カオス突入・・その2
夏の 蔵出し第三弾。
❚正真正銘の、
カルテット〈四色ブレンド〉の域に近づいてくれたまえよ!❚
そのような企図を内包した
「長廻し本番」は丸一日かかった。
リハに、
三日ばかり時間を割き、
計四日の・・< 茨撮影>。
マロ節大全開!
怒声の環でもって 思い切り締め上げ、
全員をリミットの果ての果てまで追い込んだ。
玉虫スペックの暗黒面=大人声を発したモモですら
例外枠を取っ払い、
(鬼のくせして??
心を鬼モードにスイッチさせ)
叱り飛ばした。
自分バリアの 結界羊水 に浸かり、
卒なくスイスイ演じている汐にも叱責を浴びせ、
許容量超えのハードルを課し、無理強い雷を落とした⚡
┃凸イエローがチームの指揮者となって、
レッド・ブルー・ピンクを
調和させる引力芝居をゴリ押し要求┃
セリフのない演技のみでは
(仮に有ったとしても)
実行不能な、
トンでもミッションを迫って来たのだ。
・・汐は目を白黒させ、ぷくーッとフグ頬メタモル (○`х´○)
━━ 撮影はNG続出の修羅場ラ・バンバ。
撮影中断タイム。
猪熊監督は3レンジャー’Sをセラピスト・フォロー。
・・各自のストレスを解してあげた。
♤カチコチになったレッドには全身マッサージを施し、
♧血の気が引いたブルーに少量のブランデーを与え、
♡泣き腫らしたモモには広い胸を貸して、
「よし、よし」と慰めてやり、トランキライザーを与えた。
猪熊の前向きスマイルは、
地獄に仏 効果をもたらした。
汐だけは、
猪熊野戦病院に駆け込むことなく、
お気に入りのミネラルウォーターとフェイスタオルを、
付き人の女の子から受け取り、
背もたれにネームの入ったマイ・チェアに腰を落ち着け、
スタイリストやヘアメイクにルックを整えてもらうと、
速やかに自己の世界へ没入。
/思索の霧のなかを彷徨いはじめた/
笹森汐の担当マネージャーは、
その様子を
やや離れた地点から見守っている。
ななマネは、
「(撮影現場って、まるで戦場だわさ)」と
独り言ちし、
演技についての考察を巡らせた。
━━
長廻しは言わずもがな。
CGで上書きするであろう
変テコなマネキン人形を<最強ヴィラン>に見立て、
驚き・リアクション・演技をしなければならない三色レンジャー’Sは、
仕事とはいえ大変だ。
(入り組んだ撮影は概ね ここでNG中断される)
なぜなら、
一番上っ滑りしやすい崖だから。
║プラスして、
凝った脚本構成により、
二段構えの驚きが用意された難所でもある║
換言すれば、
ビックリ反応=驚き演技は、
瞬発力に欠ける(農耕民族)日本人の苦手科目。
怒りの激発シーンとならび、
俳優の持つ ボトム反射 を露わにしてしまう、泣き弁慶。
①引き出しに乏しい愚直なプレイ〈演じ方〉を選ぶか?(新人モード)
②驚き感情の中心部に突貫して、
火中の栗を拾う、疑似舞台芝居を採るか?(演技派スキル)
③センスを操り、スマートに演じ逃げるか?(器用タイプ)
④心臓の〈先天的〉強さに演技を乗っけて表現するか?(例:長瀬智也)
⑤まったく別の道を模索するか?
・案の定・
━ 凸ピンクことモモは②を採用して|失敗。
━ レッドも同じく②をセレクト |儚く散った。
(モモ・レッドともに哀しいかな |意あまって力足らず)
━ 強心臓には幾分遠いブルーが④をチョイスしたのは|凡ミス。
3レンジャー’Sが揃いも揃って、
(愚直=)①を回避したのにはプライドを感じた。
とはいえ、
彼らの 驚き芝居 は「芯を食え」なかった。
第三者視点からすると、
なんとも「歯がゆい」レベル。
≡すきま風ピューピュー≡
寒い気分にさせられた。
━ NGやむなし。
(反面・・
細かくカットを割れば、
こんな面倒は軽減できるのに的同情も湧く※)
いっぽう同じ場面を、
我が汐さんが演じると、
迫真性を持つ不思議よ。
驚き表情(二段構え)
不協和声(腹話術の応用)
仕種
タイミングを
スピリチュアルでもって融合、
━━ ハイパー描出で繰り出してくるのだ。
見る者を 「ハッ!」とさせ、
感情移入へ「グン!」引きずりこんでしまうhighパフォーマンス。
<持っていかれる>という表現がピッタリくる。
しかも、
側杖NGに罹災しても、
同様リアクト(Withアクション)を、
寸分たがわず何度でも復元できてしまえる再現性。
━ マロ&クマ両監督をも瞠目せしめた妙技。
・・才能宇宙の 幽玄 をひしひしと感じさせた。
・・努力では埋められない領域である、コレばっかりは。
━━
内界 探索行を終えた汐はチェアから立ち上がり、
三色レンジャー’Sのところに行き、
目力を籠め、提案した。
レンジャー’Sは ═ なるほど承服!
迷路から這い出せる可能性を示唆された三色は、
汐案に沿って、
クッションマットの置いてある所へ行き、
猪熊助監督にアドバイスをあおぎ、
躍動主観を全開させ、「驚き演技」の練習をスタート。
難関突破の手懸かりさえ見つかれば、
若いエネルギーは弾機胎動するもの。
┃本日何度目か判らない、ク〇ッたれ本番スタート!┃
凸レンジャー四人は息を合わせて、
長廻し撮影の八割方を
チーム結束力=気合いで切り抜け、
残り二割の鬼門へ突入。
地下室に入り、
最強ヴィラン<CG用マネキン>と遭遇!
一歩 前に進み出た汐のプロ・リアクトに続き
(ミリ秒遅れで)
後景の3レンジャー’Sは、
それぞれがド派手にバック宙\犬神家|脚天/して倒れこみ、
表情ではなく 得意とする体技でもって ビックリ反応を具現化した。
━━ マロ監督は、右のコブシを握り締め、大きくうなずいた。
直後に(カット割り無しで)ジョイントされる
ノーマル+スロー撮影をカメラマンがしくじってしまい、
「ワンスモア!」
再撮影を余儀なくされた。
四色レンジャーは、
がっかり顔を見せることなく、
メンタルスイッチを、
次の本番へ向けてサッと切り替えた。
爾後、リテイクを三回を重ねた。
マロ監督から会心nearの「アクセプト(=OK)!」が出たのは、
日付変更線を跨ぐ直前であった。
その瞬間、
凸レンジャーフォーは
熱きスクラムハグを交わし、
ぴょんぴょん跳ね回り、
天井を向き、ありったけの勝鬨を轟かせた。
━━「ざまあマロ !!!!」
早朝に始まり・・
トータルおよそ19時間の撮影〈重労働〉は終了した。
「終電にはとても間に合わないので、休憩室で翌日まで待機する」と、
レンジャーズの三色諸君は、諦め顔で言った。
《 新人にはお車代など支給されないンである。
ただし 早出撮影のときに限りペイされるという、
行きはよいよい♪の「通りゃんせ」待遇 》
汐と違い ━ マネージャー・付き人などのサポーターも居なかった。
それを聞きつけた七尾は、
タレントの了承を取り付けると、
レンジャーズを説き伏せ、
キャンピングカーに彼らを同乗させた。
・・「深いリラックスは自分の部屋でなければ得られない」という、
七尾マネ自身の経験知に基づく、フレキシブルな対応であった。
笹森専用の付き人やヘアメイクは、
いつものようにスタイリストの車に同乗。帰還した。
そもそも・・
撮影は遅くとも、
キャストスタッフが終電に間に合う時間帯にバラす決まりだ。
やむをえず・・
夜間/深夜撮影/ に突入するときは、
超過手当/夜食/仮眠場所/ 諸々を
ケアしなければならないと、契約に、謳われていた。
しかしマロ監督にとって、
そんな約束事は有名無実の空文に過ぎない。
━ 特待番組『凸レンジャー』の潤沢な制作費は、
撮影日数オーバーや凝ったCG処理により、
刻々赤字ラインへ近づいていた。
局P〈制作費の管理者〉は、
こっそり、
スタジオの隅に三色を呼び寄せ、
疲れ休めとして黄色パッケージに入ったキャラメルをひと箱ずつと、
身銭を切り、
「夜食代だよ。また明日も頼むな」と言って
(お車代よりは安上がりな)千円を各自に手渡し、
それぞれの肩を叩いて励ました。
━ 帰路へ向かいエンジン・スタートさせる七尾マネ。
その瞬間ブルーは顔面蒼白になり、
素っ頓狂な声を上げた。
「いっけねェ!忘れ物・・」
ドライバーと同乗者に詫びを入れ、
スタジオまで、一目散、走っていった。
┅┅ エンジンストップ。
照明が落とされ、
シンと静まり返ったスタジオ内。
自分専用チェアに置き忘れた<大事な脚本>を手に取ったブルーは、
ふと人の気配を感じて、そちらへ顔を向けた。
視線は ━
ディレクターズチェアに身体を沈め、
物想いに耽っている南禅寺監督の姿を
━ キャッチした。
仕事とは別種の苦悩(であること)をブルーは嗅ぎ取った。
マロの悩みがなんであるか?察する術は無い。
∥同時並行で∥ 聴覚異常に襲われた。
森永のCMフレーズ=【ソ・ファ・ミ・ソ♪】音符が、
ブルーの脳内で跳梁した。
「ヤべぇ、サインだ!」
疲労の危険水域を知らせる、SOS幻聴に違いない。
物想いに深く沈んだマロ監督へ、
声を掛けられる雰囲気では全くなかったので、
やむなく、あいさつを割愛。
そそくさとブルーはスタジオから退散した。
七尾マネの運転する
移動控室=小型キャンピングカーは、
泥放心状態の~凸レッド・ブルー・ピンクを、
各自の住まいまで送り届けた。
━〇━
❚日付変更線を大幅に跨いだ深夜帯❚
ドライバーの ななマネは、
リアミラー越しにタレントのようすを窺う。
後部座席でトロンとしている汐戦士は、
・・夢うつつ間を往復stateしていた。
※ カット割りとは?
表情・アクションのムダをつまみ(=切り捨て)、
残った良い部分を効率よく繋いでいく、
いわば「好いとこどり」作業であります。
逆に、
長廻し撮影は、
映像表現の最大の美点<モンタージュ>を放棄する手法。
ただし、緊張感みなぎる芝居場を丸ごと紡ぎだせる、
・・舞台劇に近い様式である。
黒澤明は、
複数カメラを駆使して、
双方(長廻し&モンタージュ)を、
統合させるユニークな実験を行い、成果を上げた。




