チーム里見|最終章
┃ just when! (=) そのときである!
邸宅内を揺るがすほど、
非常ベルの音が、
けたたましく、耳を圧するほどに、鳴り響いた♪┃
=͟͟͞͞ =Bad=͟͟͞͞ Vibration=͟͟͞͞ =
サユリは・・
冷たくなった心臓を制御しつつ、
一目散に書斎へ、ターン・ダッシュ!
やにわに、
書斎ドアが内側に引かれた!
瞬発を利かせ、
ビュンと飛び出した天田氏 と サユリは正面衝突した。
\ドタン!バタン!/
二人共 <ドアの向こう側 と こちら側に> 派手に倒れ込んだ。
家政婦ときたら・・ワケも判らず・・
パニくって・・ひたすら・・モブ化している!
天田氏は素早くサユリを抱き起し、
血走った目を剥き、叫んだ。
「やりおったんじゃ!
━ |渦巻୨୧ 凶事|の畜生め ━
孫への盲点襲撃を!
桶狭間を・・仕掛けて来おったんじゃ!」
つい、今しがた、
強頭痛への転換∞突き上げを食らった天田氏は、
痛みで軋む頭を両腕で押さえ、
吐き気に抗うように、
食いしばった歯のあいだから、言葉を絞り出した。
「では、この非常ベルは、
息子さん宅のエマージェンシーを知らせるものなんですね?」
「そうじゃ!火災警報じゃ!ワシは行かねばならん!」
・・頭を抱えながら、言葉を絞り出した。
━ 消防車のサイレンの音が連なり、迫って来る。
「ダメです!私が行きます!
天田さんは、ご自宅で待機していてください!」
「手を放しなさい!
ワシはどうなってもよい。
孫にだけは、指一本触れさせてなるものか!」
鬼神顔をした依頼人は、
渦巻状に歪んだサユリの視覚像へ、
唸るように言葉を放った。
「絶対に行かせません!」サユリは縋りつく。
「えり奈さんも・・言っていたではないか。
守る一方ではなく、
土壇場では、
┃攻めに転じる┃ことも必要だと!」
日頃水泳で鍛えている天田氏は、
痩身の見かけを裏切る高い身体能力を発揮!
強引にサユリを振り切り、
瞬く間に、玄関を飛び出して行った。
・・負けん気を発動したサユリは、
ギリッギリッと歯を食いしばって、 後を追う!
自宅を飛び出して行った天田氏を追いかけるべく、
近くにパークしていたBMWのドライバーは、車を発進させた。
天田氏の走路を塞ぐよう、前方へ急左折 ━ ブレーキをかける。
両の扉から姿を見せた、
┃里見と南平は┃
興奮の坩堝にある天田氏を取り押さえた。
一向に抵抗を止めない御老体の鳩尾ヘ、
里見所長は・・一発の<当て身>を放つ。
ズサッ!
その場に倒れ込んだ・・依頼人。
里見は、
BMWのキーを南平に放り、
アフターケアをサユリたちに任せ、
矢のように、
三軒隣の火事場へと駆けて行った。
━━☽━━
自宅の寝室。
ベッドで目を覚ました天田氏。
彼を見つめる、お孫さんと母親、
そして サユリと南平、
・・さらに煤だらけの里見所長。
「よかったね、爺ィーじ!」
バスタオルで頭をゴシゴシ拭いながら、
孫の海里くんは祖父に呼びかけた。
長男の嫁が言葉を発した。
「我が家は、
原因不明の出火に襲われたのです!
(主人は事後処理中で、
消防署の方と現場におります)
買い物から戻ったら、
家は煙を上げ、燃え盛っていました。
息子を救おうにも、火勢は強く、足がすくんで動けない・・
こちらの里見さんが、
危険を顧みずに、
この子を・・海里・・を、
火事場から救い出して下さったのです」
「お孫さんは、実に賢い」
里見は感心した様子で言った。
「水を張った浴槽に潜水しつつ、
浴室前で・・
おもちゃのパトカーのサイレンを鳴らし続けてくれていました♪
お陰で、探す手間が省けましたよ・・」
天田依頼人は瞑目すると、
一筋の涙を流し、深くうなずいた。
「<桂馬跳び>現わる・・ですな。
ありがとう里見さん。
お陰さまで
キレイさっぱり<頭痛>と<渦巻イメージ>は失せました。
南平さん、それからサユリさんにも、礼を言います。
— 来週の日曜日は、
海里の誕生日も兼ねた、
素敵なパーティーを拙宅で開きましょう —」
「やったー!!」
海里くんは、
バスタオルを宙高く投げ飛ばし、
諸手を挙げて、ガッツポーズ。
サユリは・・
里見のバックアップ体制と、
職務への真摯さ、
プラスして、ダンディズムを再認識していた。
MY所長=MYヒーロー=里見恭平バンザイ!
本件をベースに、
ミステリーの好短編を、
モノに出来そうな予感到来━byサユリ。
(・・だいぶ後の事・・
里見の手により、
天田邸の書斎を含む三か所に、
盗聴器が仕掛けられていたのを、
南平から聞かされた、サユリ助手は、
その周到さ/非情さ/に驚きを禁じ得なかった!)
━━☾━━
\待望の日曜日がやって来た/
ところが・・
残念ことに・・
・・天田家のパーティーは、
突如 中止となった。
—▼—
名古屋の自宅にて・・
松岡占い家は、
三角テーブルに着き、
杜仲茶を飲み、
<水晶球>を眺めていた。
ふだんは透明のそれが、
┃真っ黒に変化していた!┃
卜者 えり奈は、
・・無常を滲ませ・・
・・首を左右に振り・・
・・天田氏の冥福を祈った!
—▼—
|パーティーから一転 |
斎場で《 告別式》 が執り行われることになった。
故人は ┃ 天田・R・浬 ┃氏 (享年・・六✖) 。
ブラックスーツを着用し喪章をつけた里見。
黒ネクタイ・スーツ姿の南平は、
泣き腫らす黒衣のサユリを抱きかかえるようにしていた。
三名は順番に、
遺影へと手を合わせ、お焼香をしてゆく。
「なんで?
ど━して?
納得いかないよ!
<火炎〈Flame〉の幻視>を脱したと思ったのにィ・・
大好きなプールで┃心臓麻痺┃を起こすなんて。
皮肉にも程があるじゃないの。
この世に神様は居ないワケ?・・おかしいよ・・」
参列者席に着いたサユリは、
溢れ出る涙をハンカチで拭い、
悔恨を噴出させ、
人目を憚らずに声を上げた。
・・肩を抱き、慰める南平。
サユリの悲しみは、
参列者一同にも伝播していき、
そこかしこから啜り泣きが漏れ出した(˃̣̣̥⌓˂̣̣̥)
(お葬式あるある ですな)。
斎場後方にて・・里見は、
嘗ての(警視庁時代)上司である、
SP達にガードされた本部長と、
沈痛な面持ちで会話をしていた。
列席者一同は、
最期のお別れ《納めの式》にて、
僧侶の読経を聞いたのち、
火葬に立ち会った。
台車式火葬炉へ
天田氏の遺体が横たわった〈お棺〉を納めていく。
火葬技師により炉に ━ 火入れが行われる。
参列者席には、
火葬の終了を待つ大勢の中に、
チーム里見の三名の姿もうかがえた。
・・里見と彼氏に挟まれる形で席に腰かけ、
とめどなく涙を溢れせているサユリ。
彼女は、未だ、現実を受け入れられずに、
小声で、ぶつぶつ、疑問符を投げかけていた。
南平は・・
彼女の内に潜む激しいパッションを思い知らされた。
クリエイターを志すだけのことはある・・と思った。
知性だけで小説は書けない!
なにか<熱い柱>を必要とするのだ・・表現ってやつは。
南平の観念は
⌠ 不意にホテル時代の思い出へ誘い込まれ
⌠ イメージ想起をさせた。
┇車いすの女の子┇は、現在、どうしているのか?
⌠ あのとき
⌠ 必死で
⌠ あの娘の父親を追いかけた
⌠ 信じ難い自身のパッションが甦る。
⌠ 眼前の情景は歪み、
⌠ デフォルメされ、渦巻状に変化していった。
━ 頭が痛い! ━
⌠ 火炎〈Flame〉のイメージに呑み込まれた!
⌠ あっ☆・・・現実戻り!
⌠ 声を上げ、
⌠ 立ち上がり、
サユリの前をすり抜け・・
・・ひとつ置いた席の、里見のそばへ行き、閃きをぶっつけた☆
半信半疑の探偵の肩を力いっぱいドヤしつけ、
迅速行動を促す絶叫を、浴びせた!
・・神経を起こされた里見は、
南平の尋常ならざる態度に突き動かされ、
渋る本部長を強引に動かし、
常識外の<火葬中止>を、
警察権限でもって、発令してもらった!
火葬炉から・・
焦げ付き、
煙を漂わせている棺を引き出した。
ひそひそとザワつき、
なにが起きたのか⁉という顔つきの親類縁者や、
斎場関係者などを、強硬に押しのけ、最前列へ進み出て、
震える指で — 熱を帯びた《棺の小窓》を開くサユリ!
━ 白い三角巾を額に巻いた天田氏は、
パチリと両目を開き、
「九死に一生を得るとは・・
真に、この事でしょうな・・」
・・半うつつ状態で言った。
━ 天田氏は、
海難事故に遭った彼女と、
サユリの姿を
ぼんやりオーバーラップさせていた。
令和のミラクルに出くわしたサユリの感激涙は、
甦った天田氏の顔へとポタポタ落ちた。
依頼人は、
表情を、涅槃領域にまで、
深く近接させ・・掠れ声を発する。
「またもや、救われましたな。
・・ありがとう・・お嬢さん・・」
「いいえ、天田さん。
私ではなく・・
最高カレシ ━ 楠 南平さんのお手柄です!」
参列者の花道から、
四歳になったばかりの海里くんに手を引かれ、
最前列に姿を現した・・南平。
斎場内には盛大な拍手が湧き起こった!
葬儀技師たちの、
迅速行動で以って、
棺に打ち込まれた、
五寸釘は引き抜かれていく。
・・軽い火傷を負った天田氏は、
念のため、救急搬送されていった。
━☆━
黒い<水晶球>は、
卒然・・透明化して・・
一条の煌めきを瞬かせた!
松岡占い家は・・
「《伏兵現る!》
見事に、
宿命転換を果たしましたな。
おめでとう ╍ 浬さん☆
╍ 運の強い御仁だ!」
・・と つぶやき、
会心の笑みを浮かべると、
仏手柑飴の包装を解き、
口に含んだ。
━☆━
令和八年 三月三日(火)。
「あのお方」の声を専属吹き替えされていた、
池田昌子氏が永眠されました。
謹んで、ご冥福をお祈り申し上げます。




