スカイ劇場にて
━ 『ハリウッド大通り』楽日 ━
場内は・・
移動も ままならない ほど、
当日、売り出され、即完売した
パイプ椅子の補助席によって、
(左右に加え、
最後列のまた後ろ、
そして、
最前列のさらに前列にまで並べられている)
消防法無視と言えるくらい、
ビッシリと埋め尽くされていた。
また・・
異例のモニター鑑賞席まで設けられた
スカイ劇場のロビーも、
場内同様 ━ 人・人・人でごった返している、
それくらい・・
『ハリウッド大通り』は・・
演劇界に光明をもたらす、
|新星現る|
|後世・伝説の舞台と呼ばれるであろう|
と、二重の意味において、
演劇好きを、SNS界隈を、
狂喜せていた。
蓬莱ゆず季主演の劇場パンフレットは、
早くもソールドアウト!
グッズ類も素晴らしい勢いで捌けていた。
その中には、
目端の利く転売ヤーが、
一定数 まぎれ込んでいたのも事実である。
・・メルカリ市場は、あたかも、
<ゆず季祭り>の様相を呈していた。
劇場内でしか購入できない、
パンフやグッズは高値で出品され、
声優初期のレアなサイン入り色紙などはプレミア価格であった。
超目玉は・・
笹森汐との(共に無名時代における)ウルトラ・レアな連名サイン入り色紙。
堂々《100万円》のプライスが付けられていた!
「値下げ交渉には一切応じられません」なる強気なコメントを添えて。
最後尾の〈通常席〉に腰かけている、
ひとり親方は、
余りの人の多さ、熱気に、いささか当惑気味だ。
・・あらかじめ・用を足しておいた方が・いいだろうと判断し、
WCへ行くため、
隣席・隣々席に声がけしつつ、頭を下げ、
煩わしい徒歩移動を経て、ようやくロビーに出た。
人の波をくぐりぬけ、トイレを目指し、探検家よろしく、ひた進む。
すると・・
ロビー入り口に、
パーッ!と光が射した☆
スター特有のオーラである!
まちがいないと直感した親方は、確信視線を向けた。
果たして・・
キャップを目深にかぶり、
サングラスをかけた・┃<生 汐>┃・であった。
小さくて細い感じは — 妖精を想起させる。
あっという間に、ギャラリーに囲まれ、
ミツバチ軍団の総攻撃に見舞われた昆虫化してしまう(意味フの方はググってね)。
「サインくださーい!」の大合唱。
「写メだ!動画だ!凸イエローだ!」とスマホの一斉射撃。
観客が暴徒化する寸前・・
七尾マネから連絡を受けていた支配人は、
配備しておいた劇場係員たちに、
非常事態を回避させた。
「笹森さん、
ひとまず支配人室にて、ご待機願います!」
汐を囲んだ円陣は、
掃除機のルンバみたく、
人波を掻き分け、推進していった。
他人ごとながら、
親方は、
ホッ!と胸を撫でおろした。
DJアイドルの身体に触れようと、
手を伸ばしてきていた不届き者も居たからである。
━ 人気者は大変だな、というのが率直な感想だ。
観客席ではなく、
(一般客への影響を鑑みて)
支配人室内で、
モニター観劇することに承諾してくれた汐へ、
詫び&お礼の言葉を丁重に述べた劇場責任者は、
言葉を継いでいく。
「こうして当劇場を満席に出来たのは、
<劇の力>も然ること・・
笹森さんがラジオを通じて、
後方支援して下さった結果によるものだと、
感謝しております。
当初チケットは〈七割弱〉ていどしか、
捌けていなかったのですからね。
最早・・感謝しかございません」
「いいえ。
演劇の内容と<ゆず季>の実力ですよ」
支配人専用の肘掛椅子を提供され、
背もたれに触れず、
ピン!とL字腰掛けしている汐は、そう応じた。
┃開演二分前┃
支配人は場内カメラを操り、
モニターへ、
空席のない劇場内を隈なく映し出して見せた。
VIP席にカメラを向けズームさせる。
「この お二方は」
と支配人は画面を指さし、
「文科省の副大臣と文化庁長官ですよ。
『ハリウッド大撮り』の注目度を物語っていますでしょう?
当該舞台は文化庁|支援金|の対象になるはずです」
得々と語った。
政治家の左右席を〈SP〉が囲むように座り、警護していた。
パンニングさせたカメラを切り替える刹那/
/映像は・・和服姿の艶やかな女性を・・とらえた。
汐は顔を鋭くさせ・・グイと!身体を乗り出し・・画面を静止してもらう。
「はて?
・・銀座のクラブのママですかな?」
支配人は—汐の反応に—反応した。
━ 汐の両目から涙が溢れだした。
|笹森汐は、
強運の持主だった!|
鬼形相で、
キャンピングカーをぶっ飛ばして
迎えに来た七尾マネと、
支配人の三人とで|モニター観劇|を終えた。
汐の、
演劇レセプターは、
画面越しに放たれた!
<ゆず季のパワー>を処理しきれずに、
(七尾の危惧した通り)
蒼白になり・・
・・機能不全に陥った。
「汐さん・・
ニ~三日・・寝込んじゃうかも・・」
┃かように、
ゆず季のアクトパワーは
画面越しからでも破壊力抜群であった!┃
けれども、
汐は、
マネージャーの予想を覆し、
彼女に押し寄せた<別のパワー>のお陰で、
ショックを押し返し、拮抗させたまま、
ダークサイドに磁き寄せられることなく・・留まった。
━ 「トントン!」
支配人室のドアがノックされた。
係員にアテンドされ、姿を見せた ━ 和服美人。
破顔した汐は、
和服美人の胸へ
ジャンプして飛び込み、
幼子のように、両の手足を絡ませた。
「冴子さ━━━ん!!」
和服姿の女性は・・中邑 冴子・・であった。
「・・汐・・坊・・!?」
冴子は、
ヒシ!と汐を抱きしめた♡
七尾は・・
ワケも 理解らず、貰い泣きしてしまった。
支配人も・・
ドラマみたいな再会を果たした二人に、温かい波動を送っていた。
━☾☽━
今宵は・・
担当タレントに倫理観を厳しく説いてやろうと
手ぐすねを引いていたものの、
(人気スターであろうが、
締めるときは締める!主義に、
いつの間にやら 宗旨替え していた ななマネ)
しかし、今回だけは、
七尾の独断処理で、
涙の再会を祝して解放してあげた。
笹森汐発・・
あそこまで|ど・ストレート|な・・
エモーションの発露を目にしたのは・・初めてのこと。
(怒りの核爆発は経験済みだった!)
さながら、生き別れの母親と再会したような塩梅だ。
╍ 設楽 涼 がらみの関係だと、
おおよその察しはついた ╍
ともあれ、
取りあえずは、メデタシとしておこう。
汐と和服女性を・・
キャンピングカーに乗せて、
後者の滞在している、
『インペリアルホテル』まで送り届けた七尾マネ、
(和服女性は、
京都の老舗旅館の女将とのこと)。
積もる話で、
トゥナイトは、さぞ盛り上がる二人であろう。
幸い、汐用のシングルルームも押さえられたし・・
━☾☽━
帰路の車中。
七尾マネは、お腹の虫をグ━ッ♪と鳴らした。
直帰の許可を事務所から得ていたので、
(上司には、汐の脱走劇は内緒にしておいた)
アパート近くのコインパークに駐車する予定をスイと脳内プログラム。
ただし・・その前にオリジンに寄り、
ハンバーグ弁当(大盛)とお惣菜&トン汁を購入しようと決めた。
━━ カーラジオのスイッチを入れる♪
・・ニュースが流れて来た・・
「本日午前、事件とも事故ともつかぬ、
奇妙な 事案 が発生しました。
日本では、エージェント弁護士の草分け的存在である
ロイロット法律事務所の元代表、
<天田 浬>さん6✖歳が、
自室にて 焼死体 で発見されました。
第一発見者の、ご家族は、
┃ベッドの上には燃え尽きたあとの <骨と灰> のみ┃が、
残されていたと証言しており、
┇〈Spontaneous Human Combustion〉┇
いわゆる・・
┃人体発火現象(SHC)┃ではないかと、
注目を集めています。
では、W大学の物理学部教授であり超常現象にも詳しい、
○○さんに電話が繋がっておりますので・・・・」
『哉カナⅡ』第一部は、コレにて終了。
天田エピソードには、
どーしても 決着 を付けておきたかった。




