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〜雫視点〜

〜雫視点〜


初めて会った時、何て綺麗な子なんだろうって思った。今まで見たことない程綺麗で、笑顔が眩しくて。その上、優しくて明るくて。文句の付け所がない、というのはこういう事なんだろうなって。


入学式の日、その子と同じクラスになれた事に飛び上がりたい位嬉しかった。すぐに話しかけて、すぐに仲良くなれた。私にとって彼女、エマは誰よりも大切で大好きな人だ。そんな彼女に好きな人がいると聞いて、興味を惹かれた。モテすぎるほどモテる彼女に好かれた男はどんな人だろうと。

 

谷口誠也。エマの幼馴染。結構イケメンで性格も悪くない。モテるそうなのに、なぜか凄くウブで照れ屋。まぁ、そのギャップも含めて彼女は好きなのかもしれない。


大好きな彼女(エマ)の恋を応援しよう、そう自分に誓った。だから、エマに片思いしてる男子、谷口に片思いしてる女子を調べてみた。エマの方はかなり簡単だった。沢山いすぎて途中でやめてしまったが。だけど、意外な人物がいた。

 浜田悠飛。エマの隣の席。ぼっちのオタク。友人は一人もいない。性格に多少の難あり。

誰から聞いたわけでもないけど、あいつのエマを見る目や、エマに話しかけられた時の表情、好意を持っていることくらいすぐに分かる。本人もエマも気づいてないけど。


(私恋愛のエキスパートになれるわw もーなっちゃおっかなーww)


浜田悠飛の想いに気づいてから、私は彼が気になり始めた。恋愛的な意味ではない。…多分。

きっと私は知りたかったのだと思う。今まで他人に興味を示さなかった彼がどうしてエマを好きになったのか。

そんなの分かりきっているのに。

だから彼に絡んでみたりして、(一方的に)関わる内に理由がわかった気がした。でも、みんなに疎遠されていて、冴えなくて、ぼっちで、重度のアニヲタのくせに何エマを好きになってんのよと不満みたいなものが、胸の中から消えることはない。


(そーだ!本人に話せば良いんだ!あーでも彼私と話してくれるかなぁ。いっつもウザ絡みしてたからなぁ。)




放課後、空っぽの教室に浜田を呼び出した。多分、無視するだろうと思ったから、ちょっとズルい手を使ってしまった。(テヘッ)ごめんね、浜田。けどそーしないとあんたは多分話さないし。


「….」


(その無言ちょっとキツイんだけど。なんか話しなさいよ。何で呼んだんだよ、とか。くぅー!!)


何故か、彼の前では調子を狂わせられるような気がする。そういや、エマも谷口の前では調子狂わせられるって同じ事言ってた…。


(違う、違うってば。そんなんじゃないから!!しゃんとしなさい!雫!今からこいつを尋問するんだから!!)


その尋問相手はつまらなさそうにスマホをいじっている。…腹立つ。


「ちょっと。あんたなんでここに呼ばれたか分かってるでしょ??」


ワザとキツイ口調で話す。彼がめんどくさそうにチラリと私を見るとスマホにまた目線を戻した。


「正直に話しなさいよ?  あんたさ、エマのことが…!!」


途中で口をつぐんだのは浜田が凄い目で睨んできたからだ。長い前髪と眼鏡で隠れているはずなのに、

凄く怖くて、動けなくなった。 初めて彼が真っ直ぐに私を見た。背筋がゾクゾクした。


「相田さんには関係ないだろ。そうやってすぐに人の恋愛に首突っ込むんじゃねぇよ。」


(….なんか急に喋り方変わったんですけど。何それ。は?なんかのアニメのキャラの真似でもしてるわけ?こんな時にも?どんだけ重度のアニヲタなのよ。)


と、バカバカしい、というか完全に八つ当たりしながら、私は彼を見つめた。私が何より嫌いなことの一つ。正論を正面からぶっかけられる事。

  

「何よ。じゃあ認めるんだ?好きだってこと。…その通りよ。あんたがエマに好意を抱こうと私には関係はない。だけど、あんたがそれに対してどう行動するのかは関係ある。」


彼が頭を抱える。…大袈裟だな。

ため息をついて、私を嫌そうにジロリとみる。私も表情を変える事なく、睨み返した。


「そういうところが嫌いなんだ。」


体が一瞬震えた。それを隠すように私は言い放つ。


「嫌いで結構。」


全然結構じゃないくせに。私の中の小さな正直な部分がそう叫んでいる。


「俺はあの人には伝える気もない。別に二人の邪魔もしない。…今までと同じ。これで満足したか?」


また、体が震えた。自分の心のどこかで、ホッとしている自分がいる。


(なんで?私には関係ないじゃない。)


どこかで、嫌悪感を覚えている自分がいる。多分本人も無自覚ながら、浜田が愛おしそうに、「あの人」と言った事に。「今までと同じ」と言う言葉がわずかに震えている事に。


どこかで、悲しんでいる自分がいる。「これで満足したか?」と私に向かって吐き出すように言われた言葉に憎しみがこもっている事に。


(私はなんて言って欲しかったんだろう。どうして欲しかったんだろう。…私は何がしたいの?)


自分で勝手にした事なのに、身勝手だ。


ひどい虚しさを感じながら、平気なふりをして呟く。


「あっそ。」


自分はちゃんとポーカーフェイス(無表情)を作れていれるだろうか。くるりと浜田に背を向ける。


「もういいよ。あと、…ごめん、無理に言わせて。…身勝手な事して。」


後半はかなり小さくなったが、彼に届いた事を祈るのみだ。そもそも聞いてないかもしれないけど。

早足で教室を出る。校舎を出て門に小走りで行く。

そこでは、エマがスマホを見ながら待って行った。

私に気づくと、笑顔で手を振ってくれる。わずかに後ろめたい気持ちが生まれる。


「見つかった?スマホー。」


遅っ! とか言ったり不機嫌そうな顔をする事もなく、ちゃんと待っていて何でもないように、笑顔で聞いてくれる。そんな彼女と目を合わせられなくて、つい目を逸らしてしまった。


「うん。待っててくれてありがとー。よっし、カラオケ行くかー。みんなは先に行ってる?」


「先行っててーって言ったの。…ねぇ、雫大丈夫?」


ビクッとする。もしかして、バレたのだろうか。


「なんか、表情硬いし、いつもよりテンション低いなーって。」


なるべくいつも通りの笑顔を浮かべてエマを見た。


「大丈夫だよー。ただテストの結果気になっちゃってー。赤点だったらやばいなーって。」


彼女もほっとしたように柔らかい笑みを浮かべる。


「大丈夫だってー。雫頭いいんだから。せっかくテスト勉強に解放されたんだからパーっとはしゃいじゃおうぜー❗️❗️」


「レッツゴー!!」


ごめん、エマ。私エマに嘘ついちゃった。ほんとは全然大丈夫じゃない。エマのためとか言ってほんとは自分が知りたいだけで、浜田から聞き出して。

私、エマみたいに綺麗な心持ってないよ。全然優しくなくて、自分の事しか考えてないんだよ。


私はどうかしちゃったのかな。心臓がうるさい。胸の中で何かが暴れてる。わめいている。それが正直な自分だって事に気づきたくなくて、笑顔を張り付けてエマとおしゃべりしている。

 気付きたくなくて、心奥底に押し込めて。周りの世界がひどく味気ないものに見える事に、自分がひどくつまらない事に、自分が今にも泣きそうになっている事に気付きたくなくて、必死に表情を取り繕っている。


「ごめん。」


誰にともなく、小さな声でつぶやく。誰にも拾われなかったその小さな言葉は淡く薄い空に消えていった。

















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