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兄ちゃんは異世界人? 突然「強くなってくれないか?」ってお願いされた!  作者: 茶さくら
幼少編

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12/19

兎見学 (ザックSIDE)


 3歳を迎えて、少し経った冬の日、タンパク質確保の目標を掲げて、ホーンラビットの見学に行く事にした。




 目に魔力を集中する[身体強化]の部分強化が出来るようになったからだ。




 勿論、それまでに兎野郎の生態やと特徴をつかむ為と、くくり罠の設置方法・場所や武器を得る為に、狩人2人を積極的にスマイル接待してたのだが、どうも「このガキ、ホーンラビットを捕りに行くつもりだな」って気づいたらしく、親子そろって情報公開を渋り出した。




 そう狩人2世帯は親子である。見事に親子で連携し情報を共有して僕に渡さないようにしやがった。


 なかなかのファイヤーウォールだ!




 仕方なく、自ら情報収集するしかないかと、川向こうのホーンラビット生息地域の草原を、川手前から見学に行く事にした。


 ニューおめめパワーがあるからね!




 小川は川幅10mぐらいの石がごろごろあるような、渓流タイプで透明度も高く幸いな事に流れも緩やかだ。


 浅瀬も多くマイナスイオン的な何かを発してくれるナイスガイな小川だ。




 兎の奴らは異世界魔獣ジャンプでこちらに渡って来たりはしないらしい。


 兎は定住縄張りタイプであんまり大きく移動しないそうだ!


(狩人セキュリティー発動前に聞き込み済み)




 こちら岸の、石に登って、お目々パワーオン!




 ほほう、起伏の多い草原ですなぁ、さてさてうさちゃんは?


 と双眼鏡アイでしばし偵察するも1羽も姿が見あたらず、しばらく継続観察するも動物の気配は全くない。おいおい夜行性かよと、、、。




 うん、そうじゃないかと思ってたんだ、前世の祖父の田舎の方に野生の兎いたからね。




 やつらは基本夜行性で、天敵はタカ・フクロウ・キツネ。一番狙われにくい薄暗い早朝と夕方の活動がメインだもんね。




 獣の性質を継いでるのね、物語的なご都合主義くれてもいいんだけど、、、




 結局小川を渡って、巣穴を見に行くしかないかぁ。


 くそう3歳にはリスク高いぜぇ!




 まぁ最終的には罠も向こう岸に設置するし、渡るしかないんだけどね。


 最低限の準備いるなぁ。


 槍とナイフぐらい欲しいし。




 仕方なく、温暖な地方とはいえ冬に川に落ちたらしゃれにならないので、渡りやすそうな場所を慎重に見廻り確認し、異世界ピラニアなんかいないよねと水中をしばし確認をして撤退した。




 再度準備に奔走だ!




 まず槍は、鉄なんて高いし、木槍しか無理と早々に判断!


 木工のおじさんに「いいなぁ、ほしいなぁ」とうるうるお目々で、固くまっすぐそうな木材をおねだりするも、当たり前に却下された。




 こりゃ、良さげな立ち木を切ったやつで我慢るしかないと早々に決め。立ち木を切る物さえないから、黒曜石を探すが見当たらず。仕方なく、似た感じで割れやすい石を何度も石にぶつけて割り、なんとか脆いけど疑似石ナイフもどきをゲット!!




 石ナイフもどきの切れ味なんてお察しだから、直径5cmぐらいの立木を毎日5mmぐらい頑張って削りながら1週間以上かけて伐採。


 穂先を石に当ててゴリゴリ削って(仮)槍先を頑張って尖らせる。


 生木だから1回で先はつぶれるだろけど、何事も経験だからね。




 冷静に準備を思い返すと、文明の低いこの世界で、さらに時代を遡り、石器時代の様な事をしてる自分がちょっぴり切なくなって、ダメージ受けたよ。




 しかし、下がりそうな気持はノルンの顔を見てドーピングっ!




 なんとなしに想像しながら「ヤー!」とか「セイッ!」とか奇声を発しながら槍の練習をして、気合いと闘争心を作り上げる。ヤー!!





 いざ!実践練習だ!とスライム様にアタック敢行!


 気合いれて聞こえない所から


「頼もーう!」と道場破りの如くスライム沼を訪問する。




「オッス!おらザック!お命頂戴!」




 と偉大な格闘主人公の威を借りて、スライム君に勝負を挑んだ!




 ・・・戦闘シーンが始まるかなって思った方々、本当に申し訳ない、、、





 ・・・もうね弱いどころの話じゃないの。よわよわなの、、、


 ポヨン、ポヨンと跳んだりもしないの、ナメクジ移動、、、


 溶解液もないし、[身体強化]もなしで、刺すどころか3歳児の槍叩きでつぶれて死んじゃうのよ、、、




「・・・君たちね


 かの偉大な金字塔異世界作品では、君達のお仲間が、色んな物を吸収して人型になるのよ。さらに魔王にまで進化するんだよ!


 厄災の竜とお友達になっちゃったりするんだよ。


 向上心が足りないんじゃないの?」




 と説教かましてやりましたよ。




 こりゃ経験値的なものもないわ。


 あったら位階Ⅱの人をたくさん増産しそうだもの。


 仮にあっても0.001とかだね。




 異世界先輩諸兄オススメの、弱い魔物を沢山倒して経験値をゲット作戦は、スライム君では無理だね。


 なんかご都合主義が足りなくない?




 まぁ、木槍を使う経験を得たから良しとしよう。


 激弱魔獣の魔獣虐待で、市民団体に訴えられても「知らんっ!」とばかりに、心の中に勝手に「スライムの虐殺者」の称号をゲットして帰宅した。





 明日、小川を渡る!




 =================





 翌日、ノルンに「兄ちゃん、負けられない戦いに挑んでくるね。応援してね」と小声で伝え、天使スマイルを頂き、アドレナリンをゲット!




 この笑顔を見る為に慎重に行動して帰ってくるぞと小川へ出かけた。


 小川は、[身体強化]を使いつつ慎重に渡る事が出来た。




 よし、奴らのエリアは近いと、ゆっくり近づく。


 あれかな?  


 少し丘になってる所の下の方の草陰に巣穴っぽいのがある。


 穴掘るのに角が邪魔じゃないのかね。




 良く周りを見ると似た様な地形の所に、同じ様な巣穴らしきものが何か所かある。


 同じ個体の別の出口か、別個体の巣穴なのか。どっちだろ?




 あんまり近づきたくないな。


 50m以上は離れておきたい。


 よし、強化アイ・オン!




「おっ!動きあり!出てきた。


 おお額に10cmぐらいの角あんじゃん!魔獣じゃん!」




「・・・えっ?」




 僕に気づいてるっ!!!




 立ち上がってこっちをじっと見てる!


 マジかよ、、、、




「くそっ、俺の目より見えるのか?


 音か?匂いか?・・いや、、、魔力の気配か・・・」




 僕はしばらく動いてないし、やつは穴にいた。


 匂いか、身体強化の魔力気配の可能性が高いか、、、。





「くそ、くそ、クソッ、、、


 今の俺じゃ、あれに勝てないだろ、、、


 俺の生木の槍じゃ仮に刺さっても1回だけだし、あの角の方が強いだろ、、、


 穴掘る爪が鋭かったら・・・


 ・・・俺、死ぬぞ」




 ドッドッドッと心臓が跳ねる。


 恐怖で冷や汗がだらだら流れ、、、


 歯がガタガタと震えるのを無理やり食いしばる。




 ・・・逃げなきゃ




 震える身体を少しずつ、少しずつ後ろに。


 音を立てて、反応させない様に。


 ジリっ、ジリっと、ゆっくりと下がりながら


 目は奴から離さず、いや、、、より強化して、なけなしの勇気で睨みつける。




 じっと目が奴とあったまま。


 ジリっ、ジリっと。


 歩けば、10秒もかからない距離を、ゆくりと。


 10mぐらい後ろ向きに下がれたと思う、、、


 長い草に隠れかけた、その瞬間 




 反転ダッシュ!


 走れ!走れ!走れっ!




 もう身体強化全開で逃げる!


 心臓も息も跳ね上がるが、知った事ではない!


 小川も少しぐらい水がかかろうが関係ない! 


 走れ!走れ!止まるなっ!




 対岸まで一気に渡った所で、魔力が切れそうになりフラっとして石につんのめりバタンっと前に倒れてしまった!




 ハッとして、なけなしの力で対岸を振り返る。




 ハッ、ハッ、ハッ良かった、、、


 何もいない、、、しばらく対岸をみつめる


 奴は追っては来なかったようだった。




「ハッ、ハッ、ハッ」息が、、、


 酸素が足りない、、、息が、、





 膝をすりむいて、かすかに血がにじんだ。


 身体はガタガタと震え、冷たいのか熱いのかさえわからない。


 目だけは、強化しすぎたのかジンジンと熱を持ってる。




「はぁ、はぁ、はぁ、オエッ・・」




 胃の中のものが、逆流し口から溢れ出る。


 息を荒らしながら、ぼたぼたと零れる内容物と胃液をみていた・・・。





「なんだよ、どうしろって言うなんだよ!」




「これ以上何を頑張れって言うんだよ、、、。神様、頼むよ。


 教えてくれよ、、、」





「俺、頑張って来たろう?頑張ったよな?


 3年間毎日毎日、なにもかもわからないのにっ!!


 全部最初から調べて自分でやったろ!」




「俺以上に頑張ってる3歳児なんて、この世にそんなにいないだろっ!


 前世はあっても3歳なんだぞ!!」




「あんなやつ、物語みたいに、ファイヤーボールとか、ウィンドスラッシュとか、ロックバレットとかないと3歳児には無理だろ!!


 鉄さえないんだぞっ!!」




「ふざけんなよ、、。なんだよ、、、どうしろっていうんだよ、、 うっ、ううっ」




 胸が締付けられ、抑えつけていた何かの蓋がはずれてしまい、ポタポタと落ちる涙の粒を見ながら、、、


 背中を揺らし、声にならない音をしばらくもらし続けていた





 情報も文明もない異世界で、不安に向き合いたくなかった。




 悪く考えてしまうと、自分の心を保つ自信がなかったんだと思う。


 なんとか前だけを向く様に、自分に無理に言い聞かせ、明るく前向きな自分で自分の中を一杯に膨らました。


 明るい光を溢れさせて、影を隠して、前だけを。




 限界だったのかもしれない。




 緊張の糸が、、、。




 涙が止まっても、帰宅の為に身体を動かす最低限のエネルギーを溜めるのに、随分かかったと思う・・・





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