トレジャーハント
「ゴールド・バグ〈Gold-Bug 〉だな!」
汐のプレゼン噴火を聞き終えた、
チーフ脚本家のガミさん(橋上)は打てば響く調子で応えた。
<我が意を得たり!>
深ーく、頷いて見せるDJアイドル。
乙骨Pは、
ADに買いにやらせた、
マーメイドカフェのブラック珈琲〈のっぽサイズ〉を
つまらなさそうな顔で飲んでいた♨
腕時計をチラ見するマネージャー。
スケジュール時間の超過を気にしつつも、
汐と脚本家チーフとのやり取りに、
現状、水を差すべきではないと判断。
凸レン撮影現場との軋轢 板挟みに ━ 立ち向かう覚悟を決めた!
もっともらしい言い訳を脳内創作しながら・・カフェラテをグビと飲む☕
┃ここにきて
七尾のマネージメントは、
洞察主観が脈動を開始。
自我確立のさなかにあり、
汐にとって、
なくてはならない存在へと成長してきていた┃
汐は、MYバッグから、
付箋数枚の貼られた
黒表紙の文庫本を引っ張り出し、
目的のページを開き、瞳を輝かせる。
「この短編小説は〈遥か以前に〉著作権切れしているから、
版権使用料はかからない。
熟れている当翻訳版を種本にすればイケる。
・・描写もセリフも冴えているし」
「ふん!」鼻を鳴らす乙骨P。
ガミさんは、
穏やかな表情と口調でもって、
汐に説いてゆく。
「うむ・・著作権に対しては確かに問題はない。
ただねェ、翻訳権というのも、存在するんだよ。
調べてみんことにはわからんが、
訳文をそのまんま放送に置き換えるのは
難しいと考えるべきだ」
━━ 食いさがる汐。
「英語版の原本を脚本家チームで翻訳すれば可能では?
ガミさん、英文科出身なんでしょう?
ねェお願いよ、なんとかして」
汐はシャンプーするみたく、
両手を頭上でワサワサ動かした。
「もーう、イメージびんびん状態なの!
私の頭の中で、今にも踊り出しそう。
いいドラマにしてみせるから。約束する。」
乙骨Pが、
ひねり球を投げてきた。
「汐坊よ!
作品の核心となる暗号の問題は、どーするんだ?
(映像の伴わない)
音声ドラマってことを忘れてやしないか。
ムリ筋な企画は流局させて、
いっそのこと、
『紅 天女』でも目指したらどうだい?」
Pの皮肉をものともせず、
汐は、会心の笑みを放散させた。
「YouTubeと連動させればOK。
ラジオ離れを食い止めようと、
いま、流行りでしょう?
それを利用しない手はない。
・・アクセス数もそこそこ稼げると思う」
┃Pとガミさんは、
盲点を突かれたような表情になり、
しだいに・・腑落ちしていった ┃
乙骨は、
ラジオというものは<音声勝負>という
堅い信念を持っており、
過去・現在・そして未来も揺らぐことはないと思われる。
営業部門からの
「『哉カナ』はYouTube放送も実施して、
(有料メンバーシップ制を導入)
コアなリスナーを囲い込み、
もっともっと収益を上げるべき」
執拗な要請を、
番組の実績を盾に、
拒絶し続けてきた経緯がある。
しかし・・
汐案は的を射ていると直感!
動画サイトと連動させるに足る、
大義名分を内包していた。
━━ アイキャッチする、Pとガミさん。
「この企画はイケるかもしれんゾ⚡」
チーフ脚本家はスマホのメモ機能を呼び出し、
DJアイドルにクエスチョン
━ 「登場人物は何人だったっけ、汐坊?」
指を三本立てるDJ
━「主要人物は僅か三名。
<原作では全員男性のところを、
狂言廻しの役どころだけ、
女性に変更して欲しいの!>
他・・犬が一頭。」
「おっこっちゃん。
年末スペシャルのために積み立てた予算は、
かなりの割合で動画作成に回せそうだ」とガミさん。
Pが汐に尋ねる
━ 「希望する共演者はいるのか?
早いとこブッキングしなけりゃ間に合わん」
DJは、否定首をプルプル振った。
「私一人で演じるから、誰もいらない。
もち、犬の吼える声も引き受ける」と言うなり、
文庫本に目をマグネットさせ ━ 朗読アクトを始めた。
(ガミさんはすかさずスマホにて録音)
┃汐は、
トランス変性するや・・
三人三様(女&男二名)の声に、
原作の人格を付与し、輪郭立たせ、演じ分けてみせた。
聴くものに、
〈狂言廻し〉
〈主人公〉
〈召使い〉
それぞれの差異が、明瞭に伝わってくる。
おまけに、犬の吼え声、何通りかまでを披露した┃
\汐マジックの発動 /に☆
呆気にとられてしまう、
乙骨Pとガミさん、七尾マネ。




