チーム里見|中堅
ー 明けて翌日 ー
秋日和。気持ち良い朝である。
ベッドから起き上がった、
ボディーガードToday担当者ー鈴木サユリは、
座卓横で毛布をかぶり、
彼女の夏限定使用品〈籐の枕〉に頭を乗せて、
スヤスヤ眠っている彼氏を、
半現状態でしばらく見つめ、
「ダーリン」と囁き♡
ささやかな幸福を甘受する。
サユリの借りているコーポは |×ペット飼育厳禁×| なので、
温もりを発する、
親しい生き物がそばにいると安心感を持てるのだ。
子供の頃から常にペットの犬や猫と、
喜怒哀楽を反射させ合い、
成長してきたから、猶更の感慨に浸る。
四投流をこなす・・・
現在時においては、独り暮らしに・・
特段、寂しさは覚えないけれど・・
時として襲ってくる
生殖本能という名のホコホコ感は別として(ゴホン)!
空虚な心緒を埋めてくれるのは、
AIやネットに非ず、
やはり 体温を有する生命体 なんだと腑落ち着地。
(決して、彼氏たる南平と、
ペットを同一視しているワケではありまぜんゾ)
サユリは、
なるべく音を立てないよう・・
抜き足差し足・・ユニットバスまで歩き、
朝シャワーを浴び、着替えをすませ、
南平用のブレックファースト支度を速やかに整えた
テキパキ行動を旨とする鈴木さんは、すこぶる器用女子なり!
ただし・・小説執筆に関してはスローモーなのです。
彼女自身は、
ターミナルの|駅ナカ|で、
上京してくる来訪者と、
朝食を取る予定を組んでいた。
メモ書きを残して・・部屋をあとにする。
サユリ部屋のスペアーキーは、
昨晩〈ライオンパレス〉のスペアーと|交換式|を済ませてある。
・・今後は2ルームを行き来することになるだろう。
・・なんとなく、生活に奥行き&張りが出る未来予想。
╍╍╍
| 午前8時45分 |
一台のタクシーが天田邸の正面に止まった。
車内から降りて来た、ふたりの人物。
そのうち 1名は <日勤 ボディーガード>の鈴木サユリ。
残るひとりは ー
はるばる、名古屋から呼び寄せた
ー 占い家の <松岡 えり奈> であった。
╍╍╍
鈴木助手は、
ディベートで里見所長を打ち負かし、
|固い財布|から経費引き出しに成功した。
サユリ案は ━━ <目には目を!>作戦。
三次元世界に於いて、
まるっきり、摑みどころのない、
正体不明⁉なる難敵┃渦巻幻視┃には、
┃有能占い家┃パワー で対抗する策を打ち出した!
ー≒ー
里見は、
助手発 ー 着想のユニークさ+怒涛の勢いに押し切られ、
不承不承ながらも、
提案を認めた。
自分には失われてしまった、
若者のみが持つ情熱、思考、感性、直カンを、
頭ごなしに否定したくはなかったからだ。
拠り所は・・
|鈴木サユリ|は 愚か者 ではないという
・・ただ一点のみ。
言うなれば、
(他者という)
プレイヤーの行動を見守る、
監督気分なのであった。
「果たして・・
┃毒を以て毒を制する┃ことが出来るだろうか?
奇手よ!
悪手に転ずることなかれ・・」
元警部補は、
不安の霧立ち込める、
心の内で、呟いた。
ー≒ー
松岡師に丁重な挨拶をして、
助手への引継ぎを終え、
クライアントに一礼すると、
・・里見所長は・・
|意外や意外|
占い家の御宣託場面に同席するであろう、
サユリの予想を覆し、
さっさと天田邸を辞去してしまった。
「こりゃ、相当だワ!」
里見のオカルト嫌いは可成りのモノだと、
再認識させられたサユリ助手。
加えて・・
自己主張の強い、この私を、
煙たがっている事も、察した。
申し送りは事務的で ー 親密さを欠く対応だったし。
・・必要性ゆえに・・良かれと信じ・・提案したのに・・
・・理解されない・・このツラさよ・・
・・抜きん出た発想は認めて貰えないのは・・世の通例・・
・・紀元前に発見された〈ピタゴラスの定理〉は|世紀を跨いで|
|GPSの原理となり||1983年以降爆発的に普及した|
|気の遠くなるような話ではないか・・|
・・ゴッホだって・・認められたのは・・遥か後年・・
・・くじけちゃダメよ・・サユリ・・己が直観を信じて・・ファイト!
そう、
自分自身を励ました。
救いとなったのは、
クライアントの天田氏が乗り気をみせたこと。
どうやら ━ 天田〈幻視者〉は、
松岡〈占い家〉に なにか を感じてくれたようだった。
一見にて、興味の磁場発生!
一目惚れの変奏曲といえるだろう。
理解るヒトには ━ 理解るンである。
コモンセンスに凝り固まった里見さんは・・お呼びでないのよ!
書斎に、
折り畳み式(キャスター付き)簡易テーブルを運び入れた。
トライアングル構図を描いて腰掛け、
お茶を飲み、
仏手柑飴(占い家の土産品)を舐めている
松岡師は・・
・・占いに不可欠な重要ツールをテーブル上に置いた。
ツールを覆っている、紫のビロード布を捲り上げ、
曇らざる水晶球を露出させた。
深淵まで見通せそうなほど、それは、透き通っていた。
占い家は柔和な表情を崩すコトなく、
占い球と天田氏を交互に見つめた。
天田氏と松岡師の波長は、
うまい具合にシンクロしているように、サユリは肌感した。
しかし・・
サユリの感受矢は、
的の中心点を微妙に外していた。
松岡師は・・
極力緊張感を排し、
表情柔らかに、
洒落たジョークを交え、
リラックスモードでセラピーを、
いざ・・始めようと水晶球に目を移したとたん、
━━ 天田氏は「待った!」をかけた。
彼は、
おもむろに立ち上がり・・
仕事用のデスクまで歩いていくと、
抽斗を開き、
《タリホー》のトランプを取り上げ、
松岡師に対し、挑戦的な目を向けた。
「まずは・・
<神経衰弱>ゲームでもって、
あなたの力量を計測したい。
もしワシが敗れたら、素直に占いを受けましょう。
逆の場合は、即刻お引き取り願おう!
・・時間のムダですからな」
水晶球から顔を上げた松岡師は、
特徴のある眉を八の字にして、
困った表情を浮かべ、
カップ麺の出来上がるタイムを・・黙考に費やした。
以前、口にしていた—「現在は・・昔と違い・・ 霊感は殆ど降りてこない」
という、占い家の言葉をサユリは記憶反芻していた。
やがて、
松岡卜者は・・
・・両目に光を灯し、静かに頷いてみせた。
クライアントの挑戦を受けて立つ覚悟を決めたようだ。
━ ピカリと煌めきを発する・・水晶球⚡
傍観していたサユリは・・
\熱冷波動に晒され/
「いかなる勝負が繰り広げられるのか!?」
・・ゾクリと身体を震わせた。




