餌付け ☆
「頼む! この通り!」
赤と金が混じったような不思議な髪の色をした男に拝まれた。何という色だろうか。そう、赤銅色だ。磨き上げた銅のようなきれいな色をしている。
「頼むって、何が」
シュウと同じくらいか、もう少し背が高いかもしれないが、シュウよりもほっそりとしていて近くにいてもあまり威圧感はない。なによりも目をつくのが、ついまじまじと見てしまう程の恐ろしく整った顔だ。切れ長の綺麗な目。睫毛が長い。鼻はスッとして、肌は日に焼けているが滑らかで綺麗だ。薄い唇がまたその顔の造形にぴったりで、美形過ぎて、本当に生きてるんだろうか?と思える程だ。同じ人間とは思えない。
「だから、その魔物の石だよ、それ」
花夏が拾い上げた魔石を指さす。そういえば、晩飯代とか言っていなかっただろうか。
「これ?」
指で摘まんで見せる。男が、焦った様子でうんうんと頷いている。何と言うか、今まで落ち着いた大人の男性とばかり接していたからか、この男のリアクションひとつひとつがとても幼く見える。そういえば、顔にも何となく幼さが残っている。まだかなり若いのかもしれない。
「これがどうしたの」
多分欲しいのだとは推測出来たが、そこそこ怖い思いをして倒した魔物だ。見知らぬ男にどうぞと簡単に渡せるものではない。
「譲ってくれないか! この通り!」
イケメンが自分に縋るように手を合わせて頼み込んできてる現状はもしかしたらラッキーな状況なのかもしれないが、花夏は若干イライラしていた。
「だから、何で私があなたにこれを譲らないといけないの」
一国の宰相や国の一機関の隊長を務めるような大人の男性と比較してしまうのは可哀想ではあるが、シュウやサルタスだったら今頃きちんと理由を説明出来ているだろう事が、この男には出来ていない。つまり、先程から話が全然進んでいない。
「それは俺がギルドで受けた依頼なんだ」
「それで? それがどうしてあなたにこれを譲る話になるの?」
「ぐっ……」
男が言葉に詰まった。それはそうだろう、正当性は全くない主張だ。顎に手を当て、何かを一所懸命考えている。
何かを考えついたらしい。目が真剣だった。
「俺は金がない」
「それで?」
「腹が減っている」
「だから?」
「それがないと飯が食えない」
子供か? 今度は感情論に訴えたつもりらしいが、だからどうした、である。花夏もお金が欲しい。その為に発光石の採取の依頼を受けたくらいだ。
(確かにちょっと可哀想ではあるけれど……)
どうしようか、と考えていた時。花夏に期待の目を向けている男の腹が、ぐうううう、と鳴った。
「……わざとじゃないぞ」
男があくまでも真剣な表情のまま言った。拝んだ手はそのままだ。
わざとお腹を鳴らせるか。ツッコミたかったが、名前も知らない相手にそんな事ができる訳もなく。
このままだと拉致があかない。どうもかなりお腹が空いているようなので、相手もそう簡単には諦めそうにない。
(何か折衷案折衷案……)
思いついた。だがまずは確認だ。
「その依頼っていくらなの?」
「えーと、10万ルカだったかな」
滅茶苦茶いい。魔石がひとつにつき500ルカだから、重い石を20個持って帰ってとんとんだ。そもそもそんなに採取出来るかも分からない。
であれば。
「依頼を受けたのはあなた。魔物を倒したのは私。わかるよね?」
子供に言い聞かせるように説明する。男は素直にうんうん頷いている。大丈夫だろうか、この人。
「私が受けたギルドの依頼は、発光石の採取なの。発光石を夜にふたりで集める。それをあなたが街まで運ぶ。これもわかる?」
「ああ」
ぐうう、とまたお腹が鳴っている。ちょっと可哀想になってきた。
「そうしたら、全部の報酬はふたりで折半、半分こ。魔物の石は、私が持っていく。発光石はあなたが持っていく。これならどう?」
正直、重い石を持って何時間も歩くのは辛い。魔物の報酬がすでに折半ならば、あとは発光石の数を増やせば全体の金額の分母が増える。これなら損はしない。
「手伝ったらギルドで半分こってことか?」
男が、ちょっと不安げな顔をして確認してくる。花夏は思い至った。ハルナやシュウやサルタスは、きちんとした教育を受けた貴族なのだ。王宮勤めが出来るくらいの知識がある人たちだ。でも、貴族以外、いわゆる平民の人たちはどうなのだろう。教育機関はどうなっているのか知らないが、恐らく貴族への教育より環境的に劣るであろうことは想像がつく。
花夏にしても、日本の教育をきっちりと受けてきたからこそ色々な事が分かる。
だが、そのベースがなかったら?
花夏は、自分の男に対する態度がもしかしたら厳しすぎたのかも、と反省した。
「うん、そういう事だよ」
少し優しめに言ってみた。すると、男の表情がぱあっと明るくなった。なんて分かりやすい。
「じゃあ、そうしよう」
またぐううう、と男の腹が鳴った。男が、自分の腹を見て、その後花夏を見て、少し恥ずかしそうに笑いかけた。
「その前に、なんか食べ物持ってる?」
サルタスの野営セットのひとつ、手網。
それを使って、男が魚をあっという間に4匹捕まえた。ニジマスのような魚だ。
魔物を退治する任務を引き受けるくらいだ。体を使う事は得意なのかもしれない。
「焼けばいいんだな?」
男はそう言うと、魚を丸ごと火に投げ入れようとした。
「ちょちょちょちょっと待って! 何やってんの!」
慌てて花夏が男を止める。男はキョトンとしている。顔がいいだけに、むかつく。
「なんか違うか?」
「違う」
「何が違う?」
「内臓取ってないし」
「内臓……」
考え込んでいる。本気だろうか。
「野営はしたことないの?」
あまり経験がないのなら、理解できるが。
「いや、国を出てもう5年くらい経つけど、よくしてるぞ」
「5年野営しててこのレベル……」
つい口からついて出てしまった。男が少し悲しそうな顔をしている。
「料理は苦手なんだ。何を作っても不味くなる」
まあ、採った魚をそのまま焚き火に投げ入れようとするくらいだ。それはそうだろう。
「今まで誰も教えてくれなかったの?」
花夏が小刀で魚の腹に刃を入れ、指を入れて腹わたを取り出し川の水でじゃぶじゃぶ洗う。それを見て、男はうえっという顔をしていた。
「俺は基本ひとりだ」
「ふうん」
簡単に返事をして、焚き火用に集めた枝の中から細めの枝を選び、魚の尻尾近くとエラにブスッと刺す。焚き火の外側の地面に枝を刺した。川魚なので本当は塩が欲しいところだが、仕方ない。お金が手に入ったら買おう、と決めた。
焚き火を囲んで対面に座り、しばし待つ。パチパチ、と魚の表面が音を立てて焼けはじめたが、まだまだだ。
「お前、名前は?」
男は体育座りをして、膝の上に両腕を組み顎を乗せている。仕草ひとつひとつが子供っぽいが、少し新鮮でもある。
「カナツ。あなたは?」
「俺はアスラン。カナツって変わった名前だな。どこから来たんだ?」
何と答えようか。正直そこまで考えていなかった。
「えーと、北から来た」
間違ってはいない。
「北? どの辺だ?」
花夏が魚の反対の面に向ける。大分焼けてきた。
「ラーマナ王国から」
その程度に留めておく。この情けない程お腹を空かせた男が追手のようには見えないが、必要以上の情報を与える義務もない。
「アスランは? どこから来たの?」
「俺は、ここからずっと南のタザールって国の出身だ」
タザール。地図で見たような見てないような。どこかで大陸の地図を見かけたら探してみようか、と考えた。
パチパチ、と炎の音が小さくする。無言になってしまった。気まずい。というか、さっきからアスランの腹の音が低音でずっと聞こえてくる。居た堪れない。
「アスランはどうしてリュシカに来たの?」
早く焼いてあげたいが、生焼けはいただけない。焼けるまで何とか気を逸らしてあげよう。
「何となく」
「何となく?」
アスランを見ると、緑色の瞳は魚に釘付けになっている。腹を空かした犬のようで、哀れだ。
花夏は質問を変えてみる。
「どうして旅をしてるの?」
アスランは魚を見つめたまま、答えた。
「俺は一箇所にいれないんだ」
「どういう事?」
んん、と少し困ったように言い淀む。聞かない方が良かっただろうか。
「……信じれないかもしれないけどさ」
「うん?」
「俺と一緒にいると、段々周りがおかしくなっていくんだ」
「おかしくなる?」
どういう事だろう。アスランは相変わらず魚を見ている。いい感じに脂が垂れてきた。そろそろいけるかもしれない。
「ああ、みんなちょっとずつ。魔法の制御が効かなかったり、魔石がうまく調整できなかったりしてさ。だから、一箇所には3ヶ月くらいしかいれない」
「3ヶ月……だけ?」
それが本当だとしたら、何と過酷な生活だろう。それだと、人と関わる事も出来ないのでは。
「そう、それぐらいが限度だな」
花夏が、「はい」と焼けた魚を手渡す。アスランが涎を垂らしそうな顔で、花夏の手に触れないようそっと枝の端を摘んだ。
「ありがと」
滅茶苦茶整った顔で子供みたいな笑みで言われてしまい、流石に花夏もドキッとしてしまった。あち、あち、と言いながらはふはふ魚にかぶりついた。
これは、卑怯な程かわいい。
幸せそうな顔をして、アスランがようやくこちらを見た。ようやく人の顔を見る余裕が出来たらしい。
「お前さ、いい奴そうだから言っとくけど、俺には触るなよ」
「どういう事?」
別に触るつもりはないが。
アスランが大きく口を開けて次の一口を口に入れ、またはふはふしている。表情が緩んでいる。口の物を飲み込むのを待つ。これまた形のいい喉仏が嚥下の動作で動く。
「程度によるけど、触ると魔法が暴走したり、気を失ったりするみたいで」
「程度?」
あっという間に1匹目を平らげてしまった。花夏は焼けている2匹目を差し出す。アスランは嬉しそうにそれを受け取って、手に持っていた1匹目の枝を焚き火に放り込んだ。骨がない。まさか食べてしまったのだろうか。
「握手くらいなら大した事はないんだけどさ。前にちょっと溜まっちゃってそういう店に行ったら、相手の女の人の魔法が発火能力だったみたいで部屋は燃えだすし気絶するしで、急いで裸のまま外に連れ出して……てあれ? どうした?」
花夏は自分の顔が真っ赤になっているのが、鏡を見なくても分かった。
まあ、若い男性だ。そういう事もあるだろう。だが、それを初対面の若い女性に向かって、何でもない事のように話すのは如何なものだろうか。
「……そういう話は、若い女性にしちゃダメだよ」
人とあまり深い付き合いをしてこなかったのなら、もしかしたら分かってないのかもしれない。
「そうなのか? そりゃ悪かった」
魚を貪りながらあっさりと言う。多分、あまり分かってはいなそうだ。
「まあ、だからそれ以来一応始める前に何の魔法を使えるのか聞くようにしてる」
話を続けている。やはり分かってない。
「アスラン、だからね」
「俺まだ貴族って奴とは会った事がないんだけど、魔力大きいんだろ? その辺の奴らだと始めてすぐ気を失うけど貴族なら少しは持つのかな」
こいつ、花夏を男友達か何かと勘違いしてないか? イラッとするくらい無邪気だ。
花夏が低い声で言った。
「そこまでにしないと、3匹目あげないよ」
ビク、としてアスランが黙った。今まさに食べ頃の3匹目と花夏とを、チラチラ見比べている。
恐る恐るといった風で花夏に声をかけた。
「悪い。俺さ、なかなかこういう風に人と話をする機会がなくて」
楽しくてつい、としょぼくれた。彼なりにはしゃいでいたらしい。その話の内容はともあれ。
しょぼくれたまま、2匹目の魚の骨をしゃぶっている。ガリ、と音がした。花夏が慌てて止める。やはりこいつ、骨を食べていた。
「こらこらこら、骨は食べちゃダメ」
「結構いけるけど」
「喉に刺さるからダメ。もう少し小さい魚のならいいけどこれはダメ」
「でも……」
名残惜しそうに骨を見ている。本当に子供だ。
「ほら、3匹目あげるからその骨捨てて」
「ありがと」
嬉しそうに3匹目を受け取る。チラ、花夏を見る。
「お前は食べないのか?」
まさか、4匹目も狙ってるのだろうか。
ただ、この世界に来てからというもの朝食と早めの夕食の2食にすっかり慣れてしまい、昼に何か食べたいと思わなくなってしまったのは事実だ。従って、正直あまりいらない。
「いいよ、食べて」
4匹目もそろそろいい感じだ。
「いや、別に食べたいから聞いた訳じゃなくて、お前さっきから一口も食べてないから食べればいいのにって思って」
3匹目をはふはふ齧りながら、人の良さそうな事を言った。もしかしたら、本当にとても素直な人なのかもしれない。見た目とのギャップが激しすぎるが。
「朝しっかり食べてきたから大丈夫だよ。夕方にちゃんと食べるから、アスランが食べていいよ」
少しだけ優しい口調になった。
「本当にいいの? いや、くれるなら食べるけど」
やはり余程空腹だったようだ。実に美味しそうに3匹目に齧り付いている。歯並びがすごく綺麗だ。これなら確かに骨をバリバリ噛んでも大丈夫なのかもしれない。
咀嚼した後、嚥下する。一連の流れが綺麗だった。食べ方が綺麗なのはいい事だと思う。
「食べ方綺麗だね」
「そうか?」
「うん。いいよね、それ」
アスランが少し驚いた顔をして花夏を見返した。
「俺、顔以外で褒められたの初めてかも」
「え? 初めて?」
「ああ。嬉しいもんだな」
そう言いながら、ぱくっと尻尾の部分に齧りついた。どうも小骨は全て食べてしまっているようで、頭と尻尾を残して綺麗に骨だけになった。
というか、やはり顔は褒められまくっているらしい。まあこれだけ整った顔をしていれば仕方ないのかもしれないが、顔以外褒められた事がないとは、なんとも哀しい。
3匹目も食べ終わり、骨と枝を焚き火に放り込んだのを見て、4匹目を渡す。
魚を受け取る手は、随分とゴツゴツしている。腰を見ると帯剣しているので、そのせいだろうか。花夏の手も大分固くなってしまったので、そうなのかもしれない。
「カナツは何でひとりでいるんだ?」
アスランは、今まで自分の事しか話していない事に気が付いたらしい。突然話題を変えてきた。
「南に向かってるんだ」
「南になんかあるのか?」
「暖かいから」
「暖かいとどうして行くんだ?」
どう話したらいいものか分からない。でも、多分恐らくアスランはとても正直にアスラン自身の事を話してくれた。自分だけ隠すのには少し罪悪感がある。アスランは魚を齧りながらじっと花夏を見ている。この顔にあまり見つめられると、正直落ち着かない。迷う。
少しなら大丈夫だろう、そう思って話し始めた。
「追われてるから、逃げてる」
「追われてる? 何で?」
「分からない」
「分からないのに追われてんのか? そりゃ困るな」
何ともまっすぐな感想に、花夏はつい笑ってしまった。確かに困る。困っている。その通りだ。
「ふふ、アスランて面白いね」
バクバク4匹目も食べているその顔は真剣そのものだが、先程からじっと見られ続けている。先程は魚しか見てなかったので、対象をじっと見つめる癖があるのかもしれない。この顔でそれをしてしまうと、あちこちからいらぬ誤解を招きそうだが、今まで大丈夫だったのだろうか。
「カナツ、笑った方がいいぞ」
「は?」
「さっきまでずっとしかめっ面だったから初めて笑った顔見たけど、その方がずっと可愛い」
真面目な顔をして魚を食べながらそんな事を言われても、どう反応していいのか迷う。
だが、恐らく、アスランに他意はない。そんな気がする。ここは素直に受け止めておくべきだろう。
「ありがと」
「どういたしまして」
お互い、何となく微笑み合う。微妙な空気が流れる。パチパチという焚き火の音に、鳥の鳴く声、川のせせらぎの音。時折風が木の葉を揺らして涼やかな音を立てる。
なんとも穏やかだ。もぐもぐと4匹目も食べ終えようとしているアスランを、静かに眺める。
そして、ふと我に返った。
花夏が提案した内容だと、ここで今日会ったばかりの人とふたりだけで一夜を共に過ごすことになる。この間まで散々シュウやサルタスに警戒心が足りないと注意されていて、この状況はあまりよくないのではないか? 手紙に書いたりなんかしたら、激しく怒られそうだ。
ただ、相手はあまり触られるのは好きではないようだ。お金は欲しいし、石の運搬も出来ればお願いしたい。
(よし、手紙には書くのをやめよう)
何もなくとも、確実にシュウ辺りから小言が来るだろう。それは是非とも避けたい。
そんな事を考えている間に、アスランが4匹目も食べ終えた。骨と枝を焚き火に放り込み、立ち上がって川で手を洗い始めた。
そういえば花夏の手も魚を触って汚れていた。
アスランから少し離れたところで、同じように手を洗った。水はそこそこ冷たい。山の家の傍の小川程ではなかったが、入るとなるとかなり冷たく感じそうだった。
洗い終わり、空を見上げる。まだ夕方にはなっていないが、段々と暗くなる時間だろうか。狩猟をしようと思っていたが、夕飯の支度の時間を考えると、もうあまりのんびりしている時間がなくなってしまったかもしれない。
まあ、偶然ではあるが魔物の報酬が半分手に入る事になったので、無理に獲物を狩らなくてもいいだろう。
そんな事を思いながらではさてどうしようかと振り返ると、思ったよりも近くにアスランが立っていてびっくりした。30センチくらいの距離しかない。
「な、なに」
ここまで近いと、流石にやや威圧感がある。すぐ上から見下ろされて、つい動揺してしまった。
「いや、ずっと上見てるから、何があるんだろうと思って」
こちらは動揺のどの字もない涼やかな顔だ。花夏が上を見てるので、気になってすぐ後ろで同じように見上げていたらしい。
なんとも悪意のない滅茶苦茶整った顔に覗き込まれて、目のやり場に困る。そして、気付いた。
――こいつ天然だ。
何となく先程からそんな気はしていたが、多分間違いない。純粋というか無自覚というか距離感がおかしいというか人懐っこいというか。
「アスランて犬みたい」
「どういう事?」
「そのまんまの意味」
「よく分からない」
「犬知らない?」
「あんまり近づいた事ない」
「そっか」
風が吹いて、アスランの赤い髪が花夏の顔に当たった。
「ぷは」
柔らかい。そして近い。
「あ、ごめん」
アスランが一歩下がった。ふと、シュウならここでもう一歩踏み出しただろうな、と思って懐かしくなってつい笑ってしまった。
アスランが不思議そうに見る。
「どうした?」
「ううん、ごめん、思い出し笑いみたいなもの」
アスランが怪訝な顔をするが、こればかりは説明しても詮無いことだ。
「何でもない」
「そうか」
あえて深掘りしてこない。やはり根がいい人なのだろう。
「なあカナツ」
「なに?」
アスランが真面目な顔で質問してきた。
「夕飯は何作るんだ?」
よく見ると、少しワクワクしているようだ。
(今、食べたばっかだよ……)
花夏は、飢えた子犬を餌付けし、懐かれたかのような感覚を覚えたのだった。
次回は『星の道』、花夏とアスランの不思議な繋がりとは。
明日(2020/9/28」更新します。お楽しみに!




