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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
88/90

スカイ劇場にて

━ 『ハリウッド大通り』楽日らくび


場内は・・

移動も ままならない ほど、

当日、売り出され、即完売した

パイプ椅子の補助席によって、

(左右に加え、

 最後列のまた後ろ、

 そして、

 最前列のさらに前列にまで並べられている)

消防法無視と言えるくらい、

ビッシリとくされていた。


また・・

異例のモニター鑑賞席まで設けられた

スカイ劇場のロビーも、

場内同様 ━ 人・人・人でごった返している、

 

 それくらい・・

 『ハリウッド大通り』は・・

 演劇界に光明こうみょうをもたらす、

 |新星しんせい現る|

 |後世・伝説の舞台と呼ばれるであろう|

 と、二重の意味において、

 演劇好きを、SNS界隈かいわいを、

 狂喜きょうきせていた。


 蓬莱ほうらいゆず主演の劇場パンフレットは、

 早くもソールドアウト!

 グッズ類も素晴らしい勢いでけていた。

 その中には、

 目端めはしく転売ヤーが、

 一定数いっていすう まぎれ込んでいたのも事実である。

・・メルカリ市場は、あたかも、

  <ゆず季祭り>の様相ようそうていしていた。

  劇場内でしか購入できない、

  パンフやグッズは高値で出品され、

  声優初期のレアなサイン入り色紙などはプレミア価格であった。

  超目玉は・・

  笹森汐との(ともに無名時代における)ウルトラ・レアな連名れんめいサイン入り色紙。

  堂々(どうどう)《100万円》のプライスが付けられていた!

  「値下げ交渉には一切いっさい応じられません」なる強気なコメントをえて。


最後尾の〈通常席〉に腰かけている、

ひとり親方は、

余りの人の多さ、熱気に、いささか当惑とうわく気味だ。

・・あらかじめ・用を足しておいた方が・いいだろうと判断し、

WCへ行くため、

隣席・隣々席に声がけしつつ、頭を下げ、

(わずら)わしい徒歩移動をて、ようやくロビーに出た。

人の波をくぐりぬけ、トイレを目指し、探検家よろしく、ひた進む。

すると・・

ロビー入り口に、

パーッ!と光が射した☆

スター特有のオーラである!

まちがいないと直感した親方は、確信視線を向けた。

果たして・・

キャップを目深まぶかにかぶり、

サングラスをかけた・┃<(ナマ) しおり>┃・であった。

小さくて細い感じは — 妖精を想起させる。

あっという間に、ギャラリーに囲まれ、

ミツバチ軍団の総攻撃に見舞われた昆虫化してしまう(意味フの方はググってね)。


「サインくださーい!」の大合唱だいがっしょう

「写メだ!動画だ!(とつ)イエローだ!」とスマホの一斉いっせい射撃。


観客が暴徒化する寸前すんぜん・・

七尾マネから連絡を受けていた支配人は、

配備はいびしておいた劇場係員たちに、

非常事態じたい回避かいひさせた。

「笹森さん、

ひとまず支配人室にて、ご待機願います!」

しおりかこんだ円陣えんじんは、

掃除機そうじきのルンバみたく、

人波ひとなみけ、推進すいしんしていった。


他人ひとごとながら、

親方おやかたは、

ホッ!と胸をでおろした。

DJアイドルの身体にれようと、

手を伸ばしてきていた不届き者(・・・・)たからである。

━ 人気者は大変だな、というのが率直な感想だ。



観客席ではなく、

(一般客への影響をかんがみて)

支配人室内で、

モニター観劇することに承諾しょうだくしてくれたしおりへ、

び&お礼の言葉を丁重ていちょうに述べた劇場責任者は、

言葉をいでいく。

「こうして当劇場を満席に出来たのは、

<劇のチカラ>もること・・

笹森さんがラジオを通じて、

後方こうほう支援しえんして下さった結果によるものだと、

感謝しております。

当初チケットは〈七割弱〉ていどしか、

さばけていなかったのですからね。

最早もはや・・感謝しかございません」


「いいえ。

演劇の内容と<ゆず>の実力ですよ」

支配人専用の肘掛ひじかけ椅子を提供され、

背もたれに触れず、

ピン!とL字腰掛けしている汐は、そう応じた。


┃開演二分前┃

支配人は場内カメラをあやつり、

モニターへ、

空席のない劇場内をくまなく映し出して見せた。

VIP席にカメラを向けズームさせる。

「この お二方ふたかたは」

 と支配人は画面を指さし、

文科もんか省の副大臣と文化庁長官ですよ。

『ハリウッド大撮り』の注目度を物語っていますでしょう?

当該とうがい舞台は文化庁|支援金|の対象になるはずです」

得々(とくとく)と語った。

政治家の左右席を〈SP〉が囲むように座り、警護けいごしていた。

パンニングさせたカメラを切り替える刹那せつな

/映像は・・和服姿のあでやかな女性を・・とらえた。

汐は顔を鋭くさせ・・グイと!身体を乗り出し・・画面を静止してもらう。

「はて?

 ・・銀座のクラブのママですかな?」

支配人は—汐の反応に—反応した。


━ 汐の両目から涙があふれだした。


|笹森汐は、

 強運の持主だった!|


オニ形相(ぎょうそう)で、

キャンピングカーをぶっ飛ばして

迎えに来た七尾ななおマネと、

支配人の三人とで|モニター観劇|を終えた。


汐の、

演劇レセプターは、

画面越しに放たれた!

<ゆずのパワー>を処理しきれずに、

(七尾の危惧きぐした通り)

蒼白そうはくになり・・

・・機能不全におちいった。


しおりさん・・

 ニ~三日・・寝込んじゃうかも・・」


┃かように、

 ゆず季のアクトパワーは

 画面越しからでも破壊力抜群であった!┃


けれども、

汐は、

マネージャーの予想をくつがえし、

彼女に押し寄せた<別のパワー>のおかげで、

ショックを押し返し、拮抗きっこうさせたまま、

ダークサイドにき寄せられることなく・・とどまった。


━ 「トントン!」

支配人室のドアがノックされた。

係員にアテンドされ、姿を見せた ━ 和服美人。


破顔はがんした汐は、

和服美人の胸へ

ジャンプして飛び込み、

幼子おさなごのように、両の手足をからませた。

冴子さえこさ━━━ん!!」


和服姿の女性は・・中邑なかむら 冴子さえこ・・であった。


「・・しおり・・ぼう・・!?」

 冴子さえこは、

 ヒシ!と汐を抱きしめた♡


七尾ななおは・・

ワケも 理解わからず、もらい泣きしてしまった。

支配人も・・

ドラマみたいな再会を果たした二人に、温かい波動を送っていた。


━☾☽━

今宵こよいは・・

担当タレントに倫理観りんりかんキビしく説いてやろうと

手ぐすねを引いていたものの、

(人気スターであろうが、

 めるときはめる!主義に、

 いつのにやら 宗旨替え(コンバート) していた ななマネ(七尾)

しかし、今回だけは、

七尾の独断どくだん処理で、

涙の再会をしゅくして解放してあげた。


笹森汐発・・

あそこまで|ど・ストレート|な・・

エモーションの発露(はつろ)を目にしたのは・・初めてのこと。

(怒りの核爆発は経験済みだった!)

さながら、生き別れの母親と再会したような塩梅あんばいだ。

設楽したら りょう がらみの関係だと、

  おおよその察しはついた ╍

ともあれ、

取りあえずは、メデタシとしておこう。


汐と和服女性を・・

キャンピングカーに乗せて、

後者(冴子)の滞在している、

『インペリアルホテル』まで送り届けた七尾マネ、

(和服女性は、

 京都の老舗しにせ旅館の女将おかみとのこと)。

もる話で、

トゥナイトは、さぞ盛り上がる二人であろう。

さいわい、汐用のシングルルームも押さえられたし・・

━☾☽━


帰路の車中。

七尾マネは、お腹の虫をグ━ッ♪と鳴らした。

直帰ちょっきの許可を事務所から得ていたので、

(上司には、汐の脱走だっそう劇は内緒にしておいた)

アパート近くのコインパークに駐車する予定をスイと脳内プログラム。

ただし・・その前にオリジン(ORIGIN)に寄り、

ハンバーグ弁当(大盛)とお惣菜&トン汁を購入しようと決めた。


━━ カーラジオのスイッチを入れる♪


・・ニュースが流れて来た・・


「本日午前ごぜん、事件とも事故ともつかぬ、

 奇妙な 事案(アクシデント) が発生しました。

 日本では、エージェント弁護士の草分くさわけ的存在である

 ロイロット法律事務所の元代表、

 <天田あまだ かいり>さん6✖歳が、

 自室にて 焼死体(・・・) で発見されました。

 第一発見者の、ご家族は、

 ┃ベッドの上には燃え尽きたあとの <(ほね)(はい)> のみ┃が、

 残されていたと証言しており、

 ┇〈Spon(スポン)taneous(テイ二アス) Human(ヒューマン) Combustion(コンバスチョン)〉┇

 いわゆる・・

 ┃人体発火現象(SHC)┃ではないかと、

 注目を集めています。

 では、W大学の物理学部教授であり超常現象にもくわしい、

 ○○さんに電話がつながっておりますので・・・・」






『哉カナⅡ』第一部は、コレにて終了。

 天田あまだエピソードには、

 どーしても 決着 を付けておきたかった。

 

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