為の中でもキスをたくさんするし。そんな俺達ではプッキーゲームは成立しないだろう。
「ただ、和真君と一緒にプッキーを両端から食べることはしてみたいです。どうですか? もちろん、その流れでキスしたいと思っています」
「それは魅力的な提案だな。今すぐにやろう」
「ありがとうございます! では、さっそくやりましょう!」
嬉しそうに言うと、優奈は袋からプッキーを一本取り出して、クッキー部分の端っこを咥えて俺の方を向いてくる。
「くわへてくあはい」
優奈はプッキーを咥えながらそう言ってきた。状況的に「咥えてください」と言っているのだろう。笑顔で咥えている姿も、舌足らずな感じの喋り方になっているのも可愛いな。キスしたくなるよ。
俺は優奈が咥えているプッキーの反対側を咥える。プッキーで優奈と繋がっていると思うとドキドキしてくる。
――ポキッ。
――ポキッ。
お互いにプッキーを両端から食べ始める。
プッキーを食べ進めることによって、優奈の可愛い顔が段々と近づいてくる。そのことでドキドキは増していって。プッキーも美味しいし、何だかいいな。
その後も食べ進め、優奈との唇の距離が近づいていき、やがて、
――ちゅっ。
優奈と唇が重なった。
これまで優奈とはたくさんキスしてきたけど、優奈の唇からチョコレートの甘い香りがするし、口の中にプッキーがあるので何だか新鮮だ。
数秒ほどして、優奈の方から唇を離す。すると、目の前には笑顔でモグモグとプッキーを食べている優奈がいた。そんな優奈がとても可愛いと思いながら、俺もプッキーを食べた。そのプッキーはこれまでに食べたプッキーで一番美味しかった。
「とても良かったです。プッキーを食べながら和真君の顔が段々近づいてくるのも、その流れでキスしたのも。ドキドキできましたし、キスも良かったです。プッキーもとても美味しかったですし」
「俺も良かったよ。プッキーを食べながら優奈とキスするのは初めてだから新鮮な感じがして。プッキーも凄く美味しかったから。一緒に食べたいって言ってくれてありがとう」
「いえいえ」
優奈はニッコリと笑いながらそう言った。
「和真君。プッキーはまだ残っていますから、またやりたいです」
「ああ、いいぞ」
その後、袋に残っているプッキーのうちの何本かを、優奈と一緒に両端から食べた。もちろん、毎度のことキスをして。抱きしめ合いながら食べたり、お互いにプッキーを飲み込んだ後に舌を絡ませるキスをしてチョコの味を感じたりして。優奈のおかげでプッキーをより好きになれた。
とっても甘い休憩の時間を過ごせたので、休憩後の試験勉強はそれまでよりもかなり頑張ることができた。
『和真君と一緒に両端から食べてみたいです』 おわり
明日公開のショートストーリーで、ショートストーリー集は完結する予定です。
最後までよろしくお願いします。




