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事故物件エクソシスト〜霊と音のお悩み、お聞きします〜  作者: 地野千塩


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逆再生の音(2)

「まじか。ネットでもあの土地が呪いだって噂がたってるな」


 楽人はネットであの土地の呪いについて調べていた。仕事ではもう片付いた問題だったが、あの日以来、どうも家にいると誰かに見られているうな感覚もあり、気になって調べていた。


 調べるといってもノートパソコンで検索するだけだ。住所を打ち込んで検索すると、想像以上に情報が出て来た。


 しかも都市伝説サイトにも載っていた。近隣住民だけでなく、ネット上でも有名らしい。


「は? 嘘だ。今までのオーナーやその家族も亡くなっていたりするんか?」


 そんな情報も都市伝説サイトに載っており、背中が寒い。今の季節は夜でも蒸し暑いぐらいなのに、全身が冷えてきた。


「しかも、昭和時代にここで殺人事件が起きた噂もあるんか? 痴女のもつれによりホステスの女が客に刺殺された……」


 そんな情報を見ていたら、さすがに気持ち悪くなってきた。たかがネットの文字だ。それでもいくつかの情報をつなぎあわせると「呪い」になるから不思議なもの。非科学的な呪いであっても人への心理に影響を与えるのだろうか。


 ふと、目を閉じたら幼い頃の母を思う出す。


 楽人が風邪薬を嫌がると「コレはアンパンマン が作った薬だから飲んでも大丈夫よ。必ず元気になるわ」と言われた。その母の声と笑顔で不思議と安心し、薬も飲めた。医者が驚くほど早く風邪が治った経験があった。


 今思えば馬鹿馬鹿しい作る話だ。アニメのキャラクターが薬を作るはずがない。それでも純粋無垢なだった子供時代は素直に思い込み、疑いもせず飲んでしまった。


 今思えば、プラシーボ効果というものだろう。効果のないサプリメントでも医者が特効薬だと説明すれ治るというアレ。一応科学的に説明はついているらしいが、想像以上に人の思い込みは現実にも影響するのだろうか?


 母はそれを知ってか知らずか、そんな作り話をしたのだろうか。わからない。作り話しているような感覚はなく、むしろ楽人の風邪が本気で治ると信じて疑っていなかった。


「もしかして人の思いが、現実に何か影響を与えているのだろうか。呪いの土地はそれが原因?」


 何か答えが出そうで出ない時だった。男友達のの深谷イズミから連絡がきた。今度飲まないかっていう誘い。特に断る理由もないので行くことにした。


 次の日の夜、駅前の居酒屋チェーン店でイズミに会った。駅前の店というのもあるが、夏休みの影響もあるのだろう。店は混み合い、客や店員の声がガヤガヤと響いていた。


「なんかイズミ、雰囲気変わってね?」


 三ヶ月ぶりぐらいに会ったイズミ。昔は普通のサラリーマンという雰囲気だったのに、今はメンズコスメもしていた。肌艶もよく、黒髪はふわりとセットされてる。


「実はさ、ネットで配信者始めたんよ」

「はー?」

「オカルトとか都市伝説の。コレが案外、リスナーに受けてさぁ。サラリーマン辞めて配信活動やライティング、オンラインサロンとかで食べてる」


 友達の豹変に楽人は声も出ない。ビールを飲む気がしない。目の前の唐揚げも急に色褪せて見えてぃた。別にイズミに嫉妬したわけでもないのに。


「そんな安定性とか大丈夫?」

「まあ、なんとかなるっしょ」


 イズミの能天気な声響く。耳にジンジンしてきた。なぜだろう。楽人の今の仕事、特に不満はないのに、イズミのような生き方を見せつけられ、急に胸がざわついてきた。


「人生は短いしな。好きなことをやった方が勝ちってことさ。ははは」

「へ、へぇ。いいな」


 それでも楽しそうにビールを飲むイズミを見ていたら、胸のざわつきは止まってきた。どんな配信をしているのか、少し見せてもらう。


「なんだコレ、呪いの逆再生音楽?」


 イズミのチャンネルにはそんなトピックの動画があった。他の動画もオカルトホラー風のサムネイルだったが、この動画だけ一段と怖い。サムネイルに幽霊らしき女のイラストもある。


「それに興味を持ったか。去年解散したエンジェル&ライトっていうアイドルグループ知ってるか?」


 イズミのいうアイドルは知ってた。B級アイドルだったが、メインボーカルの子が二千年に一人の逸材と呼ばれた美少女。ただ、その美少女も自殺してしまい、解散。伝説のアイドルグループとして有名だった。曲はアイドルらしく爽やかなものが多いと記憶していた。


「そのデビュー曲を逆再生すると、なんと呪いの言葉聞こえるらしいよ」

「は? それ本当か?」

「まあ、楽人、一度試しに聞いてみ?」


 イズミは目を細め、ヒヒと笑っていた。嫌な笑い方だったが、気になってきた。本当に逆再生したら呪いの言葉なんて聞こえるのか?


 エンジェル&ライトは伝説のグループだが、曲自体はそんな怪しいもんじゃない。


「キミを応援してるよ♪ いつだって背中を押してあげる♪」


 家に帰り、動画サイトでエンジェル&ライトの曲を聴いたが、どこからどう聞いても爽やかなアイドルソングだ。


「コレが呪い? まさか」


 でもこんな可愛いアイドルグループが呪いというギャップがあったら?


 どうも気になってしまう。呪いの土地についても、頭では非科学的だと思っているのに心がついていかない。オカルトや都市伝説が流行る理由がなんとなくわかってしまうが、好奇心が抑えられない。一体、逆再生でどんな言葉が使われているのだろうか。


「ま、こんなアイドルが逆再生で呪いの言葉とか無いだろ……」


 鼻で笑いつつも、エンジェル&ライトの曲をダウンロードし、逆再生してみた。


 ギュルギュルとした不快な音が響くだけ。なんだ、別に呪いも何も起きないじゃないか。やっぱりイズミの話は都市伝説だったと思った時だった。


 キィイイイイイ!


 急に金属音が響き、耳がキンとした。思わず耳を塞いだが遅かった。呪いの言葉が聞こえてきた。


『オマエハ一生誰にも愛されないでオワル。オワル。オワル。オワル。オワル。ハイ、オシマイ!!!』


 その声が耳にベタリと張り付いて取れない。いくら耳を塞いでも無駄だった。


 オワル。オワル。オワル。オワル。オワル。オワル。オワル。オワル……。

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