[癒し]のスキル
「ノル、強くなってくれないか?」
大好きなにっちゃが、初めて僕にお願いをした。
いつも優しく微笑んでいるにっちゃの真剣な目を見て、僕はなんだかドキドキした。
「にっちゃ、ちゅよくって何?僕、よくわかんないけど、にっちゃが嬉しいならがんばりゅ!」
両のお手々を一杯にぎって、フンス、フンスとにっちゃを見つめる。
「ノル、ありがとう。本当にノルが弟で良かった。そうだよね。よくわかんないよね。
明日、お手伝いの後にゆっり話そう。今日は疲れたでしょ。ゆっくりおやすみ」
「うん、おやちゅみ」
ドキドキして、おねむが少し覚めちゃったんだけど、、、。
「ああそれと、今のお話と、明日するお話は、しばらく家族にも内緒にして欲しいんだ。
いつかは話すと思うけど、母さんや姉さん達が心配するからね。しばらくは僕とノルの2人だけの秘密。
ノル内緒に出来る?」
「僕できりゅ。かあちゃにもねえちゃにも言わない。にっちゃと僕だけ、ひみちゅ、ないちょ」
「ありかとう。ノル、おやすみ」
「にっちゃ、おやちゅみ」
ドキドキはまだあったけど、昼間の疲れですぐに夢の中へ入った。
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村の朝は、日の出の少し前から動き出す。
薄暗い内にアンが窯に火を入れて、麦がゆと野菜を煮る。
ザルマン家のいつもの朝。
ザックは水魔法のスキルがあり、アンの次に起きて水甕の補充をする。
通常は、つるべ式の井戸から、桶に汲み、えっちらほっちら運ぶ重労働なので、ご近所からも羨ましがられてる。
(にっちゃは凄いの!)
デジーが起きてアンの手伝いしてると、ぼとぼちと皆が起きてきて朝食。
「父さん、お手伝いの後にノルの[癒し]がどんなスキルか試して確認しておこうと思うんだけど。
村の皆にも見つからないようにしないといけないから、河原の方でやりたいんだけど、いいかな?」
「そうだな、魔法系の事ならザックが一番わかるだろうしな。
ノルンもお前なら安心だろう。無茶はするなよ」
「ザック、あんまり遠くへ行っちゃダメよ。危ない事はしないでね」
「母さん、今の僕じゃ、そんなに遠くへは行けないよ。ノルも一緒なんだから、危ない事も絶対しないよ」
「ノルンも気をつけるのよ」
「かあちゃ、にっちゃも一緒だから大丈夫!」
朝食後は、アンとデジーは、お洗濯やお掃除・縫物などの家事。
ロジャーと男の子達は畑のお世話とお手伝いに行く。
冬小麦の種まきを待つ畑は、耕され濃い土の色を見せている。
10歳になると本格的にお手伝いが始まるが、まだ幼いノルンとザックは、雑草や石ころ取りとか、害虫取りの簡単なお手伝い。
ザックとノルンは、手早くお手伝いを済ませ、村外れの河原に向かった。
村外れのザルマン家から、しばらく西に向かうと、川幅10mぐらいの緩やかな流れの渓流にあたる。
昔は今より水量があったのか、大小の石が転がった、それなりに広い河原が川沿い広がっている。
河原の岩影から、ザックが何かの包を取り出した。
「ほら、本当は昨日、兎4羽捕れたんだ。3羽で充分だったからね、おやつに1羽取っておいたんだ。
後で焼いて一緒に食べよう」
葉っぱに包まれた兎のモモ肉だった!うれぴー!
村では基本的に朝・晩の2食でお昼はないからね。
ザックは、焚火場を素早く作って、枯れ木を置き、火打ち石で火を点け、木串に刺したモモ肉を火の近くに刺した。
(にっちゃは何でも出来て凄いんだ!)
「さて、しばらくはかかるから、まずはノルの[癒し]を試して貰おうかな。僕の足にお願い出来る?」
ザックは【義足】を外して、膝下の肌が少し赤くなってる部分をノルンに向けた。
ザックは、左足の膝の少し下から先を失っており、普段はザックが自分で作った木製の【義足】を革のベルトで固定している。
さらに自分で作った、左脇の下に挟み左手で持つ歩行用の杖を使い器用に歩く。
(まつばづえって言うんだって)
2年前の[授能]の日の少し後、魔獣に襲われて角で刺されたらしい。
止血はしたのだが、感染症によってし壊疽えそを起こしてしまい、壊疽の広がりは命に係わると、ザック自らが決断し、村の樵に頼み膝下から切断した。
(僕はあんまり覚えてはないんだけど、ねえちゃが泣き叫んで、大好きなにっちゃが苦しそうにしてたのが凄く怖くて。
わんわん何度も泣いたのは、なんとなく覚えてるし、今でも少し思い出すと、また怖くてドキドキして泣きそうになっちゃう)
それでもしばらくは経つと、ザックは、
「大丈夫、道具を作れば歩ける様になるから」と言い
村の木工と狩人から、木材と皮を取り寄せて、義足と杖を自分で作ってみせた。
(りはびり?とか言って、しばらくは家の中をゆっくり歩く練習をしてたけど、今では村の中や近場なら、普通に歩いて移動してるんだ。
流石に走ったり重い荷物を持ったりは出来ないみたいだけど。
本当に、にっちゃは、強くてかっこいい!)
ザックの膝下に両手を伸ばし[癒し]をかける
「うにゅー、痛いのなおれー、うにゅー」
赤くなってる所に両手を当てて、必死に祈る。
すると暖かい光が両手から出て、ほわほわと赤い膝下部分を包んだ。
(3秒ぐらいの間だったけど、なんだかすごく疲れちゃって、ヘロヘロしちゃう)
「うわぁ、なんだかとっても暖かくて優しい感じなんだね。
ノルって感じがするよ。ありがとう。ひりひりしてたのが治まったよ。
ノル、疲れたみたいだね。大丈夫?」
ザックは、いつもの優しい微笑みを向け、ノルンを心配する。
「大丈夫。にっちゃ、僕にっちゃの足治せる?」
「ノルは優しい子だね。ありがとう。これだけでも本当に凄いんだよ。
ノルは本当に優しくて凄いんだよ。
僕は本当にノルが弟でいてくれて良かったって思ってるよ。
だからノルのスキルを誇って欲しいんだ。
神様がくれたノルの宝物なんだよ。
だけどね、なくなった足や手なんかの事を欠損って言うんだけどね。
大きな街の偉い神官様でも治せないんだって。
父さんや母さん、村長さんまで、色々と聞いてくれたらしいんだけど、難しいだろうって。
でも僕は幸運なんだよ。
ノルが優しくて暖かい光で僕の傷口を包んでくれるんだから。
こんな事ノル以外には誰もしてくれないと思うよ」
(にっちゃの足は治せないのかあ、、、凄い神官様でもダメなのかぁ。
残念だけど、それでも優しいにっちゃの言葉で、僕は泣きそうになっちゃった)
「それで、疲れたみたいだけど大丈夫かな?
今と同じ事、あと何回ぐらい出来そうかわかるかな?」
「大丈夫、ちょっと疲れちゃっただけ、たぶん後2回くらい出来りゅと思う」
「そっか、うん、じゃあノルの[癒し]は今の所3回ぐらい出来るって事だね。
それを、魔力消費とか魔力残量とか言うんだけど、魔力総量や位階が上がればまた変わって来るんだよ。
まぁ難しい話はおいおい教えていくからね」
「昨日の夜のお願いの話をしようか」




