にっちゃの願い
「昨日の夜のお願いの話をしようか」
「僕はね、この世界を沢山観て廻りたいんだ。
沢山の景色、高い山々や広い広い海。大きな街や建物やお城。
沢山の人々や食べ物、便利な物や価値のある物。
そんなものを見て廻ってね、父さんや母さん、姉さんや兄さんやノルに沢山お話がしたいんだ。
こんな景色が綺麗だったよとか、あの街はこんなだったよとか、こんな美味しい食べ物を食べたよとか、こんな人に出会ったんだよ。ってね。
そういう事がしてみたいんだ。
だからノル、僕の話を聞いてくれる?」
ザックはそう言って、色々な事を話してくれた。
この村は、コプトル村って言うらしい。
近くのコプトル山のふもとの村って事なんだって(初めて村と山の名前を知ったよ)
この国はアスタ王国って名前で、その端の方にある男爵様の領地にある4つの村の1つらしい。
コプトル村は田舎で、一番近くの町でも、もう1つ男爵領の先にある子爵領の領都まで行かないとないんだって。
馬車でも1週間以上もかかるって!(遠しゅぎりゅよ)
コプトル村は約50世帯で200人ちょっとぐらいが生活している。
ほとんどが農家で、残りも農家と兼業の、2軒の狩人、1軒の木工、1軒の樵兼炭焼き、1軒の産婆兼薬師もどきがあるぐらいで、後は村長さんが行商人の商品を一部取り置いた雑貨屋もどきをやってるぐらい。
だから、基本長男が農家の跡を継ぎ、次男以降のほとんどは15歳の成人を前後して、継ぐ子がいない農家に養子に入るか、募集してる開拓村に行くか、街に職を求めて村を出る。
うちは、長男のケビにいが継ぐだろうから、(ケビにいのスキルは[頑強]で農家に向いてるらしい)にっちゃと僕は村を出るのが普通の事なんだって。
ねえちゃは、この村か近くの村に嫁に行くか、街に出るかはわからない。
そんな訳でザックは、村を出た後に、夢である世界を観るには、行商人か冒険者ぐらいしかないと考えて、10歳ぐらいで子爵領の領都のさらに先の辺境伯様の領都に行くと決めて、今の僕の歳よりずっと小さい頃から、勉強や訓練をしてたんだって
(僕よりずっと小さい頃なんて、にっちゃは凄すぎる!かっちょいい!)
だけど2年前のケガで左足を失って、努力して歩ける様にはなったけど、長距離の移動や旅には耐えられないかもしれないと、悶々と悩んでいたらしい。
そんな時に、僕が[癒し]のスキルを得て、どうせ僕も村を出ないといけない可能性が高いのなら、二人で強くなって、兄弟で助け合いながら、お互いの欠点を補え合えば可能性はあるんじゃないかと思ったんだって。
(にっちゃは、やっぱり頭がいい!)
「だからノル、僕と一緒に強くなって、一緒に街を目指してくれないかな?」
僕は、すごくすごく嬉しかった!!
大好きなにっちゃと一緒にいれる事。一緒に何かを頑張れる事。
いつも助けてくれて見守ってくれるにっちゃを、僕が少しでも助けたり力になれりゅと思ってたくれた事。
なんだか、お胸とお目々が熱くて、息が苦しくて、叫びたい気持ちだ!!
「にっちゃ、僕がんばりゅ!いっぱいいっぱい頑張りゅ!
いっぱい頑張って、強くなって、にっちゃと一緒に行くの!」
ノルンは大声で叫んだ!ちょっと興奮しすぎて、頭がフラフラして、涙が出ちゃったの。
「ノル、ありがとう。
僕もノルと一緒ならもっと頑張れる気がするよ。
ノルがいなかったらウジウジと考えて、夢なんて諦めてたかもしれない。ノルのおかげだね」
そう言って、にっちゃは僕が泣き止むまで、優しく抱きしめてくれたの。
「さあ、そろそろ兎も焼けたかな、ノル食べよう。これも訓練なんだよ」
そう言って、串の付いた兎のモモ肉を1本くれた。
「あちゅ、おいちい!おいちいのが訓練なの?」
「そうだよ、ノル。
食べるのも強い身体を作る訓練なんだよ。
この世界は危険なんだ。ノルこの兎、実は魔獣なんだよ」
えーっ!驚いてお口からお肉が飛び出そうになって、あわてて口を閉じたよ。
にっちゃの話によると、この村や辺境では動物はほとんどいないんだって。
一応、村には村長さんの家に、農耕馬1馬と母乳が出ない時様の雌ヤギと、番犬が1匹いる。
それでも大きな囲いの中で飼っていて、外には基本出さないらしい。
後、ネズミ捕り様に村飼いの猫が数匹。
都会の方になると、馬や牛・豚のような家畜や、卵を産む鳥もいるらしいけど、辺境の様な自然が豊かな所では、魔獣に襲われて普通の獣や動物は生き残れないらしいんだ。
この兎もホーンラビットという魔獣で頭に小さな角があって、魔石も身体の中にあるとの事。
にっちゃは小さい頃から、肉を食べて強い身体を作る為に、罠を仕掛けてホーンラビットを捕ってた様で、罠にかかった奴を捕ってる時に、近くにいた別のホーンラビットの角に刺されたんだって。
深さ10cmに満たない刺し傷だったけど、結果、バイキン?ってやつが足に入って、感染症?というやつになって足を失う事になったとの事。
「ノルぐらいの歳で幼かったとはいえ、僕はもっと幼い頃から訓練してて、自信過剰になってたんだろうね。5歳の[授能の日]に、僕は[水滴]と[土くれ]って言う、水魔法と土魔法の系列の初期スキルを得たんだ。
念願の魔法スキルで、調子に乗っていたのかもしれない。
油断した隙に、取り返しつかないミスを犯してしまった」
5歳の授能で、2つもスキルを得る事は、ほとんどというか、聞いた事がない程らしい。
ザックの話によると、もっと幼い頃からの訓練で位階が上がってたんだろうとの事。
位階は魔力総量によって上がるらしい。
それでも一生かけて位階Ⅱになればいい方で、Ⅱで達人級、Ⅲで偉人級、Ⅳで超人級、Ⅴに至っては、人類種では不可能と言われている。
(長命種のエルフなどは長い時間かけれる分、可能性はあるらしい)
ザックの持論だと、成長期は身体の成長と同時に魔力の受容量が成長しやすいのだと思うとの事。
身体の成長が停まれば、少しは増えて行くかもしれないが、成長期ほどの増加は訓練では難しいと思うと。
魔力総量は、成長期の訓練程ではないけど、魔物を倒す事によって少しずつ増やす事も可能で、過去の偉人級や超人級はほとんとこの魔物から得る事で辿り着いたと思われる。
にっちゃは、今の時点で、僕の30倍以上は魔力総量があると思うとの事
(にっちゃは、やっぱり天才かもしれない、かっこいい!)
僕もにっちゃ程は難しいかもしれないけど10歳までにはかなり、その後も15歳ぐらいまではまぁまぁ訓練で増やせると思うと言う。
うひょー!
「ノル、今日の夜から、少しずつ訓練して行こう」
了解!にっちゃ、僕ちゅよくなる!がんばりゅ!




