家族の温もり (ザックSIDE)
なんとか、帰宅分の歩く気力を蓄え、どうしても下がる頭で俯きながら帰宅した。
すこし、勇気がいったけど、ノルンの顔を見に行く。
自分でも、どんな顔をしていたかわからない。
なぜが罪悪感の様な重い気持ちが支配していて、足取りも重かった。
幼いノルンは、僕の顔を見ると。
ニコっと微笑み
「にぃ」
と、しゃべった、、、。
一瞬、えっ?っとびっくりしてしまい、そのまま固まってしまった。
そんな動けない僕に、ノルンはまわりの家具につかまりながら、拙く、一歩、また一歩と近づいてきて
「にぃ」
と、もう一度言って、固まってる、僕の腰に抱き着いてきた。
有難い気持ちと、情けない気持ちと、ぐちゃぐちゃとした感情の中で
膝立ちになり、ノルンを抱きしめた。
血が固まりかけた膝がチクチク痛かった。
ノルンの身体は暖かかった。
じんわりとノルンの体温が僕に移ってきて、さっきさんざん泣いたばかりなのに、嗚咽と共に涙が溢れた。
「ノルン、ノルン、ごめんね。
情けない兄ちゃんでごめん。
僕、頑張ったんだよ。でも怖くて怖くて、、、」
「もう、どうしていいのか、わからなくて、、、うっ、ううっ」
ノルンを抱きしめながら泣き続けた。
泣き声が聞こえたのか、家にいた母さんと姉さんがよってきて
「ザック、どうしたの?大丈夫?」
「何かあったの?どこか痛いの?」
と聞いてきたけど、何を応えたらいいのかもわからないし、情けない気持ちのまま、肩を震わせ泣き続けた。
母さんと、姉さんが背中をさすってくれて、その手が暖かくて、僕にはその優しさと暖かさが痛くて、、、
気持ちがどうしようもなくて、むせび泣いてしまった。
母さんも、姉さんも、ノルンも、ずっとそばに居続けてくれた。
家族って暖かいんだなって、辛い時にこそ気づいてしまうんだな。
しばらく泣き続け、心配する母さん達には、転んで、膝をすりむいて、とごまかした。
傷を診てくれて、優しく洗って、ドクダミの傷薬を塗ってくれて。
ごまかした自分を、やさしく介抱してくれる母さんに申し訳なくて情けなかった。
その日は、それでも家族と会話する気持ちにもなれなくて、俯いたまま過ごした。
一人になりたくて、夕食以外は屋根裏部屋ですごした。
夜は何も考えたくなくて、すぐに魔力枯渇して気絶した。
今の僕には、魔力枯渇の強制睡眠は、とてもありがたかった。
=================
深夜に目が覚めた。
早目に魔力枯渇したから、6時間経って、魔力が完全回復したんだろう。
魔力枯渇の睡眠は深いから、頭だけはスッキリとしていた。
睡眠は偉大だな。
昨日の家族の前での自分の姿が情けなくて、恥ずかしくて
「はぁ…」
長いため息が自然とこぼれ出る。
ノルン、暖かかかったな。
母さんも姉さんも、、、。
落ち込んでいる時の優しさって、辛くなってしまうなあ。
だけど、確かな愛情ってやつと温もりを感じた。
父さんも、兄さんも、心配して話かけてくれたのに、申し訳なかったな。
みんな優しくて、暖かい家族なのに、どこか違う時代の人達の様な気がして、向きあってなかったのかもしれない。
頭だけ大人で、家族や農家の家庭の、構成や現状ばかり冷静に見てしまって。
この人数と、状況じゃあ、独り立ちするしかないもんなって、自分の事ばかり計算だけをしてしまってた。
変に自分の先ばかりを考えて、目の前の家族に目が行ってなかったな。
家族は僕の記憶の事なんて知らないのに。
まあ、異世界の事を話しても意味はないと思うから話すつもりはない。
誰かに吐き出して、少しでもスッキリしてまいたい自分もいるけど、現状ではリスクの可能性しかないしな。
それでも、ちゃんと家族とは向きあおうと思う。
昨日のホーンラビットの事や、自分の先の事は考える力がわかなかったけど。
別に向き合う事が出来た事で、心が少し軽くなった。
早朝
母さんが起き出した音がしたので、少しドキドキしながら台所に下りて行った。
「母さん、おはよう。
昨日はごめんね。ケガして落ち込んじゃって、、、。
寝たら、スッキリしたよ。
お薬塗ってくれてありがとう」
事前に用意した言葉が言えた
「ザック、おはよう。
もう痛くないのね?
母さん、あんたがあんなに泣いたの初めて見たから、びっくりしちゃったわよ。
すごく心配したのよ。
たいした事ないなら本当に良かった。」
普通に挨拶出来た事が嬉しかった。
母さんの優しさが染みて胸が熱かったのと、申し訳なさで少し笑顔がぎこちなかった気がする。
少し無理に表情や声を作っている気が自分でもしたけど、朝食までに皆に同じ様に話せた。
食事中は、ノルンが「にぃ」って言ったんだよ!
って家族と会話出来た。
母さんと姉さんの「かあ」と「ねぇ」の方が早かったなんて知らなかったな。
父さんと兄さんが、悔しがってて笑った。
会話が出来てなかったんだなって、改めて感じたし、短い団欒が出来た事が嬉しかった。
僕はもう少し、家族と過ごす時間や会話を増やして行こうと思った。
この異世界で、唯一頼りに出来る僕の家族なんだから。




