39・まじゅう
苦々しい笑顔を浮かべて首をかしげるシャルロッテ。
「魔獣」と呼ばれる存在については依然わからないことだらけではあるが。
───どこかで聞いたような話だ。
ツヅリは相槌を打ちながら、その話について思索を巡らせていた。
まず、あの魔獣という化け物からも結晶エーテルを回収することができている。
それもマーゼット視覚で確認した限りではかなりの高純度。
結晶エーテルを内包しているということ。その点はエーテル信号体や極密度震源体とほとんど変わりないだろう。
問題はそれが実体化できてしまっている点である。
どうやらこちらの世界ではそれが普通のことのようだけれど、到底考えられない恐ろしいことだ。
───やはり、ここは別の世界なのか?
この魔獣だけでみるなら安定領域とかのほうが、まだ現象として理解はできるのだけれど……。
エーテルの淀みである瘴気。
それはたぶん、僕の知識でいうエーテルの揺らぎじゃないだろうか?
いや、断定はできない。けれど現象として、どこか似通っているのは確かなのだ。
───細かい話をするなら、エーテル信号体がエーテルの揺らぎから生まれるというのは確証のある話ではないけれど。
しかしだとするなら。
不定領域や不安定領域ならともかくとして、安定領域においてそういう揺らぎが発生することは滅多にない。
安定領域だと仮定するならそこに疑問が残る。
「ところで……魔獣、でしたよね。名前とかってあったりするんですか?」
「え、名前ですか?」
交差点内をぐるりと見渡すが、あの魔獣とやらの姿はどこにも見当たらない。
おそらくもう回収されたか処理されてしまったのだろう。
「うーん、昔はあったみたいですけど……。いまじゃ種別で呼ぶのが普通ですね。たとえば今回のだと……えーと……「アルマ級タイプディアボロ」らしいです」
ツヅリの質問に、シャルロッテは少し考え込みながら、携帯をポチポチといじってなにかを確認する。
ちらりと覗き込んでみると、記事らしき画面を見ているようであった。
「なんか……独特な感じなんですね」
「えへへ、よくわかんないですよね!私もやるときは見た目でしか判断してないので、名前とかは気にしたことなくて」
「もしかして、戦ったこともあるんですか!?」
「そ、そんな大した魔獣じゃないですよ? せいぜいルルル級の……えーと、あのトラックくらいのやつですし」
シャルロッテが指さす先の路肩には中型の、なにやら仰々しい装甲のついたトラックが停車していた。
あのサイズであれば、装備があれば僕も問題なく倒せるだろうか。
いやそれだって確証はない。
仮にエーテル信号体だとしても。
あの化物と対峙した時、なにか毛色の違うような感覚を覚えたのは確かだ。
「いや、すごいですよ。倒せるかって聞かれたら、わたし……ちょっと自信ないです」
「大丈夫ですよ! 私も最初はそんなもんでしたから! これからビシバシやっていきましょ!」
「あはは……お手柔らかにお願いしますね?」




