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カコの森

今回は、いよいよ!


花夏とーアスランがー出会ったー(古いですね)


日々更新チャレンジ達成中!(2020/9/26)

3点リーダ等微修正しました(2020/10/29)

 シュウからもらったあまりにもストレートに愛をぶつけてくるラブレターに動揺しまくった日から、早1週間。


 花夏は、乗り合い馬車をひたすら乗り継いで、ようやくリュシカ王国の王都カコに辿り着いた。街の造りはシエラルドによく似ている。ここも城塞都市になっているようだが、シエラルドの灰色の石壁と比べ全体がやや明るい白めの石壁だからか、雰囲気が軽やかに見える。


 先程宿屋は確保したが、もう大分お金を使ってしまった。残高はあるにはあるのだが、あまり次々と使ってしまい減りすぎるのが怖いというのが本音である。


(そろそろ稼がないとかなあ)


 それに、周りを歩く人々を見ると時々黒髪の人がいる。これならシエラルドの時ほど人目につかないかもしれない。


(よし、働こう!)


 だがその前に、いい加減やらねばならない事がある。


 シュウへ手紙の返事を書く事だ。


 あれから、何と書こうかと悩み悩んで結論は出ず今に至る。我ながら酷いやつだと思う。先程手紙がまた届いていたので見てみると、サルタスからだった。シュウが凹んでいるが理由が分からない、知っているか、という内容だった。ヤナもサルタスも元気にしているらしいが、シュウの落ち込み具合が心配だという。


 もしかしたら、やり過ぎたと後悔しているのかもしれない。だとしたら、返事をしないのは可哀想だ。


 そしてふと気付いた。シュウの事ばかり考えて、ここ1週間というものひとりきりの寂しさに落ち込む余裕がなかった。


(もしや、それが目的?)


 頭のいいシュウの事だ、そういう効果を狙ったのかもしれない。なんせ人を振り回すことにかけては天才的なのだから。


 花夏は随分と自分に都合のいい、シュウが聞いたら泣きそうな考えを思いつき、郵便屋に軽くなった足取りで向かったのだった。







「お父さん、カナツからお手紙来てるよ」


 夜、城から戻るとヤナが手紙を差し出した。


「……開けた?」


 恐る恐るシュウが聞くと、ヤナが首を横に振った。


「私宛と、サルタス宛もあったから、ちゃんと開けなかったよ」

「そうか」


 偉い偉い、とヤナの頭を撫でて手紙を受け取った。

 一緒にシュウの家に来たサルタスはキッチンに向かっているが、少しホッとした表情になっている。どうも心配させていたらしい。



 この1週間、本当に長かった。



 感慨深げにシュウは目を瞑った。手紙を出した後、あまりにもストレートな内容に流石にまずいかと思い訂正の手紙を出そうかとか、返事が一向に来ない中仕事をしてても上の空になりソーマに叱られたりと、あんな小っ恥ずかしい手紙を書いた事を誰にも話せる訳もなく、悶々としていた1週間だった。


(辛かった……)


 でもこれも今日でお終いだ。肯定なり否定なり、何らかの反応がある筈だ。花夏に拒否されたところで、すぐに諦める気はシュウにはさらさらなかったが。


 だが、その手紙の内容はシュウの予想の斜め下をいくものだった。



『シュウさんへ


 お元気ですか?

 お手紙を読んだ時はビックリしました。

 シュウさんは本気なのかな?

 とか、からかってるのかな?とか悩みました。

 そうしたら、あっという間にカコの街に着きました!

 寂しくなる暇もなかったです。

 流石シュウさん、策士ですね!

 明日はギルドに行ってみます。

 仕事、いいのがあるといいんですけど。

 シュウさんも無理せずに。

 ちゃんと寝てますか? それが心配です。

 ごはんもちゃんと食べてくださいね。

 また面白い手紙待ってますね。


 カナツより』



「面白い手紙……」


 あの、一生分くらい恥ずかしい思いをして花夏を想って書き上げたあの手紙が、面白い手紙になってしまっている。


 相変わらずの読めなさだ。面白い程読めなくて、この自分を振り回す、あの大きな瞳。


「会いたいなあ……」


 心の底からの、言葉。目の前で、もっともっと振り回されたい。


 キッチンから出てきたサルタスが、そんなシュウを見て優しい笑顔になった。







 翌日。


 花夏は宿屋を去り、荷物を背負って昨日着いたばかりのカコの街を出た。目指すはカコの街から2時間程離れた場所にある、カコの森だ。


 昨日、ギルドで依頼を受けた。カコの森の中の川に落ちている発光石を収集してほしい、というのが今回の依頼だ。

 何故川の中の物なのか、花夏は全くの初心者だった為ギルドの人に聞いてしまったのだが、要は水に浸かってないと光らないから分からないらしい。なんとも単純な理由だった。問題は、夜にならないと光らないという事だ。シュウが花夏にくれた発光石も、辺りがかなり暗くならないと明るく光らない。

 

「最近魔物も増えてきたから気をつけてね」


 そう言われた。結界が張られているのではないのだろうかと思ったが、花夏が落ちてきた時のように穴が開いたりすることももしかしたらあるのかもしれない。


 魔物の討伐依頼もあったようではあるが、出来れば会いたくはない。倒したのを一体どう証明するのかも分からないので、万が一会ったら逃げるしかないだろう。


 そう考えながら、新緑の野原をずんずんとカコの森の方面へと歩を進めていく。剣術を身に着けてから、とにかく身体が軽くなった。そのせいだろうか、歩幅も広くなり、歩くスピードも速くなった。おしとやかとはお世辞にも言えないだろうが、ひとりで生きていくにはこの方がいいのかも、とあまり気にしないことにしている。


 春の日差しが暖かい。太陽の熱が、まだ春だと言うのに花夏の髪の毛を熱くしていく。頭皮が熱でじりじりしてきて、花夏は我慢できずにフードを被った。このマントは男性用なのか若干花夏には大きく、目の上くらいまでフードがかかるため見にくい。見えにくいを選ぶか、暑いを選ぶか。


 悩んだ末、見えにくいほうを選んだ。やはり暑さには敵わない。


 更に1時間程歩くと、ようやく森が近くなってきた。森の中に入れば日陰になる。少しは楽になるだろう。


 念の為、後ろを見返す。誰もいない。


 とにかくサルタスから口を酸っぱくして繰り返し言われたのは、他の人への警戒を怠らないことと荷物の取り扱いだった。


 ここは日本ではない、それは分かっているのだが気を張っていないとどうしても気が緩んでしまう。山小屋でもなんせ他に人がいないので一切警戒する必要がなかった為、どこまで警戒したらいいのかが未だあやふやだ。


 サルタスから見るとどうも花夏は隙だらけのようで、事ある毎に注意された。多分、サルタスがあれだけ言うくらいなのだから花夏はまだまだ警戒心が足りないのだろう。


 一番簡単なのは、とにかくひとりになる事だ。他に人がいなければ、襲われようがない。


 森の入り口まで来た。左右を見ると、少し右に行った方に細い道がある。ギルドの人が細い道があってそこから川まで1時間程で行ける、と言っていたが、これのことであろう。


 花夏はもう一度振り返って辺りに人影がないのとを確認した後、森の中へと足を一歩踏み入れた。







 普段移動の時はセリーナの剣は背中に背負っているが、今日はひょっとしたら獲物に出会えるかもしれないのでいつでも抜けるよう腰に浴びている。マントが剣に絡んで若干邪魔だが、他の人はどうしているのだろうか。今度街でじっくり見てみようと思った。


 森の中はひんやりと涼しい。まだ新緑の時期も始めの方だからか、木の背は高く葉は大分空の方にあるが、生えている葉はまばらで日光が差し込んできてかなり明るい。ある程度遠くまで見通せるので、もしかしたらシエラルドの森ように伐採して間引きしているのかもしれない。木製の家具なども多いので、十分あり得るだろう。


 足元はくるぶし程度までの高さの雑草が生えていて、ふかふかとしている。草が滑るのでやや歩きにくいが、どうせ暗くならないと採取出来ないので、多少ゆっくり行っても問題はないだろう。川に沈んでいるものを取るので、ある程度濡れる事も考えると事前に焚火も準備しておきたい。更に出来たら何匹か獲物を捕まえて、ギルドに持ち込みお金に替えたい。その為、朝早く出発してきた。


 最悪は野営するつもりで今日はここに来たので、ある程度準備の時間が欲しかった。


 

 鳥の軽やかな鳴き声が響く。小さな白い花が所々に咲いている。踏みつけてしまうのは可哀そうなので、避けて歩いた。薄っすらと続く道をひたすら辿って歩いていく。シエラルドの森とは違い、平坦な道のりが続く。


 ひとつひとつの事が、全てシエラルドの事を思い出させる。シュウは、手紙を読んで何と思っただろうか。シュウに好意を持たれている事は流石に理解しているが、それがどの程度深いものなのかが花夏には分からない。踏み込めない。踏み込んだら戻りたくなってしまうから、受け入れられない。


 花夏は自分はずるい人間だと思う。シュウの好意を分かっていながら応えない。応えないけど、嫌われるのは嫌だから曖昧な言葉で濁し、どっちつかずの態度ばかり取っている。


(私……シュウさんの事どう思ってるんだろう)


 肝心の自分の気持ちでさえも曖昧だ。考えても答えは出ない。答えが分かる前に離れてしまった。先に進むために、自分をあの場所から切り離す為に言葉通り逃げてきたのだから。


 花夏には、シュウの好意を利用して自分に有利に物事を運ばせよう、等といった下心はない。そういった考えが世の中にはあることすらまだ知らない純粋さが故に、シュウが振り回されている事も分かっていない。したたかさを身につけるには、花夏にはまだ圧倒的に経験が不足していた。







 しばらく行くと、水が流れる音が聞こえ始めた。川が近いのかもしれない。上を見上げると、木々の隙間に太陽の光が見えるが、それがどの辺りにあるかまでは分からないが、かなり明るいのでそろそろ正午くらいかもしれない。


 ずっと歩き続けていたので、体が汗ばんでいる。川の深さにもよるが、出来たら沐浴程度はしたいが、辺りに人気がないからといって流石に簡単に裸になるのは憚られる。万が一人が来てもすぐに見つからないような場所があればにしよう、と自分の欲に制限をかけた。優先順位はしっかりとつけていかねば、いつ予期せぬ事が自分の身に降りかかるか分からない。何を優先とするか、そこを見定めていく必要があった。


 川に出た。川縁には小さい石が転がっていて、なだらかな傾斜を見せている。川底は砂なのか、透明度が高く水が澄んでいる。流れる速度はゆったりだが、10メートルほどある川幅の内、真ん中あたりだけ流れが速い。川の中心に向かって深くなっているようだ。一番浅いところで膝下くらいであろうか。真ん中あたりは見たところお尻までは届かないが腿はかなり浸かりそうだ。

 

 川縁に沿って左の方向に、小さめの野営の跡があった。人ひとり分が座れる丸太に、焚火の跡。これは有難かった。これならば、すぐに焚火が作れる。焚火の跡のすぐ横には大きな木があり、根っこの部分が1メートルほどの高さのうろになっている。奥行は、花夏が横になって、横に荷物を置いたらぴったりくらいだ。誰かがここで寝たのか、洞の中の地面は枯葉が敷き詰められ柔らかそうだ。もしかしたら、発光石を採取する人は皆ここを寝床代わりにしているのかもしれない。


 まずは準備だ。洞の中に荷物を置き、マントも脱いだ。念のため帯剣はしておく。地面に落ちている枝を拾って来ては集める。夜の焚火用と、後は濡れた服を乾かす為の竿が欲しい。しばらくせっせとひたすら枝を拾い続ける。結構な重労働だ。


 30分程集めただろうか、枝が大分溜まったので、今度はなるべく真っ直ぐの長い木の棒を5本選び、辺りを見回して紐になりそうな蔓や枝を探す。あった。近くの木に絡みついている細い枝を手で引っ張り、腰につけた小刀で切り取る。長い木の棒を2本、地面にぐっと突き刺し交差させ、採ってきた枝でぐるぐると巻き固定する。少し離れたところにも同じものをもう1組作り、上に太目の棒を乗せてもう一度括り付け、完成だ。


 サルタス直伝、簡単洗濯竿である。手で揺らしてみたが、とりあえず1日くらいなら持つだろう。地面が柔らかかったので深く刺さっているのがよかったのかもしれない。


 次は、焚火の準備だ。手持ちの油が染みた紙を丸めて焚火の跡の真ん中に置き、先ほど採ってきた枝を中に空洞ができるように積み上げていく。長いのは折ってから並べると、まあそれなりのが出来た。次にこちらも油が染み込ませてある綿を小さく千切り、火打石でカン、と火花を出していく。この火打石も魔石の一種なので、簡単に火が出る。


「あち」


 綿が燃え出したので、テントのようになっている枝の隙間から丸めた紙の上に投げる。火が大きくなった。ふーっと息を吹きかけると、火の勢いが段々と強くなってくる。枝に火が移った。


「よし」


 サルタスに散々仕込まれたので、これもなんなく出来た。


(流石出来る男サルタスさん)


 サルタスは教え方が上手い。ただこうしろ、というのではなく、何故これをしたらいいのかを細かい事まできちんと説明してくれたので、道具がない時に代用案を考えることができる。


 このままずっとサルタスとヤナが一緒にいれたなら、ヤナはものすごく賢く素敵な女性になる気がした。その姿を見れるものなら見てみたい。それまでにもしかしたら自分の世界に帰れてるかもしれないが。


――先が見えない。


 考えても仕方がないが、少しだけ気落ちする。日本にいた時の事が、最近ではまるで夢のように感じる。まさか高1になってひとりで野営する事になるなんて思ってもいなかった。まあ、高校は行ってないので立場的には無職であるが。


「よっ」


 勢いをつけて立ち上がってみた。次は、辺りの散策兼出来たら狩猟だ。落ち込んでいる場合ではない。


 そして、感じる違和感。


――なんだろう。


 辺りの気配を探る。ゆっくりと周りを見渡す。森がサァ、と風に揺れる。


 違和感の原因が分かった。



(鳥の鳴き声が止んだ)



 剣の柄に手をかける。何か、おかしな感覚はないか。じっと、気配を探り続ける。


 カサ、と何かが動く音がした。来た道の方ではなく、川沿いの奥の方からだ。


 何故か、それが人でない事が分かった。そして、不思議な既視感。知ってる、自分はこれが何なのか、知っている。



――これは、敵だ。



 木の影に、何かがいる。花夏は、スラリと剣を鞘から抜き、構えた。相手が出てくるのを待つ。


 サワサワ、と足元の雑草が風の音を立てた。


 すると、一向に動かない花夏にじれたのか、何かが木の影から姿を現した。


 真っ白い体だ。鋭い牙。どこを見ているのか読めない真っ赤な眼をしている。


 グルル、と犬の唸り声のような声で威嚇してきている。


(魔物だ!)


 心臓が飛び跳ねる。だが、相手に気取られてはいけない。


(目を晒すな)


 自分に言い聞かせ、花夏は相手をじっと観察する。


 狼のような顔をして前足も狼だが、木の影から出てきた体の後ろはまるで鳥のようだ。鷲のような鋭い鍵爪が地面に刺さっている。その背中には、白い翼が生えていた。


 サルタスが言っていた。魔物には、魔石が埋まっていると。


 その魔石を破壊しないと、死なない。切っても復活してくると。


 魔石はどこだろう。一見、どこにも見当たらない。


 花夏は、体の他の部分を見ようとジリジリ、と円を描くように間合いはとったまま移動する。


(どうしよう、見当たらない……!)


 目標があれば何とかなっても、目標が定まらない事にはどうしようもない。


 焦りからか緊張からか、柄を握る手が汗をかいてきた。


 この場には自分しかいない。逃げるか? 逃げたら追ってくるのでは。


――いや、違う。


 魔物は目を花夏から離さない。その目は赤い。この赤い目。


 これが魔石ではないか?


 よく見ると、反対側の目は黒い。


 目標が定まった。


 魔物の左目を狙えばいい。



 睨み合いが続く。


 花夏が先ほど点けた焚火が、大きな音でバチッ! と爆ぜた。


 それが合図となった。


 魔物が唸り声を上げながら、一気に走ってくる。


 花夏の3メートル程手前で、魔物が跳躍した!


 花夏は瞬時に横に移動し、魔物の背後から一気に袈裟切りに切りつけた!


 当たった! 剣を横に振り切る。


 赤黒い血がパッと飛び散り、花夏の服にはねる。


 魔物が着地点でドサ! と音を出した。


 横倒しになり、切りつけられた白い体から、血がどくどくと流れ出た。


 すかさず花夏は魔物に駆け寄り、右足で魔物の首を踏みつけ、赤い目目指して一気に剣を突き刺した。


 ダン! という音と同時に、骨ごと肉を切りつける嫌な感覚が襲ってきた。


「キャウゥゥン……!」


 犬の悲鳴のような声が鳴り響く。


 そして、踏んでいた魔物の肉体が消え失せた。

 

「……勝った……!」


 ふう、と息を吐いた。夢中で倒したが、気が付くと足が震えていた。その足元を見ると、残されたのは赤い魔石の破片。

 成程、と思う。これをギルドに持って行く事で、魔物を倒したという証明になるのだろうか。花夏は石を拾い上げようとした。


 すると。


 背後から、ガサ! と別の音がした。


(まさかもう1匹!?)


 花夏は慌てて剣を構え直し、先ほど魔物が現れた木の陰の方を見る。何かが、来る。


 木に、人の手がかかった。


(人……!?)


 様子を伺う。どんな人間か分からないので、剣は構えたままだ。


――出来れば人は切りたくない。


 魔物の時には出なかった冷や汗が背中を伝う。木陰から、フードを被った男が出てきた。フードが枝に引っかかったのか、ガサガサ言いながら「取れねえ」とぶつくさ言いながら引っ張っていて、顔が言見えない。どうやら、花夏には気付いていないようだ。


 花夏が一歩下がる。すると、小枝を踏んでしまいパキ、と音がした。


(しまった)


 男がこちらに気付いたのか、動きを止めた。汗がじんわりと滲む。


 男が、強引にフードを引っ張り、フードを取った。赤い髪が流れるように出てきた。まだ若い、端正な顔。印象的なのは、その緑の瞳だった。吸い込まれそうな深い緑色。男が花夏を見た。目が合った。



 その瞬間。



 周りの音が全て消えた。


 訪れたのは、完全なる静寂。


 本来あるべき自然の音も、川のせせらぎの音も聞こえない。耳がおかしくなってしまったのだろうか。


 男から目を逸らす事が出来ない。男もまた、花夏の事を驚いたように見ている。


 まるで、世界がここにしかないような、感覚。

 

 全てが、なぎのように静まり返る。視線と視線が、絡んで動けない。



 どれぐらいそうしていただろうか。



 口の中がカラカラになり、唾を飲み込んだ。


 すると、途端に音という音が戻ってきて、花夏は呪縛から解けたかのようにふらついてもう一歩下がった。


 先程拾おうとしていた魔石が足に当たる。


 花夏が魔石をチラと見た。男もその目線を追うように花夏の足元を見る。


 見て、驚愕の表情になった。


「俺の晩飯代が……」

「……はい?」



 それが、花夏とアスランの出会いだった。


戦闘シーン、難しかったですがいかがでしたでしょうか?


次回は、花夏とアスランが…!!


です。日曜日は更新お休みなので、明後日(2020/9/28)更新予定です〜

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