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 診察結果は「正常」。

 その2文字につきると言ってよかった。

 身体的外傷もなく、身体全体をとおして異常の「い」の字もないとのことで。

 ツヅリからすればそうだろうとは思いつつも、この身体の変化がどうなっているのかも気になるところではあったが。

 その点で言えば彼の一つの安心材料になったと言える。


 驚いたことといえば、血液検査などが一瞬で結果が出るくらい早かったと言うことくらいか。

 すこし採血して、女医がそれをもってカーテンの向こうに行ったかと思えば、ものの1分ほどで戻ってきては「問題ないですね」のひと言。


 あとは、例の検査については、特に言わないでおいたほうがいいだろう。

 おずおずとトイレから出てきたときのツヅリの顔は、まるで熟れたトマトのように真っ赤であった。


「はい。じゃあ気をつけてお帰りくださいねー」


 気だるそうに廊下の奥へ消えていく女医と別れ、部屋へと戻ったツヅリは、待っていたシャルロッテと共に軍病院をあとにする。


「結果はどだったんです?」

「とくに、なにもありませんでしたよ。いたって健康ですって」

「そうですか……。でもまあ、健康ならそれはそれでよかったです!」


 軍の敷地を抜けて、市街地へと入り。

 ツヅリはシャルロッテのうしろを付いて、ビルの立ち並ぶ通りを歩いて交差点に差し掛かる。

 交差点の向こう側、奥のほうに倒壊した建物とぼろぼろになった道路などが見えた。

 ───あれは……数時間前に僕が化け物に襲われた場所だろうか?


「信号、青になりましたよ。どうかしました?」

「ああいえ、すみません。あれが気になって……」

「え? あー。さいきんじゃ、もうあんまり珍しくないんですけどねー。近くに行って見ます?」


 ツヅリは頷き、その提案にのった。

 道行く人やら野次馬やらにまぎれながら、その間を通り抜けて張り巡らされた規制線のすぐ近くまで移動する。

 近づくほどに倒壊した建物が鮮明に見えるようになり、煙の臭いや延焼の臭いがし始める。


「ここ、ちょっと前に魔獣が出たみたいで。あ、魔獣ってわかります?」

「……いえ、わからないです。なんなんですか?」

「簡単に言うと『人を襲う凶暴な動物』ですかねぇ。ただ普通の動物と違うのは、彼らはエーテルの淀みである瘴気の中から生まれるんです」


 エーテルの淀み?

 瘴気?


「ただここ数年は、こういう街中とか。瘴気がないところにも現れたりするようになっちゃって。私たち軍や、バンカーたちのおかげで被害は少ないですけど……それでも未だに解決策がないんですよねぇ」


 折れた煌線ケーブルを繋ぐ鉄塔。

 ひび割れて陥没した道路。

 シャルロッテは崩れ去ったドラッグストアの跡地を眺めながら、はあと深い溜息を吐いた。


「って、こんな話されても困っちゃいますよね? えへへ」




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