番外編|事故現場サイト
18歳未満の方は「閲読」を避けておくんなまし。
不快な気分をもよおす描写有り。
「はい、
『事故現場サイト』収録スタート・・五秒前!」
上がりさえ良ければ、
乙骨Pの判断しだいで、
放送されるかもしれない・・薄氷シチュエーション。
オンエアか?
はたまた、欠番か?
・・瀬戸際 崖 試練。
当該エピソードは、
乙骨P以外の者が初めて演出を担当する、
<実験ラジオドラマ>なのである。
「はい、録音スタートGO!」
先般(ラテ局内移動にて)配属されてきた
『哉カナ』の次代を担う
若き幹部候補生、
寛谷プロデューサー補佐によって、
┃本番のキューサイン┃が出された。
▣ 乙骨Pは(意図してか?)本番収録に顔を見せなかった ▣
プロットを作成したのは、ユタ二P補佐(24) 自身。
結構の甘い※草稿を、
ガミさんチームでブラッシュアップして、
完成させた(と、汐は仄聞している)。
ふだんより・二割方・完成度の劣る、
脚本を左手持ちし、
ニューフェイスの成長に一役買おうと、
録音マイクに正対した笹森 汐は、
霊感を呼び寄せ、
いままで演じたことのないタイプのキャラクターに
魂を吹き込んでいく。
『事故現場サイト』と題された、
実験ラジオドラマのストーリーは以下のごとし。
━〇━
汐の役は、
看護大学に通う「鬼頭 莉緒」という、
自身の実年齢と近い~20歳Missである。
百均ショップのセルフレジで商品を巧みにチョロまかしたり、
チケットの不正転売で小遣い銭を稼いだりする、
ちょいワル〈悪〉女子だ。
VA=汐はセリフのテンポを少しばかり上げ、
莉緒の持つ小悪魔感をキリッとした声質に乗せ、
チャッカリ感をまぶし、キャラ造形してみせた。
無駄に詳細な蘊蓄の散りばめられた
新米P補佐のホン〈脚本〉は、
《セリフ&若者言葉とも》そこそこ良く書けていて、
友人とスマホ通話のさいに、
「つねに相手を先回りしてしまう頭の回転の速さ、
勝ち気なところ+狡猾さ=エゴ」を彫琢できており、
・・莉緒という人物は〈一応〉キャラ立ちしていた。
タイクツな看護大終了後。
レディースリュックを背負った莉緒は
電動キックボードをビュン!と走らせ、
近所のスーパーで買い物をしてアパートに戻り、
夕飯の支度を済ませたのち、
湯っタップリ風呂に浸かると♨
今夕も自室に籠り、デスク上のPCを立ち上げた。
━ 「シシシシ」というEvil laughing【=邪悪笑い】を響かせ(汐のアドリブ☆)
腰掛け姿勢で\プシュッ!/タブを開き、
冷え冷えの缶ビールを飲み、
手作りのツマミを食べ、
エグイ画像・動画を覗くタスクに励んでいた。
◆ぐちゃぐちゃになった事故〇体
◆バラバラ〇体
◆動〇虐〇動画などを見ると、
身を震わすような興奮状態にシフトしていける。
・・異性と付き合うより断然いい!
・・素敵なカレシなんて、絵空ごとに過ぎない。
・・それに引き換え「〇体」や「ペット虐〇」はグッとくるのだ。
うら若き20歳はそーゆー独自価値観の持ち主だった。
今日も今日とて、
ダークなネット世界を雅にトリップしている莉緒。
一発目は~
前菜「ペット〇待」動画からスタート。
┃ケージに入った「ネ〇」の真上から 、
グツグツの熱湯♨をぶっかける手口は、初見である。
前脚や後脚をヘシ折る軟弱な動画は、もうおなか一杯。
ときには新手に出会いたい。トゥデイは好日なり~「シシシシ」┃
愛玩動物の 煮え湯断末魔 を聴き♪
狭いケージ内を狂動する姿を目にすると(^O^)
莉緒の声は掠れ、
ブレスは「ハァハァ」荒くなり、
白目を剥き、興奮はレッドへ突入していく。
(汐は吐息を交え・AVとは線引きし・艶っぽく表現した♡
新米演出家へのサーヴィスである。普段は絶対演らない類)
缶ビールからストハイ(Alc.9%)に変えて、
ステイオンタブを\プシャッ!/と開く。
二回戦は~
┃横たわっている・若い白人男性を・いきなり斧で斬殺するワンカット動画。
真実(?)のbloodが威勢よく飛び散るお宝映像。悲鳴も絶品である。
・・AIフェイクであっても上出来だ!┃
マルキド琴線にビンビン触れまくり、
「シシシシ」笑いが深く濃くなり、莉緒の両目は吊り上がる。
スーパーストロング(12%)に再チェンジ。
\パキッ!/っとタブを開く。
┃「炭酸・Alc.度数」をサウンドのみで♪
表現しなければならない音声スタッフは大変なンである┃
とっておき、
メインディッシュは~
闇ネット界隈では大評判の・・
・・ダークウェブ『事故現場サイト』の扉をたたく。
どうやって撮ったのかは不明だが⁉
生死を彷徨う「プレ死体」のホヤホヤ写真や、
遠からず逝くであろう「人身事故写真」が、細い目隠し入りで紹介されていた。
━ 悉く日本人なのはポイント高い。しかも令和の画像なのだ。
かつてタイ国では、
死体写真の<Friday>といわれる
『アチャヤーガム(อาชญากรรม )』なる雑誌が隔週発行されていて、
本国の書店・コンビニ・街のスタンドで手軽に買えたものだ(現在廃刊)。
莉緒もバックナンバー数冊をネットオークションで購入し、
コレクションしていた。
けれども、
それよりエゲツナイ写真(しかも日本人ばかり)を拝むことが、
ダークウェブの某サイトでは可能だった。
ひと月ほど前・・
くだんの暗黒サイトの噂を聴き及んだ莉緒は、
闇ネット界特有の複雑怪奇すぎる手続きを踏み、
試行錯誤のすえ、
一昼夜かけて《長ねぎアイコン》を入手、
そこを先途にアクセスを果たし、
ようやっと「とば口」にたどり着いたのだ。
ダークウェブ内<某サイト>の開けゴマが叶い、
初見した瞬間は欣喜雀躍した。
━━ これこそ莉緒が渇望していた<邦人bodyの>世界なのであった!
ちなみに彼女は映画も〈邦画と日本製アニメ〉しか見ない国産主義だ。
海外旅行なんか、てんで興味なし。
ディープな闇ネットコミューンでは、
「事故画像を投稿しているのは誰だろう?」論議が沸騰していた。
順当に救急隊員の仕業ではないか?
あるいは鑑識課の写真係?
事故現場は特定地域ではなく、
日本全国に跨っていることから、
個人ではなく、組織的な犯行かもしれない⁉
・・揣摩臆測、喧すしかった。
惨事発生現場の画像や詳細な〈住所・日時〉の記載も然ることながら、
添えられている「事故解説文章」がまたエグかった。
的確すぎるデッサン、
なまなましい描写力、
読者の想像中枢に注射を打つような文体シャープは、
「ビスケン」ではないかという声が多数を占めた!
(本人はnoteにて否定コメントを出した)。
━ 読む者を暗黒エクスタシーに導く、表現スキルが並外れているのだ。
数々の画像と添付文章を、
ストハイぐらぐら頭で咀嚼しながら、
ホットな吐息を漏らし、
至上の悦びに身も心も浸っている莉緒。
女性活動を済ませ、荒い息を吐きながら
(再び・演者汐の桃色アクト)、
直近UPされた、
最新事故のNEW見出し<ミニ画像>をクリックする。
┃原形を殆ど留めない変状遺体を
救急隊ではない<専門処理業者>が
全身を覆うタイプの
「体液漏れ機能を持つ特殊シート(授業で習った)」に包み、
慎重にストレッチャーに乗せ、
遺体搬送車へ運ぶ・三種類の組み画像・だけが載っていた┃
いつもとは違い、
寄り〈アップ〉が一枚もないこの画像でもって、
ダーク・サイトの投稿者は、
逆に、救急隊がらみであると推測できるのだ。
最新の事故現場は莉緒の住まいのすぐ近くであった。
「日付・時刻データ」は・・未記載なり。
莉緒はマルキド好奇心を抑えきれず、
翌朝早起きして、事故現場である交差点へ赴き、
「シシシシ」笑いを堪えつつ、
死臭を肌感できるスポットで、
シャッターをバチバチ切りまくりスマホに収めていった。
そのとき、
彼女の近辺を、
明かなスピード違反速度で、
スラブを積載した大型搬入車両が急カーブを切った。
━「チッ!」舌打ちする莉緒。
車両の固定ワイヤーが緩み、
ミリ秒置かずに、
巨大なコンクリートスラブが、
ヒト反射神経を起動させない速度でもって、
莉緒の頭上めがけて直撃を果たし、
グシャグシャの、原形を留めない高度身体損傷へ至らしめ、
若い女性の命を奪い去った。
即死した莉緒の・浮遊する魂・を戒める、
━ 閻魔さまの声が聞こえてきた。
「ワッハハハハ。
不届き者 ❚鬼頭 莉緒❚ の哀れな末路じゃ。
今後は・・人の不幸を嗤う、
お前のような<愚か者>を惨死へ誘い込む、
闇サイトの管理人として日々励むがよい。
死者100人を地獄に導き入れたら解放しようぞ!」
┃享年二〇。
短い生涯であった(ナレーション)┃
━〇━
スパッと切り落として ━ エンディング。
「皆さん、お疲れさまでした」
寛谷P補佐の声が狭いスタジオ内に響いた。
「三十分番組」の収録タイムに2時間以上を要した。
・・通常ならば1時間程度で終わる。
演じた汐は、
相当刈り込まなければオンエア不可能と判断した。
いくら話の整合性をつけるためとはいえ、
動物〇待をヨロコブ描写はマズイっしょ!
他にもアブナイ表現がちらほら。
・・それに肝心要の「落ち」もイマイチなのよね。
没の可性大。イヤな予感しかない。
終了後には恒例の、
キャストスタッフ全員の集合写真をスタジオ内で撮った。
いつもとは違い、
小さなスタジオを与えられての収録のため、
正味四人、ひっそりとしたパーティーである。
ヴォイス・キャストは汐ただひとり、
スマホ会話のシーンは汐の一人二役。
閻魔様の声とナレーションは、
あらかじめ局アナが吹き込んだものをインサート。
ネット動画を見る音声場面は、
安上がりなフリー素材をサンプリング。
・・どんだけ期待されてないんだ⁉
パーティーの中心に寛谷P補佐と主演の汐、
両脇を固める技術部門のスタッフ二名は、
セルフタイマーのセットされたデジカメに収まった。
新米P補佐は照れくさそうな様子で、
<処女作記念>にと、
DJアイドルとのペアフォトを願い出た。
汐は「お安い御用」と快諾。
P補佐は2ショット画像をMYスマホに収めた。
汐も自身のスマホを取り出し、シャッターを切った。
プレビュー画像を確認する・・
汐の|左横|には、
ひどく気落ちしたP補佐の表情が切り取られていた。
とっさに彼のうしろ姿を追いかけ、肩を叩き、励ます。
「ユタ二君。必ずオンエアされるから、大丈夫だって!」
ふり向いたP補佐は精一杯の活力を振り絞り、
「ありがとう、汐坊」とだけ言い、
寂しそうにスタジオを・・後にした。
━━
二日後のこと。
ラテ局・製作部の、とあるデスクへ、近づいていく女子社員。
そのデスク周りだけ、お歳暮・贈答品で、埋もれんばかり。
「乙骨課長、面会の方がお見えです」
サングラスを掛けたPは、
パソコンモニターから目を離すと、
「そんなアポイトメントはあったかな?」
首を左右に振る女子社員・・「いいえ」
サングラス課長はPCに目線を戻し、
「いま忙しいンだ、引き取ってもらいなさい」
女子社員は重ねて、
「笹森 汐さんですけど、よろしいんですか?」
乙骨はグイと顔を上げ、
「それを早く言わんか!応接室にお通し しなさい」
「はい。すでに、そちらでお待ちいただいております」
「うむ、すぐに行く」
乙骨Pは向き合うようにソファに腰掛ける。
「珍しいな、編成部に来るなんて。どういう風の吹き回しだ?」
ノーメイクに近い汐はナチュラルな感じで、
「年末・年始の番宣収録よ。
急に、乙骨さんの顔が見たくなってさ。
これは私からの、お歳暮。今年もお世話になりました」
と言うと、シックなデザインの手提げ袋から、
箱入り『ブラントン ゴールド(バーボン)』を抜き出し、
ソファテーブル上にドンと置いた。
Pは警戒オーラを張り巡らせ、腕組みをする。
「ちょっと待った!
こんな高級品をすんなりと貰うワケにはいかんゾ。
・・なにか魂胆があると見たぜ」
「シシシシ」と汐は笑い(まだキャラ抜けできていない模様!)
くっきりとうなずいた。
「実は、この間配属されてきた、
寛谷P補佐のことなんだけど・・」
乙骨はサングラスの向こうで目を見開いた。
「お前、地獄耳か?
ラテ局の人事にまで通じてるとはな」
「そんなオーバーな。
彼が担当したラジオドラマの・・」
「おいおい、話が噛み合っとらんぞ。
たしかに寛谷はオレの大学の後輩でな、
総務省の内定を蹴って、
どうしてもラジオドラマを演出したいと、
わがラテ局に入社して来た変わり種だ。
24歳になる来年の誕生月=つまり年明け一月に、
P補佐として『ラジオ哉カナ』の製作部門に配属されるはずだった。
ところが三週間ほど前に・・
交差点でスレ違った大型搬入車が荷崩れを起こしてな、
コンクリートスラブの直撃に遭い、
亡くなったのだ、寛谷は・・残念だよ!」
汐は金魚のように口をパクパクさせ、
スマホをポケットから引っ張り出し、電スクロール⚡
寛谷P補佐とのツーショット画像を呼び出した。
モニターに写しだされたのは・・汐ただひとり。
彼女の隣、|左横|にP補佐の姿はなく、
写っていたのは・・背景だけだった。
━━
『旧盆/番外編』おしまい。
・・妙に雨の多い お盆 だこと・・
※)ストーリーの構成、組み立て、全体の見通し=結構。




