第5話 メルヘムの次の作戦
メルヘムは行商人になって、サタナキア魔王国に姿を現す。サタナキアを動かしてバシュラール魔王国と戦乱を起こす作戦を立てている。
サタナキア魔王国とバシュラール魔王国が争えば、2国に挟まれるヴァルハラ王国は戦場と化し、内乱も起こるため無政府状態になるだろう。
そこへコール神教国が救いの手を差し伸べれば、ヴァルハラ王国の民はコール神を信仰せざるを得なくなる。ヴァルハラ王国はコール神であるキーシリングの手に転がり込むことになる。
メルヘムは通りかかった村で試してみることにする。
「こんにちわ、今年は豊作のようですね。」「ああ、まあまあだよ。行商人かい。」
「はい、バシュラール魔王国から来ました。」「そうかい、バシュラール魔王国は良い所らしいね。」
「ええ、みんな自慢をしていますよ。」「そうかい。自信があるんだね。」
「サタナキア魔王国の民がかわいそうだと言っていますよ。」「そりゃあ、サタナキア様は何もしてくれないからね。代わりに何の縛りもない自由さ。」
「サタナキア様のことも言っていたな。ロック様と引き分けて大したことがないと噂になってました。」「あんた、バシュラール魔王国で嫌な目でもあったのかい。」
「どうしてですか。」「さっきからバシュラール魔王国の人々を悪く言っているからさ。」
「バシュラール魔王国の人々がサタナキア様を悪く言っているのですよ。」「ロック様と引き分けたのは確かだし、他国の人がサタナキア様のことを言ってくれることはうれしいよ。」
「心の中でバカにしちるのかもしれないのですよ。」「いいじゃないの。サタナキア様は強すぎて、他国のものは話題に出そうともしないのだから、ありがたいことだよ。」
メルヘムは意表を突かれる。村人を怒らせるために話していたが、村人は感謝している。村人の反応はメルヘムの理解を越えていた。
クリストハルトは教皇アウグストに手紙を送っている。手紙には、「国が魔王ロックの言う通りに動いており、セベク神をないがしろにしている。私は神の啓示を受けて国を変える。
セベク神のために力を貸してほしい。」旨書かれている。手紙を受け取ったアウグストは、大いに悩む。自分はバシュラール魔王国の宰相カールの手を取った身である。
クリストハルトは神の啓示を受けたというが、本当なら教皇として助けなければならない。しかし、嘘の可能性も捨てきれない。
アウグストはクリストハルトから手紙を受け取ったことを隠す。そして、黙って様子を見ることにする。
アダルベルト領では、クリストハルトの元に貴族の軍勢が集結しつつある。クリストハルトは、貴族たちに語りかける。
「私たちはセベク神の軍である。ヴァルハラ王国を魔王の手から解放できるのは我々だけである。勝利は約束されている。」「「「おーっ」」」「「「神の軍だー」」」
貴族たちと兵たちは熱に浮かれたように叫ぶ。クリストハルトの妻アルマが心配そうに言う。
「戦いなど挑んで勝てるのですか。負ければ背教者の烙印を押されて終わりですよ。」「何を言っている。私は神の啓示を受けたんだぞ。」
「メルヘムとか言う宝石商に騙されたのではないのですか。」「メルヘムは私に神の言葉を気づかせてくれたのだ。」
「疑わないのですか。」「何を疑えというのだ。私は神の啓示を聞いたのだぞ。」
「そうですか。もう何も言うことはありません。」「私は神の軍団を率いるのだ。」
アルマは黙って部屋に帰って行く。
バシュラール魔王国の情報局員がアダルベルト領の街で消息を絶ったことから、ディルクは新たに情報局員を送り込む。
ヴァルハラ王国の情報局長のケンゴは1組の情報局員がアダルベルト領の街で消えたため、残りの2組をアダルベルト領の街へ送り込む。
街には各地の貴族の私兵が歩いている。アダルベルト領に他の貴族の私兵がいるのは普通ではない。貴族たちが集まって来ていることになる。2組の情報局員は原因を調査することにする。
調査していた情報局員は、クリストハルトが神の啓示を受けたという噂を知る。啓示の内容が「魔王の傀儡の国を倒せ」と言ことからアダルベルト領に貴族が集まるのは蜂起することになる。
調査員はケンゴに報告する。情報局長のケンゴはタダツグとトウヤに知らせる。
「タダツグ、トウヤ、大変なことになったぞ。」「慌ててどうした。」
「アダルベルト領に貴族が集まっている。」「どうして集まるんだ。」
「領主のクリストハルト・ド・アダルベルトが神の啓示を受けたと言っているらしい。」「神の啓示?」
「魔候の傀儡の国を倒せだということだ。」「貴族たちが反乱を起こすということか。」
「規模は調査させている。」「教皇に警告をしてもらおう。」「そうだな。反逆するとセベク神を裏切ることになると発表してもらおう。」
「国王の僕が教皇に話すよ。」
タダツグとトウヤは警告を発することで軍の蜂起をやめさせようと考える。




