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事故物件エクソシスト〜霊と音のお悩み、お聞きします〜  作者: 地野千塩


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呪いのプレイリスト(3)

「我々、魔ァ族666は地上に舞い降りた堕天ロックバンド集団。666は聖書では悪魔って意味だけど、中国では縁起のいい数字だからよろしくね☆ってなんじゃコレは! 隅から隅まで悪魔崇拝バンドだな!」


 尋人は魔ァ族666の公式ホームページのプロフィールを見ながらため息をついていた。チョコチップクッキーもすごい勢いで噛み砕いている。


「メンバー全員、片目を隠しているっていうのもすげぇな。ここまで徹底していたらかえって我々とも気が合うかもしれん」

「ちょ、羽生さん、あなた何言っているの?」

「歌詞とかも案外面白いよ。聖書の知識もあるじゃんか。まあ、それが無いと冒涜も悪魔崇拝もできないからね。しかし面白いねぇ」


 尋人は細い目をさらに細くし、魔ァ族666のことを調べていた。おそらく聖書とかキリスト教とは相反するバンドなのに、興味を持って調べている牧師って……。


「確かに演奏技術は高いよな。もったいないバンドだよ。こんな悪魔崇拝するんじゃなく、讃美歌をロック調で歌って欲しいもんだわー」

「羽生さん、なんか話ずれてません?」

「おぉ、しまった。脱線した。そうだ、これがおそらく霊現象の原因だろうな」

「そんな音楽聞くだけで影響あったりするんですかね?」


 それが疑問だ。詩音は首を傾げてしまう。確かに心には影響ありそうだが、霊現象まで起きるほどの影響はあるのか腑に落ちない。


「あるぞ。明るい音楽聴いたら明るい気持ちになるだろ? スーパーでもテンポがよくご機嫌な音楽が流れている。客にテンション高くなって無駄遣いしてもらう為だ」


 そういえばスーパーの音楽は尋人の言う通りだった。惣菜コーナーで流れている音楽もテンションが高いし、ついつい唐揚げや焼きそばを買ってしまってる。


「音というか周波数の影響があるんだよ。イライラや憂鬱さを引き起こす周波数っていうのもあるんだ。昔、ヒトラーもそういう音楽を使って国民がユダヤ人に憎しみを持つように誘導したりしていたんだ。音楽がプロパガンダに使われてた」

「う、うそ?」

「空港で流れている音楽もそうらしい。攻撃性を弱める音楽が使われているとか。テロ予防の為だ。まあ、全部が全部そうとも言い切れんが、音に影響されやすいことは確か」


 そんな話を聞いていたらゾクゾクしてきた。音が心に与える影響、かなり大きいのだろうか。


「聖書にも音楽を使って礼拝しなさいとある。たぶん神様は音が心に与える影響を聖書を通して伝えてくださっているのだろう。賛美歌も神様が讃えられたいとかそういう傲慢なものじゃなくて、もしかしたら人間の為にあるのかもしれんな」


 ここで尋人は説教台の近くにある電子ピアノを使い、讃美歌を歌っていた。正直、ピアノの歌も下手くそだったが何か引っかかって仕方ない。


「主の御名を讃えます〜♪ 素晴らしい主の御名を〜♪」


 フランスの教会で聞いたような神聖な讃美歌とも雰囲気が違う。曲調はポップだし、親しみやすい雰囲気すらあるが、普通の音楽と何かが違う。


 普通の音楽がどこか感情的だ。歌い手の「わたしを見て」という感情があるというか。逆に「あなたを励ましたい」と歌っている曲だって歌い手の感情が滲んでる。魔ァ族666の曲だってそうだ。一方、尋人の歌う讃美歌は歌い手の感情が薄い。いや、少しは滲んでいるが、それよりも神様を讃えることに重点が置かれている。聞いていても変に感情が揺さぶられず、かえって心が落ち着いてしまう。


「あ、なんか良い賛美歌だったかも? こんな曲は初めて聞いたかも。なんか落ち着く」

「宮城さん、ありがとう」


 そうして笑顔でお礼を言う尋人は決して悪い人には見えないから不思議だ。


「音楽は本当に心に影響を与えるからな。悪魔だって元々は天界では賛美隊のリーダーだったんだ」

「羽生さん、それ本当?」

「だから音楽を使って人の気持ちをコントロールするなんて朝飯前なんだわな」


 尋人はここでニヤリと笑ってもう一曲賛美歌を歌い始めた。しかししれは魔ァ族666の代表曲だった。ネット上の楽譜を使ったようだが。


「わたしたちは神様を讃えます!!!」


 歌詞は全く違う。賛美歌用にアレンジされていた。元々は「我々は地上に舞い降りた堕天使!!!」という歌詞だったのに。


 おかしい。同じ曲なのに、歌っている人によって全然違う。原曲は闇みたいな雰囲気なのに、尋人が歌うと光に変わっていた。礼拝堂の高い天井からの光とよく似合う。


「って感じでいくら悪い音楽だとしても、俺らクリスチャンが別の目的で歌えば讃美歌に変わるってわけさ」

「ちょ、そんな勝手に替え歌にしていいんですか?」


 呆れてきたが、 こんなアレンジも悪くないと思うから不思議だ。それにいつも聞いていた音楽がこんなにも雰囲気が変わるなんて。目から鱗が落ちそう。


「とりあえず、その音楽聴くのはやめてみ? どうしても聴きたくなったら俺の賛美歌を吹き込んで渡しても……」

「いえ、それは良いですから。とりあえず魔ァ族666の音楽を聞くのやめてみます。それで解決すると思うし、話聞いてくれてありがとう」

「いや、いいさ。何か困ったらまた教会来るんだぞ」

「ええ」


 こうして羽生教会を後にし、魔ァ族666の音楽を聞くのを辞めた。これでもう霊現象ともおさらばと思うとスッキリしてきたが。


 一日、二日、三日たち、なぜかどうしても魔ァ族666の音楽が聴きたくて仕方ない。いつも聞いていたから何か無いと違和感。あの高い技術の演奏、ボーカルのシャウトが刺激的だった。聴きたくて仕方がない!


 これが霊現象の原因かもしれない。聞かない方が絶対いい。頭ではわかっているにに、我慢できなくなってしまい、動画サイトの再生ボタンをタップしてしまった。


「我々は地上に舞い降りた堕天使!!!!」


 その音楽を聴きながら気持ちいい。やっぱりこのバンド、最高!


 しかしそんな爽快感も長くは続かなかった。耳鳴りが響いたと思ったら、金縛にあう。


「ひぃ……。何これ……」


 強い金縛だった。全然身体が動かない。原因はわかってる。あの音楽のせい。でも毎日聞いていたものをすぐには辞められない?


 キィィイィィ……。


 再びあの音が響いていた。



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